【撮影テクニックガイド】モノクロ写真撮り方のコツ
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リード

デジタル全盛の今の時代は、Instagramなど写真共有SNSで写真を発信するのが当たり前に
なっています。そうした誰もが「インスタ映え」を意識する写真を気軽に撮れる時代において、再
度見直されつつあるのが「モノクロ写真」です。

モノクロ写真とは、白と黒以外の色味が全くない写真のこと。今では色味豊かなカラフルな写真
が当たり前に撮れる時代ですが、写真機が発明された明治時代〜昭和の初め頃まではモノクロ
写真が一般的でした。そうした時代背景もあって、レトロな魅力があるのも、モノクロ写真が人々
を惹きつける理由かもしれません。

今回は、プロカメラマンの視点から、モノクロ写真の撮り方のコツやモノクロ写真に適したカメラの
設定方法などを解説していきます。

モノクロ写真の魅力

モノクロ写真は、「白黒写真」のこと。冒頭でも説明したように、白と黒の明暗差だけで表現される
写真で、白と黒以外の色情報は全て撮影時の設定あるいはのちのエディット段階で一切を排除
してしまいます。こうした写真のどこに魅力があるのかいまいちわからないという方も今では多い
かもしれません。

撮影技術やデジタル技術の劇的な発展によって、今では色味豊かな綺麗なカラー写真をスマー
トフォンなど手持ちのデジタルガジェットで気軽に撮ることができます。そうした中でモノクロ写真
は、あえて色を排除することから写真技術による差が出やすく、特にベテランのプロが好む傾向
があります。そして、冒頭でも取り上げたような「レトロ感」をはじめ、色味豊かなカラー写真とは
異なるさまざまな魅力によって常に一定の支持を集めています。

ここでは、モノクロ写真のどこが魅力なのかを解説していきましょう。

余計な情報を排したスタイリッシュな写真が撮れる

まずは、白と黒以外の色味を一切排除する事による、「無駄のなさ」や「シンプルさ」でしょう。

白と黒のみで表現されるモノクロ写真は、せっかくの豊かな色味をあえて排除する写真です。だ
からこそ、色味などの余計な情報に左右されず、純粋に被写体の輪郭や陰影といった物理的な
魅力を、シャープに切り出すことができます。

そして、だからこそ、余計な色味に頼ることのない、純粋な写真技術が問われるといえるでしょ
う。

質感(テクスチャー)を生かした写真が撮れる

モノクロ写真では、「質感(テクスチャー)」を生かした写真が撮れることも魅力です。

色味豊かなカラー写真では、情報量が多すぎてどうしても1つ1つの情報の純度が鈍ってしまう傾
向があります。特に質感は、カラーによっても表現できるものの、色味に目がいってしまうことで
魅力が多少鈍ってしまうことも多いもの。輪郭線が白黒で浮かび上がるように撮れるモノクロ写
真の方が、物の質感をはっきりと写し出すことが出来るのです。

立体感の強いシャープな写真が撮れる

モノクロ写真では、白(明るさ)と黒(暗さ)の差で写像が描き出されます。そのため、角度や構
図、光の入り方を工夫することで立体感の強いシャープな写真を撮ることが可能です。

また、「シルエット」のように、あえて極端な逆光を生かして背景との差をはっきりつけ、被写体を
浮かび上がらせるように撮影することができるのもモノクロ写真の魅力でしょう。

魅力的なモノクロ写真を撮るためのコツ

以上のように、モノクロ写真には、色味がない分カラー写真にはない魅力で溢れています。ここで
は、そうした魅力を最大限活用するための、「モノクロ写真の撮り方のコツ」を解説していきます。

モノクロ写真では「色数や質感の少ない被写体」を避ける

モノクロ写真は、カラー写真と違って色味による表現ができません。表現できる色合いが白と黒し
かありませんから、質感の差や色による差が分かりにくくなります。そのため、「色数や色による
差が少ない」「質感の差が少ない」被写体は避けるべきでしょう。

そうした被写体を撮影しても、何が写っているのか分かりづらい、あるいはのっぺりとした魅力の
ない写真になってしまいます。

明暗の差・質感の差がはっきりするよう意識する

魅力的なモノクロ写真に共通するのは、「はっきりと白と黒の差をつけている」こと。すなわち、明
暗の差、もしくは質感の差を際立たせる写真を意識的に撮影しています。分かりやすい言葉で言
えば、「シルエットを強調している」「コントラスト高めの写真を意識している」ということでしょうか。

例えば、横方向から光が入ってはっきりとした影がついているとか、極端な逆光でモチーフのシ
ルエットがはっきり出ているとか、植物と金属など質感が極端に違うものを並べているとか、そう
したことです。

白と黒の差が大きな写真というのは、極端な明暗の差があったり、質感の差がはっきりしている
もの。色味で差をつけられないモノクロ写真では、こうしたところで差をつけることで印象的なはっ
きりとした写真になります。

