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ポートレート撮影を屋外でする場合、環境光をうまく使うことが上達の道となりますが、条件によっては環境光だけでは上手に撮影できない場合があります。
たとえば逆光で被写体が真っ黒になってしまうような状況や、あるいは夜で光が足りない場合などがそれに当たります。
そんな時役立つのが、フラッシュです。
ただしこのフラッシュ、使い方の基礎がわかっていないと上手に使いこなせないというのも事実。
撮影テクニックを向上するためには、フラッシュを使いこなすのは避けられない道と言っても良いかも知れません。
そこで今回はポートレート撮影の際の、シチュエーション別フラッシュの利用ポイントについて紹介していきます。
まずは基本をしっかり押さえて、ポートレート写真のクオリティを一段アップしてみてはいかがでしょうか。
フラッシュを使う撮影と聞いて真っ先にイメージするのが、この夜間撮影なのではないでしょうか。 ポートレートに限らず、夜間の撮影のためにフラッシュを使うことはよくありますし、コンデジなどでの記念撮影や、あるいはiPhoneなどのスマホで夜間撮影するときには、光を発して被写体を明るくするのが一般的です。
ただしポートレート撮影となると、光の当て方や当てる光量などを計算しないと、明るすぎたり暗すぎたりする失敗写真になってしまいがちです。
ではこの夜のフラッシュを使った撮影の際には、何に注意すれば良いのでしょうか。
夜間にフラッシュを使ってポートレートを撮影するのは、日中に自然光で撮影するのとは少し勝手が違ってきます。
日中の自然光撮影の場合は、基本的にカメラ任せの設定、たとえばF値優先やシャッタースピード優先、あるいは完全に自動モードに設定しておけば、だいたいは問題なく撮影できます。
しかし夜間撮影の場合、何をどこに合わせて設定すればいいのかがわかりにくいため、慣れないとなかなかまともに撮影できないかも知れません。
F値やシャッタースピードをいろいろ変えても、フラッシュを当てている被写体の明るさが思い通りにならないこともよくあるのですが、まずひとつ理解しておくべきことがあります。
それは
「フラッシュを使った夜間撮影の場合、シャッタースピードは被写体の明るさに影響しない」
ということです。
つまりいくらシャッタースピードを早くしても被写体の明るさは暗くなりませんし、遅くしても明るくなりません。
フラッシュを使っているときにフラッシュを当てている被写体の明るさを変えたい場合は、フラッシュの明るさを変えるかF値を変えるしかないのです。
<作例>背景で玉ボケを表現したいときは、F値とシャッタースピードを玉ボケができるように設定し、被写体の明るさはフラッシュの明るさで調整する。フラッシュの明るさだけでは明るすぎたり暗すぎたりしてしまう場合、調整はシャッタースピードでなくF値で行う。
そのため夜間のフラッシュを使った撮影の時は、まず背景を基準にF値とシャッタースピードを設定します。
背景ぼかし気味にしたいのなら、F値を解放、つまり数字を小さくし、それに合わせてシャッタースピードを設定します。
もちろんシャッタースピードは手ぶれしない程度で設定してください。
背景が思い通りに写るような設定ができたら、続いてフラッシュを当てる被写体の赤さを調整します。
さきほど説明したとおり、これはフラッシュの明るさで調整することになります。
フラッシュの明るさを明るくしたり暗くしたりして、被写体が取りたい明るさで写るように調整してみてください。
この流れで設定できるようになれば、夜間のフラッシュ撮影の基本はマスターできるはずです。
ポイントは被写体の明るさの調整は、フラッシュの光量でするということです。
夜間撮影に限った話ではありませんが、フラッシュにはカメラのホットシューに付ける「クリップオン」と、独立してスタンドなどに設置する「オフカメラフラッシュ」に分けられます。
手軽にフラッシュが使えるクリップオンですが、クリップオンはカメラとの位置関係が固定されているため、被写体の影が真後ろにでき、目立ってしまうと言うのが弱点となります。
もし被写体の影をできるだけ出したくないのなら、オフカメラフラッシュを使うのがオススメです。
しかしクリップオンでの撮影で強い影がでているのは、いかにも夜撮影という雰囲気があるため、そんな特長をうまく活かせばクリップオンならではの独特のムードを演出できるはずです。
オフカメラフラッシュを使いこなすためにはそれなりに練習や技術が必要となりますので、まずはクリップオンを使って手軽に夜撮影に慣れていっても良いのではないでしょうか。
フラッシュを使った撮影のもう一つのパターンが、日中の屋外撮影となります。
自然光や環境光の向きが被写体をしっかりと見せてくれている場合は必要ありませんが、逆光や半逆光になる場合、そのままでは被写体が真っ黒になってしまうこともよくあります。
それはそれでひとつの味と言うこともできますが、せっかくのポートレート撮影の場合、やはり被写体をしっかり写しておきたいものですよね。
