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『カメラは人生そのもの』写真一枚一枚にストーリーを。伝命さん

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『カメラは人生そのもの』写真一枚一枚にストーリーを。伝命さん

伝命

フランスでフードコーディネーターとしてご活躍された伝命さん。 お仕事での写真撮影をはじめ、プライベートでも長年写真活動をされています。 写真を撮る際には何かしらの意思を持ってシャッターを切るというその一枚一枚には、『思い』や『ストーリー』が感じられます。

伝命の使用カメラ

使用カメラの画像
富士フイルム X-Pro2 ボディ

伝命の使用レンズ

使用レンズの画像
富士フイルム XF35mm F1.4 R
使用レンズの画像
富士フイルム XF16mm F1.4 R WR
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自然と向き合い、瞬間を切り取る——伝命さんインタビュー

カメラを構え、シャッターを切るその先に広がるのは、一期一会の出会い。
自然の中でじっと息をひそめ、被写体と向き合う時間こそが、伝命さんにとっての至福のひとときです。
今回は、そんな伝命さんに、写真へのこだわりや撮影にかける想いについてお話を伺いました。

カメラを始めたきっかけは何ですか?

カメラを始めたきっかけは、子供の頃にスーパーカーに憧れたことでした。僕の世代では「サーキットの狼」という漫画が流行していて、スーパーカーが大好きだったんです。でも、僕の生まれ育った町は港町で、実際にスーパーカーを見る機会はほとんどありませんでした。そんな中で、初めて実物を見た時の衝撃は今でも鮮明に覚えています。「こんなにかっこいい乗り物があるのか」と感動しました。

その感動を記録として残したくて、最初は雑誌の切り抜きや漫画に載っている写真を集めていました。でも、どうしても自分の手で撮りたいと思うようになり、父に相談しました。すると、「自分で計画を立ててみろ」と言われ、電車の時間やかかるお金、カメラの費用などを調べ始めました。小学校の中学年頃だったと思います。

貯めていたお年玉を使ってカメラを買うことを決め、当時憧れていたキヤノン AE-1を購入しました。フィルムの装填に何度も失敗したり、撮影したつもりが真っ白だったり、ぼやけていたり……それでも、現像するまで結果が分からないというドキドキがあり、その緊張感に魅了されました。

そして、スーパーカーショーに足を運び、現場で撮影している人たちに「どうやって撮るんですか?」「シャッタースピードって何ですか?」と聞きながら学んでいきました。そこから写真への興味がどんどん深まっていきました。

ご使用のカメラを選ばれた理由は?気に入っている点は何ですか?

写真を続ける中で、様々なカメラを使ってきました。最初に手にしたのはリコー GRのフィルム版でした。その後、オリンパスのOMシリーズや富士フイルム Xシリーズに興味を持ち、最終的にX-Proシリーズが最も自分に合うと感じました。

富士フイルムの色表現が、自分が撮りたいものと相性が良かったんです。特に料理やヨーロッパの石畳、夜の街並みを撮るのに適していると感じています。JPEGでも撮りますが、基本的には編集して自分好みの色味に仕上げています。

また、フィルム時代の「一発撮り」へのこだわりが強く、デジタルでもその感覚を大切にしています。シャッターを切る前に構図を考え、光を見極め、確実な一枚を狙う。そうした姿勢を支えてくれるカメラとして、富士フイルム Xシリーズを愛用しています。

好きな撮影のシチュエーションはありますか?どういう場面にシャッターを切りますか?

僕が好きな撮影のシチュエーションは「人の時間や努力が報われる瞬間」です。例えば、ある中華料理店での出来事ですが、料理人が鍋を振るのではなく、直火で米を炙るという特級技術を使っていました。それは中国でも限られた料理人しかできない技術です。

その瞬間を撮影し、写真を料理人にプレゼントしたところ、彼自身も「自分がどのように鍋を振っているのか、初めて見た」と驚いていました。さらに、その店の先代の親方も「これは家族代々の宝物です」と喜んでくれました。
こうした「その人にとっての特別な一瞬」を撮ることが、僕にとって最も価値のある撮影シチュエーションです。

美術(アート)と写真についてどう思いますか?

