【早稲田大学写真部×アールイーカメラ】4:5で世界を切り取る PENTAX67・SMC MACRO TAKUMAR 135mmF4/田口睦大
【早稲田大学写真部×アールイーカメラ】4:5で世界を切り取る PENTAX67・SMC MACRO TAKUMAR 135mmF4/田口睦大
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今回私はPENTAX 67をお借りしました。このカメラを選んだ理由は大きく2つあり、まず1つは6×7判を使ってみたかったから、そしてもう1つは「バケペン」と称されるカメラ史に残る名機を触ってみたかったからです。

6×7判を選んだ理由

6×7判を選んだ理由を端的に上げるならば、普段使い慣れていないアスペクト比を使ってみたかったからです。

6×7判の画面サイズは56mm×69mmで、ほぼ4:5の比率です。中判といえば6×7、と言っても過言ではないほど有名なサイズでありながら、実はクロップなしで4:5の比率をもつカメラは6×7判か大判の4×5、8×10くらいしかありません。

私は普段、35mm判(フィルムとデジタル)と6×6判のC330を使っています。これらのカメラは当然それぞれが持つ画面サイズに適した設計をされていますから、ファインダーを覗いても4:5に見えることはありません。

その点、PENTAX 67はファインダーを覗けば4:5の世界が広がり、6×6判の整然とした景色でも、35mmや6×9判のやや横長な景色でもなく、フォーサーズや6×8判のような4:3の比率とも少し異なる独自の体験をもたらしてくれます。

PENTAX 67

中判カメラに興味を持った人は「バケペン」という名前をどこかで一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

このバケペンは、旭光学工業が35mm判のアサヒペンタックスシリーズで成功を収めていた1969年に「ASAHI PENTAX 6×7」として発売されます。
1989年にはロゴを変え「PENTAX 67」と名称を変更しています。今回お借りしたのはこちらのモデルになります。

アイレベルファインダーのプリズムの大きさは圧巻で、東京・半蔵門にある日本カメラ博物館に展示されているカットモデルは一見の価値ありです。

SMCマクロタクマー135mmF4

今回は135mmF4をお借りしました。35mm判換算で約65mmのマクロレンズになります。3群5枚のレンズに絞り羽根8枚という構成で、最短撮影距離は0.75m、最大撮影倍率は0.31倍と、マクロレンズとしては近接撮影に弱いレンズになりますが、普段使いのレンズとしてはそれなりに寄れる面白いレンズです。

67スナップ

まずはカラーネガの作例です。KodakのGOLD200を使用しました。

雲ひとつない快晴の中での撮影でした。レンズ側のエラーで少し露出オーバーになってしまいましたが、ネガということもあり破綻せず、むしろハイライトが綺麗に白くなって良い感じになりました。

動体撮影にチャレンジしてみました。3:2と比べると適度に被写体にフォーカスできる写真になったのかなと思います。6×7判は比率的には大判と同じですが、大判で動体をリズミカルに撮るというのはやはり難しいです。その点中判の6×7判は機動性に優れていると再認識させられました。

中判リバーサルの世界

次にカラーリバーサルの作例です。
FUJIFILMのVelvia50を使用しました。今回の撮影場所は横浜です。

Velviaを使うからには鮮やかなものを撮ろうと思い撮った1枚です。
青の発色がまさにVelviaらしくて美しいです。写真としても、対称性がありながら横への広がりを感じさせる6×7判ならではの構図になったと思います。

私は普段デジタルで撮っている時から「縦は4:5がいい」というこだわりがあります。その点6×7判は縦で構えればトリミング不要で好みの写真が撮れるので、つい縦で撮りたくなってしまいます。重さもあるので縦で持つのはなかなか大変ですが、それでも縦構図を撮りたくなる楽しさがあります。

明暗差が大きくどうなるかと思いましたが、非常に色再現性が高く美しい1コマになりました。データ化によって少しくすんだ気がしますが、実物のポジを見ると上部の青色から水面の濃いオレンジまでよく発色していて圧巻の1枚です。

増感モノクローム

最後にモノクロの作例です。ILFORD HP5 PLUSを使用しました。本来はISO400のフィルムですが、
今回はISO6400として用い、増感現像を行いました。

増感に加え温度を上げて現像したため、元のフィルムの描写よりはコントラスト・粒状感が強い画になっています。

川のほとりを歩いていた時の1枚です。中判ならではの高い描写力で草や羽がくっきりと写っています

6×6よりも左右にゆとりがあるため、横への広がり(今回は右側)を感じさせる写真になったと思います。

最後はマクロレンズとしての作例です。ほぼ最短撮影距離で撮影しました。高感度特有の粒状感を別にすると、細部が非常によく描写されていると思います。

等倍撮影できるレンズに比べればたしかに物足りなさは否めないところですが、通常用途であれば何ら不便のない使いやすいレンズだったと言えます。

HP5PLUSでの増感は何度か行っていますが、やはりこのフィルムは増感耐性が高いです。4段も増感して破綻しないのは素晴らしいですし、高感度フィルムが減った今では貴重な選択肢かもしれません。参考までに、私の増感レシピは以下の通りです。

(本来の現像時間)×1.5N (N=増感段数)

4段増感にもなると20°Cで1時間以上かかってしまうので、だいたい24°Cやら26°Cで現像してしまいます。本当は現像時間は長い方がいいのですが……

まとめ

今回アールイーカメラ様にこのカメラをお借りして抱いた率直な感想は、「憧れ」を手にできた喜びです。

カメラを始めたころから憧れていた、もっといえば初めて名前を知った中判カメラである名機・PENTAX67ですが、普段6×6のC330を常用していることもありなかなか手が出せませんでした。
そんなカメラを実際に使用させていただけたのは非常に貴重な機会であり、憧れが叶った瞬間でもありました。


著者プロフィール
早稲田大学写真部
田口睦大
普段は35mm判で街中のスナップを撮っています。
少し前までは街角の人物をテーマにしていましたが、写真集を作ってからは燃え尽き気味で雑多なものを撮っています。
主な機材:EOS R6MarkII, NikonF, LeicaIIIf, MAMIYA C330

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