そんな時にはフラッシュの出番です。
これがいわゆる日中シンクロと呼ばれるものです。
この日中シンクロを使う場合、いくつかの制約や注意点があるので、まずはしっかり理解しておきましょう。
<作例>逆を使った日中シンクロは人気YouTuberなどが得意とする分野だが、フラッシュ使用時はシャッタースピードの制限があり基本的にはシャッタースピードが遅すぎて真っ白になってしまう。それを防ぐためにはカメラに取り入れる光を減光する「NDフィルター」を使用するのが一般的。
まず気をつけなければならないのは、日中の撮影の場合でF値を解放近辺に設定すると、シャッタースピードはかなり速く、たとえば1/1000とかそれ以上になることが多いはずです。
しかしフラッシュを使う場合、シャッタースピードには上限がかかってしまい、それ以上高速では撮影できません。
この制限はカメラの機種によって異なりますが、おおむね150〜250分の1が限界で、これ以上高速のシャッタースピードは設定できないよう、カメラ側で自動的に制限されてしまうのです。
ですから日中シンクロを使う場合は、まずこのシャッタースピードの制限を考慮しなければなりません。
シャッタースピードをこの数値より遅く設定するために、工夫しなければならないのです。
とは言っても、フラッシュ側でこの問題を解決できる機能は一応用意されています。
それが、ハイスピードシンクロという機能です。
この機能に対応した機種であれば、ハイスピードシンクロモードに設定すれば、カメラのシャッタースピードの制限が解除され、1/1000などの設定が可能となります。
ただしこのハイスピードシンクロは、かなりフラッシュのバルブに負荷がかかるため、多用するとフラッシュの寿命を縮めてしまうと言われており、あまり推奨されていません。
さらに明るさも本来の設定通りの光量が得られないことがほとんどで、実用的でない場合もあります。
もちろん試しに利用してみても良いのですが、あまり信頼できる機能とはいえないことも多く、基本的にはハイスピードシンクロはできるだけ避けるというのが、定石となっています。
<作例>こちらの写真は400ワットのものブロックフラッシュを直射のフル発光で使用。ファッション誌的なイメージで撮影したかったため、あえて硬質な光で。太陽の光に対抗するためにはできるだけパワフルなフラッシュを使うのがベスト。
太陽の光というのは、想像以上に強い光です。
そのため太陽の光に対抗するためには、フラッシュの光にもそれなりのパワーが求められます。
クリップオンのフラッシュは手軽に使えるものの、そもそもサイズがそれほど大きくないため、パワーもそれなりです。
直射日光を逆光にして撮影するとき、それに対するフラッシュの光はかなりパワフルなものが求められることもあり、時にクリップオンだけでは光量が足りないと言うこともあり得ます。
撮影のシチュエーションにもよりますが、日中シンクロで自由自在に撮影をしたいというのであれば、クリップオンではなく、よりパワフルで明るいオフカメラのフラッシュを使うことをオススメします。
オフカメラのフラッシュならカメラの上に載せる必要がありませんので、サイズも大きく、より高出力の発光バルブがついているため、クリップオンでは心許ないシチュエーションでも、しっかりと被写体を照らすことができるのです。
<作例>モデルの影を自然にするためには、フラッシュの光をできるだけ柔らかくするのがオススメ。こちらの写真は先ほどと同様400ワットのモノブロックに、2重のディフューザーを付けたソフトボックスを取り付けて使用。
ただしオフストロボで光量が強くなった際に気をつけたいのが、いわゆる「光の柔らかさ」の問題です。
光の柔らかさとは、光を拡散しているかどうかで、柔らかい光だと明るいところから暗いところにかけてのグラデーションがなめらかで、自然な感じの仕上がりとなります。
光を柔らかくするためにはフラッシュの光を直射するのではなく、フラッシュの光を拡散するためのソフトボックスやアンブレラなどを使用します。
屋外の撮影では荷物をできるだけ少なくしたいものですが、日中シンクロで撮影するのであればオフカメラのフラッシュとソフトボックス、あるいはアンブレラは面倒がらずに持って行くのが正解です。
先ほど説明したとおり日中シンクロにはより強いフラッシュの光が必要ですから、その分フラッシュによる影も強くなりがちです。
そんな硬い光のままだと被写体にできるフラッシュの影が強くなってしまいますので、ソフトボックスやアンブレラでより柔らかい影にするのが理想的なのです。
ポートレートの腕を上達させるためには、フラッシュをうまく使いこなすことも大切です。
夜間の場合はある程度フラッシュを使う際の理屈を理解しておく必要があります。
日中シンクロの場合はよりパワフルでありながらソフトボックスなどで光を柔らかくするのが理想的です。
まずはそんな基本テクニックをマスターして、フラッシュを自由自裁に使いこなせるようにチャレンジしてみてください。
そうすればきっと、ポートレート撮影の自由度がぐっと広がるはずですよ。