アールイーマガジン

【ミラーレスカメラ×オールドレンズ】Leica Elmar-C 90mm F4(エルマー)レビュー!ソニーαシリーズに合わせるコンパクトな中望遠オールドレンズの魅力
【ミラーレスカメラ×オールドレンズ】Leica Elmar-C 90mm F4(エルマー)レビュー!ソニーαシリーズに合わせるコンパクトな中望遠オールドレンズの魅力
この記事をシェア

ミラーレスカメラとオールドレンズの組み合わせは、非常に魅力的。
オールドレンズの柔らかな描写や個性的なボケ、各レンズに宿る独特の味わいは、時代を超えて
多くの人々を惹きつけています。
デジタル時代だからこそオールドレンズを気軽に楽しめる新たな写真の魅力を紹介していきます。
さて、今回の主役は「Leica Elmar-C 90mm F4」。
ライカのコンパクトな中望遠オールドレンズです。ミラーレスカメラのソニーαシリーズで使用し、そ
の特長と魅力をレビューします。

Leica Elmar-C 90mm F4の特徴

Leica Elmar-C 90mm F4は、1973年に発売されたライカCL用の交換レンズとして登場しました。
エルマーシリーズの中でも特にコンパクトで、持ち運びやすさが特徴です。このレンズは、当時の
ライカとミノルタの協力による製品で、ライカ独自の高品質を保ちながら、より手に取りやすい価格
帯を実現しました。
そのため、「廉価版レンズ」として位置づけられることもありますが、性能や描写の美しさに妥協は
感じられません。
「Elmar」という名称は、ライカのレンズシリーズに使われる伝統的な名称のひとつで、元々は
1920年代に登場したライカの初期レンズ「50mm f/3.5 Elmar」に由来します。
この名称は、ライカ創業者の一人であるエルンスト・ライツ(Ernst Leitz)にちなみ、彼の名前「
Ernst」と「Leitz」を組み合わせた造語とされています。「Elmar」はライカの中でも比較的シンプル
で手軽な設計を特徴とするレンズ群に使用され、長年にわたり親しまれています。
また、Elmar-Cの「C」は、このレンズがコンパクト(Compact)なサイズで設計され、1970年代に登
場したライカCL用のレンズであることを示しています。
ライカCLは、ライカがミノルタと共同開発した小型レンジファインダーカメラで、このレンズもそのシ
リーズの一環として誕生しました。CL専用に設計された「Elmar-C」は、コンパクトさと軽量さを重
視した設計となっています。
光学設計は4群4枚構成とシンプルながら、解像度の高さと柔らかなボケ味が絶妙なバランスで調
和しています。
開放F値はF4と控えめですが、絞り込むことでシャープさがさらに際立ち、ポートレートや風景撮
影にも最適。
個人的には50mmのレンズとセットでElmar-Cを持ち歩きたくなります。コンパクトなので旅レンズ
としての選択肢もありでしょう。

レンズスペック

以下はLeica Elmar-C 90mm F4の基本スペックです。
メーカー:Ernst Leitz
マウント:ライカMマウント
レンズ構成:4群4枚
絞り羽根枚数:10枚
実測値:270g
発売年:1973年
このレンズの最大の魅力は、軽量かつコンパクトな設計です。わずか約270gの重量で、ミラーレ
スカメラとの相性も抜群。
「廉価版レンズ」と思われがちですが、なかなか侮れないのがElmar-C。ライカらしい高品質な描
写を提供してくれます。お手頃な価格で入手できるので、Elmar-Cはオールドレンズの入り口とし
てもおすすめの1本です。

Elmar-C 90mmとSony αシリーズの組み合わせでオールドレンズを楽しむ

Sony αシリーズのミラーレスカメラにElmar-Cを装着するには、マウントアダプターが必要です。こ
のアダプターを使用することで、クラシックなレンズの特性を活かしつつ、現代のデジタル技術で
その描写を楽しむことができます。
ここからは実際にElmar-Cを使用して撮影した作例をアップしていきます。

90mmという焦点距離で頭に浮かんだのがポートレート撮影。90mmという焦点距離はポートレー
ト撮影における理想的な選択肢の一つだと言えるでしょう。
モデルさんとの距離感を適度に保ちながらも、しっかりと表情を捉えることができるのが魅力です
よね。
これは冬の晴れた日に撮影した写真です。
逆光で撮影するとフレアのように現れた収差。柔らかな光が広がり、レースのようなシルキーな光
がモデルさんを包み淡い雰囲気になります。オールドレンズならではの独特な描写とボケ味もあ
り、ふんわりとした心地よい印象の写真になりました。
Elmar-C特有の描写とボケ味は、写真に温かみや柔らかさがあり情緒豊かな表現をするのに向
いています。

Elmar-Cは光の入り方をコントロールすることで光線の輝きが放射状に広がったり、虹色の光芒
がでたりします。
多層コーティングが施された現代のレンズでは、フレアやゴーストが極力抑えられるよう設計され
ていますが、クラシカルなレンズではこの「抑えきれない光」が逆に個性として活きています。
Elmar-Cの「抑えきれない光」は、派手過ぎず、それでいて地味過ぎず。このようなオールドレンズ
ならではの演出が、写真全体に幻想的な印象を加えてくれます。

