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今回のコラボ企画をご提案いただいたのは、今年6月のことだった。
普段触れることのないカメラをお貸しいただけるということで、非常にワクワクとした気持ちだったのを覚えている。
私は写真部の代表でありながら、使用する機材はデジタル一眼のみで、フィルムカメラを使用したことがなかった。レンタルする機材の相談をしたところ、新しい視点を開くために、フィルムカメラで、しかもレンジファインダーのカメラを使ってみようというようなアドバイスをいただいた。このような経緯で、機材はLeica M3とSumuilux 50mm/f1.4に決まった。またフィルムはKodakのGold color negative film 35mm ISO200を使用した。
いつも使っているデジタル一眼であれば、何枚も撮って、あとから出来の良いものを選別するという方法が使える。しかし、フィルムではそうはいかない。
ここぞという瞬間を切り取らねばならない緊張感がある。とあるOBの方は「フィルムで撮るには一枚一枚覚悟がいる」と言っていたが、なるほどと腑に落ちた。
では、私はどのような瞬間を切り取ろうとするのか。それを探るのが今回のテーマである。
これぞ東京のランドマーク。
地方から上京してきた私にとっては、何度被写体にしても飽きないものの一つ。
快晴との相性も抜群である。
旅先で見つけたちょっと不気味な看板。
残された帽子がどうも不穏な空気を醸し出す。
恐る恐る先に進むと、そこにあったのはなんの変哲もない吊り橋だった。
所狭しとお地蔵様が並んでいる。神々しくもあり、禍々しくもある。
なぜ、この場所に大勢のお地蔵様がいるのか。ここから先は踏み込んではいけない気がする…
クマさんといっしょにケーキを食べた。妹が人形を椅子に座らせておままごとをしていたのを思い出す。
人形は人間と違って動かないのでピントが合わせやすく、慣れないカメラの被写体にはちょうど良い。
とある美術館の室内展示。中世ヨーロッパの装飾品は均整の取れた美しさがある。室内のぼんやりとした灯りが綺麗に写せるのはM3のなせる技だろう。
慣れないレンジファインダーのピント合わせ。撮影時には上手く撮れているつもりでも、いざ現像してみればこのとおり。
室内の光をうまく写せるかと思ったのだが……無念。
生き物の中では、馬という生き物ほど美しいものはいないのではないだろうか。凛とした表情を見せるときも良いが、こういった気の抜けた表情もたまらない。
フィルムカメラで瞬間を切り取れるだけの技量はないので、じっくりと自然体の馬を撮影することになる。
作例を見ると、私は不思議なものやドラマを感じさせるものを撮りたいのだなと改めて感じた。そんな私にとって、M3は持つだけでドラマチックな気分になれる機材だった。M3は無駄を削ぎ落とし、洗練されたデザインで持つ者の心を躍らせる。M3で切り取る瞬間はどれも、非日常のドラマを醸し出している気がした。
慣れないレンジファインダーも、新しい刺激としてとても楽しむことができた。いつもはオートフォーカスでどう一瞬を切り取るかということに注力していたが、今回はそうはいかない。ピントを合わせるまでに時間がかかるし、正確にピントが合っているというより若干ぼやけたものが多い。しかし、切り詰めて撮る写真も良いが、こういったじっくりと撮る写真も悪くない。そう思わせてくれたM3は、私に新しい視点を確かにもたらしたのだった。
○著者
早稲田大学写真部
早稲田大学 文学部3年 佐々木郁人
普段は風景写真を主に撮影している。