内倉可南子
旅行情報を中心に執筆を行う。 趣味は旅行、カメラ。風景や人、動物を撮るのが好き。被写体と してモデルも兼任する。 株式会社三和オー・エフ・イー所属。
FUJIFILM X100Vは、洗練されたクラシックなデザインと最新の性能を合わせ持ったコンパクトデジタルカメラです。その見た目とサイズ感から、毎日持ち歩いてスナップを撮りたくなるような1台。
解像力や色表現も申し分なく、まさに日常にそっと物語を添えてくれるような1枚を、サクッと撮れてしまうのが魅力的です。
この記事では、X100シリーズの歴史をふまえながら、X100Vの魅力を外観・操作感・便利機能・作例までたっぷり紹介します。
この記事を読み終わるころにはFUJIFILM X100Vを手に取ってみたい衝動に駆られるかもしれませんね。
FUJIFILM X100シリーズのはじまりは2011年3月、初代X100(当時の正式名称はFinePix X100)の発売からでした。
以降、「 X100S → X100T → X100F → X100V → X100VI」と、約3〜4年ごとに進化を重ね続けています。
クラシックな外観と世界初のハイブリッドビューファインダーを搭載して登場したX100は大きな注目を集めました。
続くX100SではセンサーとAF性能が進化し、より快適な操作感に。X100Tでは電子レンジファインダー(ERF)が追加され、実用性が高まりました。
X100Fでは画素数がアップし、操作系も一新。そしてX100Vでは、レンズのグレードアップや液晶がチルト式になるなど、完成度が大きく高まりました。
2024年に6代目のX100VIが登場し、高画素化や手ブレ補正など、さらなる進化を遂げています。
クラシックな佇まいに最新の性能を詰め込んだX100Vは、持つ喜びと撮る楽しさを両立したプレミアムなコンパクトカメラといえるでしょう。
全モデルのX100Fからグレードアップした部分としては、センサーが裏面照射型2610万画素・X-Trans CMOS 4になり、より色表現や解像度が豊かに。
また、画像処理エンジンもX-ProcessorProからX-Processor 4へ進化し、動作全体のスピードやAF性能が大きく向上しました。
さらに、レンズと液晶モニターはシリーズ初となる変化を遂げています。
前作までのレンズよりもグレードアップしたことで、逆光に強くなっていたり、開放値でもシャープな写りが実現されています。
液晶モニターはチルト式となり、ローアングルでの撮影もしやすくなりました。
【カメラ】
イメージセンサー: APS-Cサイズ X-Trans CMOS 4センサー、原色フィルター採用(有効画素数
:約2610万画素)
ISO感度: ISO160~12800
液晶モニター: 3.0型 約103.7万ドット TFT液晶
サイズ: [幅]128.0mm × [高さ]74.8mm × [奥行き]53.3mm(最薄部 32.7mm)
質量: 約478g(バッテリー、SDメモリーカード含む)
モニター:3:2アスペクト、チルト式タッチパネル付きTFTカラー液晶モニター
【レンズ】
名称:フジノン単焦点レンズ
焦点距離:23mm(35mm判換算:約35mm相当)
開放F値:F2.0
レンズ構成:6群8枚(非球面2枚)
NDフィルター:あり(4段分)
X100Vの魅力は、その美しい外観にもあります。上部と下部のカバーにはアルミ素材が使用されており、前モデルまでのマグネシウム素材と比べて、より洗練された高級感のある仕上がりになっています。
操作感にもこだわっており、シャッタースピードやISO感度、露出補正などがダイヤルで直感的に操作することが可能。近年のカメラが多くの操作をデジタル化している中、アナログ感のある操作が、
より一層撮影する楽しさに繋がります。
絞り、シャッタースピード、ISOの設定は以下のように行います。
F値の設定はレンズ部分のリングで操作します。開放値のF2からF16まで刻まれており、リングを回すと優しいカチカチ音がして、クセになる操作感です。
シャッタースピードはカメラ上部のダイヤルを回すと設定することができます。