気をつけなければならないのは、目に見える色にインパクトがあっても、モノクロにした時には全
く目立たないというパターンもあることです。例えば、こちらの作例では、渋谷駅の再開発で使わ
れている赤いクレーンがはっきり写っていますが、モノクロで撮影すると全く目立たなくなってしま
います。

見た目上の色の目立ち具合と、モノクロにしたときに目立つ明暗の差は必ずしも一致しないの
で、注意すべきでしょう。

背景と被写体の差別化を意識する

背景と被写体の差別化をはっきりするということも、魅力的なモノクロ写真を撮るためのコツとい
えます。ここでいう差別化は、ピントのボケ具合とか明暗の差、色味質感の差などで、それを含め
て、背景を構成するものと被写体との差をはっきりつけることが求められます。

例えば、葉っぱや草を背景にして、花を撮影するとします。その場合、モノクロ写真では白と黒で
しか絵を表現できませんから、極端な話、緑色の草や葉っぱを背景に緑色の花を撮影したとして
もあまり色味の差が出ずにぼんやりした写真になってしまうでしょう。

こちらの作例がわかりやすいですが、カラーの場合では明確に色合いが違う植物でも、モノクロ
ではその違いがあまりわかりません。

モノクロ写真で植物を撮るなら、白色の花と緑色の葉っぱが並んでいる様子を撮るといいでしょ
う。こちらの作例では、緑の植え込みの中にある白い花を狙っています。

また、人物を撮る場合にも、茶色のレンガ壁を背景に白色の服を着せた人物を立たせる、という
ように、モノクロにしたとしても色味の差がはっきりとしたモチーフを狙うべきです。

モノクロ写真を撮る方法・設定手順

さて、ここからは一眼カメラを使用してモノクロ写真を撮る方法を解説していきます。筆者は
Canonユーザーなので、ここではCanon初のフルサイズミラーレス一眼カメラ「EOS R」を例に解
説していきます。

EOS Rを使用した設定手順

EOS Rをはじめほとんどの一眼カメラでは、「撮影時にモノクロ写真しか撮影できないようにする」
設定をすることが可能です。Canonではそうした設定を「ピクチャースタイル」と言いますが、
Nikonでは「ピクチャーコントロール」と呼ぶなど若干の違いがあります。

EOS Rでモノクロ写真を撮るには、まず「MENU」ボタンでメニュー画面を開いたら、カメラマーク
の4ページ目「ピクチャースタイル」を選択し「SET」を押します。

するとスタイルを選ぶ画面になるので、「モノクロ」を選び、再び「SET」を押下。

そして再び「MENU」を押すと、ファインダーやモニターに映る写像がモノクロになっているはずで
す。

モノクロ写真に最適な調整(ピクチャースタイル調整)

このピクチャースタイルですが、描写具合を細かく設定することができます。この数値の調整に
も、モノクロ写真に最適な設定があるので、設定手順を紹介していきましょう。

設定を調整するには、まず「MENU」ボタンでメニュー画面を開いたら、カメラマークの4ページ目
「ピクチャースタイル」を選択し「SET」を押します。ここまでは同じです。

そして、「モノクロ」の項目を選び「INFO」ボタンを押しましょう。

そうすると、シャープネスや細かさなどいくつかの項目が出てくるので、それを以下のように調整
します。(よりはっきりと差をつけたモノクロ写真にしたい場合)

・シャープネスは「7」寄りに設定する
・細かさは「1」寄りに設定する
・しきい値は「5」寄りに設定する
・コントラストは「+」寄りに設定する

また、ピクチャースタイルの「モノクロ」を設定すると、「フィルター効果」や「調色」という設定も選択できます。

フィルター効果を設定すると、雲や緑など特定の色を持ったものをより強調した写真に仕上げら
れ、調色をありに設定すると、セピア色などある程度色のついた一風変わったモノクロ写真を撮
ることができます。

こうした設定を活用して、自分好みのモノクロ写真になるように試行錯誤しながら設定していきま
しょう。

人を惹きつけるモノクロ写真を撮ってみよう

以上、モノクロ写真の魅力や、撮り方のコツを解説しました。

プロの写真家が、白と黒でしか表現できないモノクロ写真の境地に辿り着く例は少なからずあり
ます。特にライカを使ってモノクロ写真を撮る方が多い印象です。Instagramなどでも、あえてモノ
クロ写真ばかりを上げている方を見かけることもあるでしょう。

それは、モノクロ写真を撮っていることで、白と黒という最低限の情報しかない中でいかに色味の
ある現実をドラマチックに切り取るか、というセンスが問われるからなのかもしれません。

モノクロ写真はシンプルなようで奥が深く、一度その面白さの沼にハマると抜け出せません。本
記事で取り上げた撮り方のコツを意識して、ぜひモノクロ写真に挑戦してみてください。

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