
「フィルムカメラって適当に撮りまくれないの難しくないっすか?」
部室で先日に後輩と雑談していた際に,後輩から言われた言葉です。
かくいう私自身はすでに(35mmの)フィルムカメラに慣れてしまい、近年は良くも悪くもそのような感覚を忘れてフィルムでもシャッターの引き金が軽くなってしまいがちでした。
この度アールイーカメラ様より機材の貸し出しというとても有難い機会を頂戴するにあたって、以前からの憧れもあって中判フィルムカメラをお借りしましたが、これは上記のような初心を思い出し撮影スタイルを見直すことともなった気がします。
先にも述べた通りこれまで35mmのフィルムカメラを使ってきた中で、「中判カメラへの漠然とした憧れ」といったものがあり,そのことを念頭にスタッフに貸出機材についてご相談しました。
選定にあたってPentax 67のような一眼レフ機にも心惹かれるものがありましたが、旅行にも気軽に持っていけるボディサイズと風景写真を撮影しやすい焦点距離域を踏まえてPLAUBEL makina67をお借りすることにしました。
もとはドイツPlaubel社の名機に由来し、ボディは小西六そしてレンズはニコンと日本の錚々たるメーカーが設計・製造.発売は1979年とのことですが,かの有名な「ジャパン・アズ・ナンバーワン」はまさに同年に発表された書誌のタイトルに由来しているようで、日本製品に最も脂がのってた時期のカメラともいえるかもしれません。
フィルムカメラを使用するにあたって機材と双輪をなすのが、使用するフィルムです。
そしてそのフィルムを購入するためにカメラ店に赴いた際に改めて感じたのは、「一本当たりの値段で言えば中判用の120フィルムのほうが135フィルムより安い」ということでした.無論それぞれのフィルムでの撮影枚数が違いますからコマ単価でいえば135のほうがはるかに安いのですが、色々な種類のフィルムを楽しみやすいというのも120フィルムの特徴かもしれない、と感じました.
まず初めに使用したのは機材と一緒に提供頂いたkodakのgold200.カラーネガのなかでも定番と言ってもいいフィルムですが、私自身は実は初使用です。


続いて使用したのはRolleiのRPX100。何気にこちらも初使用でした。普段使わないフィルムばかり使用するのは比較検討の観点から理系学徒として不適格かもしれませんが、撮像面積の広さと微粒子フィルムの相乗効果に期待して選定しました。(長巻で持っているilford delta100以外を使いたかった。ということもあるのですが。)
現像はR09(ロジナ―ル)の1+50希釈、20℃16分です。




撮影しながら感じたのはやはり「一本で10枚しかとれない」ということでした。
デジカメのように気軽にシャッターは押せませんが、雲量多めの夕方ということもありファインダーに映る景色は一期一会。撮り渋っていては撮影機会はどんどん逃げていってしまいます。そのような中においては取り回しの良いボディ、+〇-表示で分かりやすい露出計、そして操作しやすいシャッタースピードと絞り、フォーカシングのダイヤルなどなどは中判初心者にとってとても助かるものでした。
またフィルムカメラ(最末期の一部機種とAPSカメラなどを除く)に共通した特徴として、Exifのように撮影データを記録できないということがあります。
そのため撮影データについてはメモなど別の方法で記録しておく必要があるのですが、(作例写真のキャプションを見ていただくとわかるように)粗忽な私は記録し忘れることがしばしばありました。なるべく忘れないようにデータを記録する方法として用いたのが、下の写真のように撮影直後にカメラを上側からスマホで撮影するというもの。原始的な方法ですがシャッタースピードと絞りのダイヤルが同じ位置にあって一目で読み取れる上に、本機そのものが格好いいのでスマホで撮った写真も様になるというおまけつき。
1979年の発売当時には確実に想定外の要素だと思われますが、2025年の今だからこそ味わえる楽しみといったところでしょうか。実は表題の写真もそのような中で撮ったものです。

念願であった中判カメラを一週間にわたって使用することで、漠然とした憧れを実感の伴った体験に変えることができました。中判というと仰々しく感じてしまうところもありますが、本機は小型軽量であり街撮りスナップなどでも大活躍でした。
そして今回記事に用いた写真はデジタルスキャンしたものですが、フィルム写真ならではの切り口として印画紙への焼き付けプリントをすることがあります。逆光で撮った写真のなかにはコントラスト低めのいわゆる「眠い」ものもありましたが、プリント時の号数フィルターの工夫によりまた違った味わいになると思われます。機材そのものはすでに返却済みですが手元に残ったフィルムをどう調理するか。楽しみは尽きません。(まさに「逆光は勝利」「これを4号か5号で焼いてこそ味が出る」といったところか)
最後となりましたが、この度機材をお貸出頂いたアールイーカメラ様に御礼申し上げます。
gami
横浜国立大学写真部.「カメラ趣味」といえるほどのめりこんだのはおそらく大学入学以降. 撮影対象は基本的に風景で,人物や動植物等を上手く撮れないのが悩み. 近年は部活中に暗室でフィルム関連のことばかりやっている. 使用機材はNikon D850,F80S,nikomat FTn などなど
gamiの使用カメラ