1/4000秒まで刻まれており、ダイヤルを回すとカチカチと音がします。
ISOの設定はシャッタースピードを設定するダイヤルと同じですが、ダイヤルを引き上げて操作します。引き上げたうえで、クルクルと回すとISO感度を変更することができます。
X100Vはクラシックな操作感や外観が注目されがちですが、デジタルカメラとしての便利機能もしっかり充実しています。撮ったその場での確認・編集・共有が、思った以上にスムーズに行えるのも魅力です。
FUJIFILM公式の「XApp」アプリを使えば、撮った写真を無線通信でスマートフォンへ簡単に転送
することができます。
簡単に接続方法を紹介します。今回は「XApp」を使用しました。
①スマートフォンでアプリを起動
XAppをダウンロードして開きます。「新しいカメラを登録」を押して待ちます。
②カメラ側でBluetooth設定
カメラの電源を入れ、「DISPBACK」ボタンを長押しします。上の写真のような表示になるため、一
番上の「Bluetooth」を選択すると接続画面に切り替わり、少し待つとスマートフォンと接続されま
す。アプリでカメラを登録しておくと、後に使う場合の操作が楽になりますよ。
③画像を選んでスマホへ保存
スマホへ送信したい画像を選んで「取得」を押すだけで、簡単にカメラで撮った写真をスマホに移すことができます。
また、「撮影」を選択すると、リモート撮影をすることもできます。カメラを固定して集合写真を撮るときなどに便利です。
RAWで撮影した写真も、X100V本体内でJPEGに現像できます。さらに、クラシックネガやアクロスなどのフィルムシミュレーションを選んで、カメラ内で仕上がりを調整することもできます。
外部ソフトに頼らずとも、自分好みの画づくりが可能です。
操作方法は簡単です。
①撮った写真を確認
写真を撮ったら「PLAY」で確認します。
②内部現像
「MENU OK」ボタンを押し、「RAW現像」を選択します。
そうすると、画像のトリミングやトーンカーブなどの編集、フィルムシュミレーションの変更などもカメラ内で行うことができます。
③現像
こちらの画像ではクラシックネガで撮影したものを、スタンダードにして書き出しました。
特に空の色が変わったのが分かりやすいですね。
ここからはFUJIFILM X100Vで撮ったスナップやポートレートなどをいくつか紹介していきます。
フィルムシュミレーションが17種類もあり、設定するときに得意な被写体も記載してあるので、撮りたい物や場所によって変えるとより楽しめますよ。
ビル群を背景に、力強く伸びる蓮の葉を撮影。しっかり晴れた日の青空と、蓮の葉の緑のグラデーションがくっきりと描写されています。
立体感と色乗りが、都会の中の自然の存在を捉えた1枚になりました。
人通りの多い街中の賑わった雰囲気を写した1枚。
少し絞った設定で、前から奥までくっきりとした描写になっています。
FUJIFILMならではの色表現が際立ち、見たままの鮮やかさを再現できています。
非常階段に差し込む光と薄っすら遠くに見えるスカイツリー。
非常階段に差し込む光が印象的に見えたので撮ってみたものです。
のちに気づきましたが、柵の間からスカイツリーの上部分が顔を覗かせていますね。
薄暗い店内でブラッドオレンジジュースを撮影。
背景は強くボケていながら、ストローや氷は立体感がしっかりと伝わります。
明るいレンズとセンサーの性能の高さが感じられる1枚です。
ケージ越しにこちらを見つめる愛猫を撮影。猫の目にピントを合わせ、ケージを前ボケにしました。
室内での撮影だったため、暗さがあったのが心配でしたが、猫の毛並みの細かな部分までしっかり描写できていたので、センサー機能のクオリティーの高さが分かります。
飼い主に何かを訴えているような表情が伝わってきます。
FUJIFILM X100V SS1/15 ISO400 F2
仕事からの帰り道、ふと空を見ると薄っすらとグラデーションになっていました。綺麗だなと思ったらシャッターを切りたくなりますよね。目に焼き付けたいと思った景色をサッと撮ることができます。
道端にひっそりと咲いている花にクローズアップしてみました。
日が当たる部分と影の部分のコントラストが印象的です。