シャープネスも気持ちいいのがElmar-C。適度なシャープさと柔らかさのバランスを絶妙に保ちな
がら、様々な表現に対応できることが分かります。
全体の印象や季節感を引き立てる赤いマフラーは、ソフトな描写によって悪目立ちすることなく「ま
ろやかさ」を保ってくれています。
Elmar-Cはモデルさんの内面や感情を繊細に表現するポートレートに向いているレンズだと感じ
ました。
コンパクトでコロッとした可愛らしいレンズの形状はモデルさんに威圧感を与えることなく、自然な
表情を引き出す効果があるのではないでしょうか。

ここからはいろいろな場所へElmar-Cを連れ出して撮影した写真になります。
近所の公園に咲いていた一輪のツバキ。
逆光を利用して虹色の光芒を浮かび上がらせてみました。このような光芒を利用した表現がオー
ルドレンズの楽しみの一つ。
さらに、奥の葉が生み出す玉ボケは暖色系の光と相まって、全体に温かみのある雰囲気を醸し出
してくれます。

この写真は山間部にある釣り場で撮影。
早朝の霧を通して差し込む光が、柔らかく幻想的な状況を作り出していました。光を柔らかく拡散
させる描写や、軟調なボケ味は、その場面が持つ静寂と幻想的な雰囲気をさらに際立たせてくれ
ます。

釣り場のロッジで提供されたサーモンいくら丼。
料理撮影をするのに90mmという焦点距離は少し苦しいですが、自然光が綺麗だったので撮影し
ました。
何気ないテーブル写真ですが、Elmar-Cの描写によって家庭的な温かさや、日常の幸せといった
感情を同時に感じさせるような一枚になったのではないでしょうか。

山から海へ移動して撮影した一枚です。
周辺減光が早朝の空気感をノスタルジックに仕上げてくれます。海、砂浜というシーンをどうまとめ
るか悩んだいたところに現れてくれた一台のスクーター。写真にストーリー性を持たせることがで
きました。
また、90mmという焦点距離は、ビーチのような開けた場所では、被写体と背景のバランスを効果
的に調整し、全体に統一感のある構図を作り出しやすいです。

砂浜にポツンと取り残された白い貝殻にフォーカスした写真です。
背景のボケが、非常に柔らかく自然な描写になっている点が、オールドレンズならではと言えるで
しょう。現代レンズのシャープなボケとは異なり、より自然で、絵画的な雰囲気が特徴です。
写真全体の色調は、白とグレーを基調とした、やや淡いオールドレンズライクなトーンで統一され
ています。この淡い色再現は、ノスタルジックな雰囲気を高めてくれます。

ここからは、東京に戻りスナップしたものをアップしていきます。
カフェで注文したジンジャーエール。日常の一コマと言える、何気ないスナップショットですが、レン
ズの柔らかさや淡さが加味されることで、情緒的になります。このような、日常の何気ない被写体
でも、魅力的に表現してくれるのが、オールドレンズの魅力です。

この写真は、雨の日にウッドデッキを捉えた一枚です。
ウッドデッキに雨水が溜まり、そこに傘をさした人物の影と、周囲の建物の反射が映り込んでいま
した。
雨の日は、どうしても出かける気が失せてしまいがちですが、晴れた日とは違った雰囲気の写真
が撮れるのでおすすめです。

東京湾岸エリアの港湾施設で撮影した夕景です。
オールドレンズ特有の、どこかノスタルジックで温かみのある描写は、無機質なパレットにぬくもり
を与え、写真全体を包み込むような優しい雰囲気を作り出してくれます。
このレンズに限らずオールドレンズはマジックアワーと呼ばれる時間帯の、柔らかく繊細な光を捉
えることに長けています。その独特の描写は、現代レンズでは再現できない、情緒的な雰囲気を
写真に与えてくれます。

夕焼けが綺麗に出ていたのでシルエット写真を撮りたくお台場に移動しました。
周辺減光や色調などオールドレンズならではの写真が撮れました。Elmar-Cの描写は、写真全体
に詩情のような深みを与えてくれるような気がします。

お台場からレインボーブリッジを渡り対岸に。
すっかり陽が落ち、ライトアップされたレインボーブリッジを撮りました。絞って撮影するとしっかり
シャープな写真に仕上がります。50年ほど前に製造されたレンズですが、描写力の高さを感じる
ことができます。

Leica Elmar-C 90mm F4を使ってみて

今回は、Elmar-C 90mm F4をソニーのミラーレスカメラα7R IVとα7s Ⅲで使いました。
Elmar-Cを使って感じたことは、コンパクトさと確かな描写力。「廉価版レンズ」などと呼ばれること
もあるElmar-Cですが、侮ることはできません。
派手さや癖はあまりありませんが、「真面目で誠実な描写」がElmar-Cの魅力です。
オールドレンズ沼に踏み込んでしまうと、50mmレンズばかりが増えていくのが「あるある」です
が、リーズナブルな価格で入手できる中望遠の90mmを一本加えてみるのはいかがでしょうか?
「ミラーレスカメラ×オールドレンズ」というテーマでお届けしているこのシリーズ。これからも、いろ
いろなオールドレンズを紹介していきます。
ぜひ、お手持ちのミラーレスカメラでオールドレンズを活用し、その特性を楽しんでみてください!


著者プロフィール
山本 洵
埼玉県戸田市出身。
メインフィールドは旅行系メディアでの撮影・執筆。
株式会社三和オー・エフ・イー所属。

この記事をシェア

Topicsトッピックス タグ一覧