写真は、単なる記録ではなく、アートとしての側面も持っていると思います。特に僕は美術が好きで、ヨーロッパに住んでいた時には、美術館によく通いました。

例えば、パリでは年末年始に美術館が無料開放されるため、娘を連れて訪れました。日本の美術館とは異なり、好きなだけ作品を間近で見たり、時には触れることもできる環境が整っています。写真も同じで、ただ撮るのではなく、その背景にある物語や感情を映し出すことで、一つのアートになるのだと思います。

長年たくさんの写真を撮影されたと思いますが、その中でも印象的だった撮影時のストーリーを教えてください。

八景島シーパラダイスでの一枚
ある日、八景島シーパラダイスで娘と一緒にイルカを見ていたときのことです。娘が「パパ、映画みたい!」と嬉しそうに言ったんです。その言葉を聞いた瞬間、僕の頭には映画『グラン・ブルー』のような世界が浮かびました。

娘の視線の先にいたイルカを、彼女と同じ目線で撮りたくて、僕は寝転がってカメラを構えました。もちろん、寝転がらなくても撮ることはできたかもしれません。でも、その角度から見た景色こそが、娘にとって「映画のような」光景だったんです。

八景島シーパラダイスでは誰でもイルカの写真を撮ることができます。でも、この色合い、この光の入り方で撮れるわけではない。僕はその瞬間を最高の形で残すために、長い時間待ち続けようやく撮れた一枚。それは、ただの水族館で撮った一枚ではなく、僕と娘が共有した特別な時間の記録でした。

パリのとある通りのストリートスナップ

旅の中で、偶然出会う瞬間にこそ、写真の面白さがあると思っています。例えば、パリの小さな通りを歩いていたときのこと。車の中で大笑いしながら会話をしている人たちが目に入りました。あまりに楽しそうな光景で、思わずシャッターを切ったんです。
構図を考える時間はほとんどありませんでしたが、運転手の表情、身振り手振り、車の雰囲気などすべてがフランスらしくて、一瞬で「いい写真になる」と確信しました。実際今でもお気に入りの一枚となっています。

フランス人は、車の中でも会話を楽しむ文化があります。日本ではあまり見かけない光景かもしれませんが、それがパリの日常であり、文化の一部なんです。写真は、その土地の空気や文化を映し出すもの。ただの観光写真ではなく、そこにある「暮らし」を切り取ることで、より深みのある写真になるのだと思います。

このようなストリートスナップは、まさに「一瞬」です。偶然の中にこそ、美しい瞬間がある。それを逃さずに捉えることができたとき、写真の魅力を改めて感じます。
こうした「その瞬間にしか存在しない物語」を写真に残すことが、僕の撮影の喜びです。

カメラと写真への想いを聞かせてください。

僕にとって、カメラは人生そのものです。どんな時もカメラがそばにあり、僕の世界を記録し続けてきました。娘の成長、家族との時間、旅の思い出。それらを一枚の写真に残すことに意味があるんです。

写真はただの記録ではなく、その瞬間の感情を切り取るものだと思っています。
例えば、娘が小さかったころ、写真を撮られるのが嫌だった時期もありました。でも、大人になった彼女が「やっぱり撮ってくれてよかった」と言ってくれた時、写真の価値を改めて感じました。

また僕にとって、写真とは俳句のようなものです。
言葉を尽くしすぎず、最小限の表現の中で、見る人に想像の余地を与えるもの。そこに物語が生まれ、時には言葉以上に多くを語ることができると思っています。

カメラは単なる道具ではなく、相棒のような存在と思っています。
僕はカメラを「相棒」と呼んでいます。世の中には素晴らしいカメラがたくさんありますが、大事なのは「自分の感性に合っているかどうか」。スペックや価格ではなく、自分の世界を表現できるかどうかが重要です。

写真を撮ることで、自分の人生を振り返ることができ、また撮った時の感情がよみがえります。
だから僕はこれからも写真を撮り続けたいと思っています。
誰が見ても価値がある写真ではなく、「自分にとっての大切な一枚」を残すために撮り続けたいと思います。

伝命さんの作品

まとめ

日々の暮らしや旅先で出会った瞬間を大切にし、シャッターを切られてこられたのが伝命さんの写真から伝わってきます。
それは豊かな感性と深い観察眼で、カメラを通して人の想いやその背景までも写し取っているようです。
これからもカメラを手に取り、家族、旅、日常の何気ない瞬間を伝命さんのフィルターを通し、ストーリーのある一枚を残して欲しいと思います。

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