どんな気持ちで咲いているんだろう、そんなことも考えてしまいます。
揚げたてのポテトが自然な黄色みと質感でナチュラルに表現できています。
被写界深度が浅いため、しっかりと主役が引き立っています。
コントラストが強くなりすぎずにやわらかい描写です。
木の幹がソフトな印象で撮影できました。木の幹の模様や質感がしっかりと写し出されており、
解像力の高さも垣間見える1枚です。
背景の木漏れ日のボケもやわらかく、木の幹が自然に浮かびあがっていますね。
ちょっと早咲きの向日葵を見つけました。左はクラシックネガ、右はソフトで撮影。
クラシックネガの方は背景や影の部分が印象強くでており、緑のトーンが落ち着いています。
ソフトで撮影した方はクラシックネガよりも色鮮やかに写っており、やわらかい印象の1枚になりました。
どんなイメージにしたいかによってフィルムシュミレーションを選ぶと、より表現力が広がります。
街歩きをしている時に見つけた公衆電話。張り紙や落書きが、趣きを感じさせます。
F値を5.6までもっていくと、後ろのボケ感は弱くなり、文字なども読めるほどに。
被写体が特に主張しているわけではないですが、どこかドラマっぽさを感じるのはクラシックネガの得意技なのかもしれません。
車移動の最中に街中を撮影したスナップ。外に置かれたイスを見た瞬間に、これは映画のワンシーンを切り取ったような1枚が撮れそうだ!と思いクラシックネガで撮影。
全体のトーンが落ち着き、どこか懐かしさを感じさせる色味に仕上がっています。
路地裏の壁際に並ぶ2輪車たちを写してみました。全体の彩度を抑えた落ち着いたトーンが、
街の空気感をリアルに表現してくれています。そんなこの1枚はクラシッククロームで撮影。
なんでもない街の風景を切り取るのにおすすめなモードです。
フィルムシュミレーションのビビッドは風景写真を撮るのにぴったり。
空の青色と夕日に照らされたオレンジ色の雲が色鮮やかに写っています。
空の下の部分から上の部分にかけてのグラデーションも豊かに表現し、
シルエットなっている電線や建物とのコントラストが引き立った印象的な1枚です。
セピアで撮ったこの1枚は、ベンチに無造作に貼られた絆創膏を、やわらかなトーンで表現。
彩度を落とすことで木の質感や経年変化が際立ち、被写体の存在感を静かに伝えます。
ノスタルジックな雰囲気を演出したいときに、セピアモードは有効ですね。
夕方の海辺でやわらかい光に包まれた1枚。夕方に撮影することによって、
モデルの肌に温かみが加わっていますね。
前に突き出された手と背景のビル群はやんわりとボケ、浜辺で楽しむモデルの様子が伝わってきます。
雨の日のモノクロポートレート。肌や髪の質感が細部まで表現されています。
カラーでは伝えきれない感情や空気感が、モノクロだからこそ浮かび上がってきます。
こちらはACROS+Gフィルターのポートレート。肌のトーンを滑らかに保ちながら、車道部分の質感をしっかり描いてくれるのがこのフィルムシュミレーションの魅力です。
X100Vの内部フラッシュを使って撮影したポートレート写真。自然光だけでは顔が沈みがちな場面でも、内部フラッシュを使うことで、モデルの表情や肌のトーンがしっかりと写し出されています。
FUJIFILM X100Vの世界観、いかがだったでしょうか。
クラシックな外観に先進的な機能をたっぷり詰め込んだX100Vは、その場で感じた空気や雰囲気を、そのまま写真に落とし込むことができるカメラです。
何気ない日常の風景も、旅行先でのひとコマも、どこか物語のように切り取ってくれます。
軽やかなボディはどこへでも持ち出しやすく、必要なときにサッと取り出してすぐに撮ることができます。直感的なダイヤル操作で撮影時の設定もしやすく、実用性の高い最新機能も備えているため、撮りたいイメージをその場で形にしやすい設計になっています。スナップを楽しみたい人や、写真表現を深めたい人にも長く使える1台になってくれるはずですよ。
筆者:内倉可南子
旅行情報を中心に執筆を行う。 趣味は旅行、カメラ。風景や人、動物を撮るのが好き。被写体と
してモデルも兼任する。 株式会社三和オー・エフ・イー所属。