アポランター50mm F2を買いました。価格1/10以下でそれなりに張り合えるなんて、なんとコスパの良いレンズでしょう。しっとりした写真を目指して。 主な機材:EOS R6MarkII, Nikon Z6, Nikon F, Leica IIIf, MAMIYA C330, WISTA45
田口睦大の使用カメラ
田口睦大の使用レンズ
今回はなんとLeica M11とAPO-SUMMICRON M f2/50mm ASPH.のセットをお貸しいただきました!
とんでもない合計金額にビクビクしながら使ってきましたのでご紹介いたします。
お借りするときにはライカ好きの店員さんと2時間も話し込んでしまいました。
ライカのレンズはF5.6が良いという話はとても記憶に残っています。
最後に言われた一言は「このセットを使ったらもう普通のカメラには戻れないよ」でした。
さてそれは本当だったのでしょうか。
今回このセットをお借りした一番の理由は、どうしてもアポズミクロンを使ってみたかったからです。普段からレンズ選びでは「目の前の風景が可能な限り再現されること」を重視していて、EF 24-70mm F2.8 L II USMやRF 24-105mm F2.8 L IS USM Zを使っているのはその解像力に惚れたからです。
Z 135mm F1.8 Plenaとか使ってみたいなあ(大声)。
アールイーさん、いつかお願いします。
さて、ではアポズミクロンとは何か。「アポ」の名を冠したこのレンズは、その名に恥じずアポクロマートレンズを使用しています。ということはつまり色収差がめちゃくちゃ補正されているということです。ざっくり言えば。
この「アポ」の時点で良いレンズなのに、このレンズときたら「ズミクロン」の名前まで冠しています。なんたる贅沢。ズミクロンといえば登場以来解像度の王様として君臨している化け物レンズです。厳密にはこのレンズは従来のズミクロンと構成が異なりますが、無印のズミクロンを上回る解像力を達成しています。
のちほど作例をお見せしますが、このレンズはその高解像度とハイコントラストによって使用者の技量をダイレクトに写真に反映してしまうじゃじゃ馬とも言えるでしょう。
「良い光があれば良い写真が撮れる」を体現している究極の一本。光が悪ければ駄作になってしまう点も含めて私はそう感じました。まさにPhotographに求められるレンズと言っても過言ではないでしょう。
いきなりこんなことを書いてしまうのは気が引けるのですが、私はライカのM型があまり好きではありません。ファインダーが見やすいのは確かなのですが、その見やすさとのトレードオフで本体が大きくなってしまっています。バルナックライカが好きというのもありますが、普段あれ(バルナック)を使っていると苦手意識が生まれます。デジタルになって厚みが増したのも「うーん」と思っているところです。
それでも今回この機材を選んだのは、ライカMマウント純正のカメラだからです。
ミラーレスが主流になってマウントアダプターで遊ぶのが当たり前になって久しいですが、「ライカのカメラだけはセンサーのカバーガラスの厚みが違う」という言説が広く知られています。
実際厚みは違いますし、バイト先でセンサークリーニングをしていてもライカのカメラは受付できません。修理扱いになります。ということは同じレンズを使っても僅かな違いが生じうるということです。
せっかくアポズミクロンを使うのだから、本体もライカのカメラを使おう。
そう考えてこのM11を選びました。(結局撮影しているうちに映像エンジンの画作りに感動することになりましたが)
今回の撮影では、Leicaの味付けをそのまま楽しむために、JPEGで記録しました。
今回作例として使用したのも、角度補正を除けば撮って出しです。
何にも考えずに撮影して液晶を見た時、思わず声が出てしまいました。あまりにも湿度を感じる、これはなんなんだと。
アポズミに対しては「解像度が高い」というざっくりとしたイメージしかなかったため、何が原因でこの写りになっているのかがとても不思議です。抜けの良さなのか、かといってコントラストが高いレンズを使ってもこんな湿度は感じない気がします。普段使っているRF 24-105mm F2.8L IS USM Zもかなりコントラストが高いレンズのはずなのに、まるで別物のようなしっとりさがあります。
バスのガラス越しの一枚です。ガラスを挟んでいる影響でややぼやけているところはありますが、シャドウからハイライトまで階調豊かに描き切っているような印象を受けます。
シャドウの階調が豊かだからなのか、レンズの描写なのか、センサーの性能なのかはよくわかりませんが、くっきりと被写体が浮かび上がっているように感じます。
この一枚は解像力を試してやろうと思いながら撮りました。が、結果は想定以上でした。
もちろんM11のセンサーが6100万画素ということもあるのでその影響は大きいとは思いますが、こんなにも隅々までカリカリに写るものなのかと。
波の質感がとてもよく再現されています。白波の浮き上がりがすごい……
手前の人にピントを合わせたくて開放で撮ってみました。開放でも十二分な解像力が出ることが判明したので、なんの躊躇いもなく開放から使うことができました。
前後のボケは非常に滑らかですね。開放だと本当に微妙に周辺減光がありますが、それもそれで良い味になっています。
全体的に曇っていたのであまりクッキリハッキリといった感じではありませんが、それもまたアポズミクロンの個性なのかなと感じました。
物撮りにもチャレンジしました。ガラスのテーブルとガラスの容器と氷という透き通ったものが多いカットです。アポズミクロンを使っていて思ったのですが、このレンズは透き通ったものを浮き立たせてくれるような気がします。あまりにもスッキリしすぎています。
なんなんでしょうねこの特性は。目の前に氷があるかのような立体感。
これを見てこのレンズのことがさらにすきになりました。
今回のベストショットとなる一枚です。これを見て「良い光があれば良い写真になるレンズだ」というのが確信に変わりました。
水も氷もクッキリと浮かび上がって本当に目の前に被写体があるような気になります。私が目指していた「写真」はもしかしたらこういう写真だったのかもしれないとすら思えます。解像度も相まって本当に現実が目の前にあります。もうこれしか言えない…
今回このレンズを希望した動機は「50mmレンズ究極の1本を試してみたい」というもので、言い換えれば50mmレンズの「正解」を知りたかったというものです。
もちろんこの「正解」は他のレンズを貶す意図はなく、解像度の高さと色収差の補正を極めたという点においての「正解」を指しています。味のあるレンズの方が良いこともあります。
さて、こうして「機材の正解」を求めていたわけですが、今回アポズミと向き合うことで、「写真の正解」をまざまざと見せつけられたような気がします。
これも「正解」と言ってしまうと色々と面倒ですが、「ある種の正解」だと思っていただければ幸いです。
まるでミイラ取りがミイラになってしまったような、沼の住人がさらに沼に引き摺り込まれてしまったような、そんな心地です。もう他のカメラは使えないかもしれない。
ところでM11はアポズミを使うために召喚された子ですが、2週間使ってみてやっぱりM型のファインダーは苦手だなあと感じました。1ヶ月あれば慣れるとも聞くので単に慣れていないのはありますが、画角のフレームの外に世界が広がっているというのがどうも苦手でした。
一眼レフも二眼レフも大判も全てスクリーンに映ったもの=画角のフレームだったので(二眼はパララックスがありますが)、慣れるにはもう少し時間がかかりそうです。
最後に一言。アポランター50mmF2が欲しい!
アポランター50mm F2を買いました。価格1/10以下でそれなりに張り合えるなんて、なんとコスパの良いレンズでしょう。しっとりした写真を目指して。 主な機材:EOS R6MarkII, Nikon Z6, Nikon F, Leica IIIf, MAMIYA C330, WISTA45
田口睦大の使用カメラ
田口睦大の使用レンズ