メニュー
星空の軌跡や花火の煌めき、車のテールライトの光跡などを捉えた写真を撮りたい!と考えてい
る方は多いのではないでしょうか。そうした写真には、「長時間露光」という方法が用いられてい
ます。
長時間露光は面白い技法で、普通では撮れない幻想的な写真を撮ることが可能。プロやハイア
マチュアレベルの優れた写真を目指す上で、知っておいて損はありません。
今回は、「長時間露光の撮影方法」を、実際の作例と共に解説していきます。長時間露光は決し
て難しくはありませんので、この記事を参考に試してみてくださいね。
長時間露光とは、文字通り「長時間に渡って露光を行いながら撮影する」すなわち「長時間シャッ
ターを開けて光を取り込み続ける」撮影技法のこと。カメラモードでは「バルブ(BULB)撮影」とも
呼ばれています。
「シャッターを開けて光を取り込む」ことを、カメラ用語では「露光」といいます。デジタルカメラの場
合では、レンズの後ろ、本体の中心に備わっている画像センサーに写像を写すために光を取り
込む工程のことを露光というのです。この露光を長時間行うことから、「長時間露光」と呼ぶ、とい
うことになります。
そもそも露光とは、シャッターを開けてから閉じるまでに光を取り込む工程のことですから、露光
時間が長ければそれだけ多くの光が取り込まれます。
そして、もし写したいものが動体(波や液体の流れなどの流体を含む)である場合、動体の位置
移動やその場の動きを、シャッターが開いている間ずっと取り込み続けることになり、複数の動き
が軌跡となって映し出されていくことになるのです。こうした理屈から、長時間露光によって撮ら
れた写真では、物の動きが線や曲線といった抽象的な写像となって映し出されます。
わかりやすい例では、川や滝といった水の流れを撮る場合、シャッタースピードを速くすると、水
の流れは徐々に「水の粒の羅列」となって映し出されます。
対して、シャッタースピードを遅くすると、水の流れは「滑らかでふんわりとした水の流れのまとま
り」となって映し出されていくのですが、シャッタースピードが遅いということは、その分「露光時間
が長い」ことと同義といって差し支えありません。
なお、写したいものによってシャッターを開ける「露光時間」は異なります。概ね10秒以上〜数分・
数時間単位まで様々です。
以上のように、長時間露光では、動体を現実には見えない「軌跡」として映し出すことができるた
め、群体としての人の営みや、天体の移動などを抽象的な線に収斂して映し出すことができ、幻
想的な写真になります。たとえば、以下のような撮影シーンでは長時間露光を活用することで絵
としての見栄えが深みになり、感性豊かな写真となるでしょう。
・星空の軌跡を追った写真
・車のライトの軌跡を追った「光跡」写真
・雲海や滝などの流体を絹のように滑らかに写す写真
長時間露光撮影では、長い時間シャッターを開け続けるため、カメラを少しでも動かすとブレてし
まうことが多いです。そのため、長時間露光撮影を行うためには、「手ブレを防ぐための機材」が
必須です。
また、詳細は後述しますが、カメラの種類やメーカーによって長時間露光撮影を行う方法は異な
ります。しかし、長時間露光撮影を行う上では、「長時間露光に合わせた設定やモードに合わせ
る必要がある」点では共通していることが多いです。
すなわち、長時間露光をするために必要なのは、
・長時間露光撮影を行うための「設定/モード切り替え」
・手ブレを防ぐための「機材」
ということになるでしょう。
長時間露光を行うための手順や方法は、機種やメーカーによって異なります。ここでは、Canon
のEOS Rを使って説明を行います。
長時間露光を行うために必要なのは、先述した通り「設定やモードの切り替え」と「手ブレを防ぐ
ための機材」です。前者はカメラがあればできるので割愛するとして、後者には以下のような機材
が求められます。(天体撮影はさらに特殊な装備が求められますがここでは省略)
・カメラを動かないように固定するための「三脚」
・シャッターを押下するときの手ブレを防ぐための「カメラ用レリーズ」や「ワイヤレスリモコン」
・光を抑えるための「NDフィルター」(必要に応じて用意する・使用しなくても良い)
流体や都市風景などの撮影を昼間に行う場合は、長時間露光を行うと光が多すぎて真っ白の写
真になってしまうので、NDフィルターが必須になります。
