【早稲田大学写真部×アールイーカメラ】『大判は世界を覗く窓』フジノンSDW90mmF5.6/田口睦大
【早稲田大学写真部×アールイーカメラ】『大判は世界を覗く窓』フジノンSDW90mmF5.6/田口睦大
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今回私はフジノンSWD90mmF5.6という大判レンズをお借りしました。
90mmを選んだのは、普段150mmを使っていてもっと広角で撮ってみたかったからというのと、広すぎない画角が良かったからというのが主な理由です。

フジノン SWD90mmF5.6

富士フイルム FUJINON・SWD 90mm F5.6

SWDはSuper Wide Deluxeの頭文字をとったもので、包括角度105°の大口径レンズ群を指します。
シャッターはコパル社のものを採用していて、このレンズはNo.0のシャッターを使っています。

富士フイルムといえば、写真用フィルムやミラーレスのXシリーズが有名ですが、大判用レンズでも高い評価を受けており、ドイツの名門・シュナイダークロイツナッハに並ぶ銘柄です。

また、国産としてはニコンの大判ニッコールとの二大巨頭を形成しています。
大判の焦点距離を35mm判に単純換算するのは些か抵抗がありますが、90mmのこのレンズは換算すると約25mmになります。

余談ですが、対角線の長さと(ほぼ)同じ焦点距離をもつレンズを標準レンズとするならば、4×5の標準レンズは150mmです。35mm判で同じ計算をすると43mmが該当します。現行で43mmのレンズを出しているのはPENTAXだけなのが残念ですね……。

90mmスナップ

今回はモノクロフィルムのみとなります。大判のフィルムは高すぎる……。
カラーネガはもちろんですが、いつかはリバーサルフィルムを使ってみたいです。
使用したのはFOMAPAN100です。
大判自家現像に初挑戦してみましたが、やや現像ムラができてしまいました。ご了承ください。

北海道旅行の2日目の朝、たまたま宿の近くに見つけた公園で撮りました。5枚の絞り羽根によって生じる五角形のゴーストが印象的です。

逆光に対してはやや弱めでしょうか、全体的にふんわりと白んでいます。一方でシャドウの部分はくっきりと描写されており、この階調の豊かさはさすが大判といったところです。

1枚目と同じ公園で撮影しました。大判の個性を活かし、全面にピントを合わせています。隅々まで解像感の高さを感じるのは、イメージサークルの広い大判ならではではないでしょうか。

これも同じ公園内です。同じように全体にピントが合うよう調整しました。明暗差が大きいシチュエーションだったのでどうなるか少し心配でしたが、シャドウからハイライトまで綺麗に描写されました。FOMAPAN100はシャドウがストンと落ちる、という話を聞いたことがありますが、これを見ると確かに評判通りな気がします。

東京に帰ってきてすぐの撮影でした。今度はこれまでの写真とは反対にアオリを思いっきり活用し、ミニチュア感を出してみました。
フィルム1枚1枚が高いので、なかなかこうした遊びをするのは気が引けますが、いざ撮ってしまうと、大判にしかできない写真になってとても楽しいです。

『大判カメラは世界を覗く窓』

大判を手に入れてからの夢だった「街中でおもむろに大判カメラを構えて撮る」を叶えた1枚です。大判を始めるときに先輩から「大判は世界の窓だ」と言われたのがとても印象に残っています。部屋から窓の外を見るように、大判のスクリーンを通して世界を切り取る。これが私の理想の大判カメラの運用です。

ある日、富士フイルムのギャラリーで出会った方との会話も印象に残っています。
私はその日、C330に80mmのレンズをつけていたのですが(これは35mm判に換算すると大体43mmです)、その方は55mm(35mm判換算30mm)を愛用していたそうです。
その方は「日本の都市部を撮るなら広角の方がいい、標準だと狭すぎる。」とおっしゃっていました。確かに都心を、それこそ窓から覗くように俯瞰的に撮るのであれば、換算30mm以下の広角が適しているのではないかと思います。

今回の90mmは換算25mm程度ですから、都会の人混みを撮るのに向いていたと思います。
貸出期間の半分以上北海道にいたため作例が少なくて申し訳ないですが……

普段150mmばかり使っていたので、今回広角レンズをお借りできたことで表現の幅が広がったような感じがしてとても楽しかったです。

まとめ

フィルムカメラ自体が縮小しつつある今、その中でもさらにユーザーの少ない大判カメラの機材を探すのは大変です。レンズを見つけてもなかなか手の出る値段でないことが多々あります。そんな中、今回の貸出の提案をしていただき、こんな絶好の機会はないと思い大判レンズをお借りしました。

「窓」たる大判のスクリーンに写る広角の世界を存分に楽しむことができて非常に満足できました。


著者プロフィール
早稲田大学写真部
田口睦大
カメラ歴は8年ですが大判は始めたての初心者です。
本文にも書きましたが、「街中でおもむろに大判カメラを広げる」をテーマに大判撮影をしています。35mm判や中判でもスナップが多いです。

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