まず、三脚とカメラを固定するための「三脚座」を用意しましょう。
カメラのボディの底には、三脚座とカメラを固定するネジ穴がついているため、ネジ穴と三脚座の
ネジ突起を合わせて、三脚座底のネジを回して固定することができます。固定する上で10円玉の
ようなコインが必要なものもあるので、必要に応じてコインも用意しておきましょう。あとは、カメラ
を固定した三脚座を三脚にはめ込むだけです。
その後、有線のカメラ用レリーズをカメラに接続します。一眼カメラの場合、ボディ側面にレリーズ
を接続するための端子がついているので、レリーズの先端にある突起を端子に接続すればOK。
ワイヤレスリモコンの場合は、機種によって接続方法が異なりますが、カメラ本体とリモコンを
Bluetooth接続するのが一般的です。Canon EOS Rでは以下のような手順となります。
1.メニュー 「無線通信の設定」を選択
2.「Bluetooth接続」を選択し「使わない」から「リモコン」へ変更
3.1つ前のメニューに戻り、「ペアリング」を選択
4.ワイヤレスリモコン側もペアリング状態にする(この場合、WボタンとTボタンを同時押し)
5.接続完了の画面が出たら完了
長時間露光撮影を行うためには、カメラ側の設定を長時間露光に適したものへ変更する必要が
あります。ここでは、Canon EOS Rの場合を説明していきましょう。
まずは長時間露光を行うために、「MODE」スイッチを押して撮影モードを「BULB」に変更します。
その後、リモコンを使うことができる状態にするために、撮影画面のメニューを呼び出す「INFO」
ボタンを押し、「Q」ボタンからドライブモードを選択、「セルフ:2秒バルブ(リモコンのマーク)」に変更。
その後、「MENU」ボタンから撮影機能設定を以下のように変更しましょう。
1.「高感度撮影時のノイズ軽減」を「しない」に変更
2.ボディ内・レンズ側の手ぶれ補正機能を「オフ」にする(EOS Rの場合ボディ内手ぶれ補正はな
しなのでレンズ側の手ぶれ補正スイッチをオフにするだけ)
1.の変更を行うのはノイズ軽減をかけるとディテールが失われてしまうためで、2.の変更を行うの
は長時間露光撮影時に手ぶれ補正による修正が入ると逆にぶれやすくなるためです。
長時間露光では通常よりも多くの光を取り込むため、絞り(F値)を開けているとすぐに白飛びして
しまいます。ある程度絞りを閉じないと何が写っているのかわからなくなってしまうので、F値を
F10〜F16くらいに調整します。
ISO感度も上記と同じ理由で、長時間露光撮影をする際に感度を高めていると明るすぎるため、
最も低い設定(EOS RではISO200)、もしくはよくわからない場合はオートにしてもいいでしょう。
三脚にカメラを固定し、リモコンやレリーズをカメラに接続し、カメラ内部の設定や撮影設定を以
上のように変えたら、いよいよ撮影します。といっても特別な手順は必要なく、レリーズやリモコン
のシャッターボタンを1回押してシャッターを開け、必要な時間だけ放置したのち、もう1回シャッ
ターボタンを押してシャッターを閉じる、これだけです。
シャッターを開けてから閉じるまでのスピードは、先述したとおり通常に撮影するときの「シャッ
タースピード」と同義なので、夜景や光跡の撮影では「3秒〜5秒」もしくは「10秒〜15秒」、「40
秒〜44秒」程度がいいでしょう。写したい光の軌跡がどれだけ必要かに応じて、秒数を調整しま
す。
それでは、実際に長時間露光を使って撮影した作例を最後にご紹介します。夜の車通りの光跡
写真や、夜のビルを写した写真です。このような夜の長時間露光撮影は、フィルターがなくても
ちゃんとした写真が撮れるので、気軽に試すことができます。
以上、長時間露光の定義や仕組み、長時間露光が活用できる撮影シーンから、実際の撮影方
法までを実際の作例や機材の写真とともに紹介しました。
必要に応じてシャッターを開ける秒数を調整するなど、慣れるまでには時間がかかりますが、長
時間露光撮影をある程度マスターすれば、夜景を筆頭にインスタやSNS映えする幻想的な写真
を自在に撮影できるようになるでしょう。
長時間露光撮影自体はそれほど難しいわけではありません。通常の写真では物足りない、もっと
幻想的な写真を撮りたいという方は、長時間露光撮影にぜひ挑戦してみてくださいね。