玉薗周信
オールドレンズやフィルムカメラなどいろいろなカメラで遊んでいます。写真以外の趣味は登山、 サーフィンなどのアウトドア。株式会社三和オー・エフ・イー所属。
玉薗周信の使用カメラ
数多のデジタルカメラが存在する現代において、Ricoh GR IIIがこれほどまでに支持される理由は何でしょうか?
「最強のスナップシューター」と呼ばれ、「インスタグラマー御用達」、「入手困難」など、常に注目を集めているGR Ⅲ。
先日、GR Ⅳの開発発表もあり、新型の仕様がどうなるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
そんな大人気のGR IIIをお借りすることができました。
1週間、いろいろなシチュエーションで使い倒してGR Ⅲの人気の秘密を探ってみます!
ぜひ、最後までお付き合いください。
このセクションでは、GRの歴史を紐解き、その誕生から現在に至るまでの軌跡を辿ってみます。
フィルムGRからデジタルGRへ、そして最新モデルGR IIIへと進化を遂げる中で、GRは常に写真
界に革新をもたらし、新たな表現の扉を開いてきました。
GRシリーズの物語を語る上で、忘れてはならない存在があります。それは、1994年に発売されたRICOH R1シリーズです。
R1は、GR1の前身とも言えるモデル。そのコンパクトなボディ、高画質なレンズ、そして洗練されたデザインは、後のGRシリーズに大きな影響を与えました。
R1シリーズの開発で培われた技術とノウハウは、GR1の開発に活かされ、GRシリーズの誕生を大きく後押ししました。
そして1996年、リコーは、満を持してフィルムカメラ「GR1」を発表します。
当時、高級コンパクトカメラ市場は、各社が最新技術を投入し、しのぎを削る激戦区。
リコーは、GR1の開発にあたり、R1シリーズの「シンプル」というコンセプトを継承。
「本当に必要なものだけを、最高のクオリティで。」を前面に掲げました。
その結果、GR1は、卓越した描写力、洗練されたデザイン、そして何よりも、スナップシューターとしての完成度の高さで、プロのフォトグラファーからアマチュアまで、多くの写真愛好家を魅了しました。
GR1の成功は、リコーに大きな自信を与えました。
しかし、時代の流れは、デジタルカメラへと急速にシフトしていきます。
2005年、リコーは、GR1のDNAを受け継ぎつつ、デジタルならではの進化を遂げた「GRDIGITAL」を発表。フィルムカメラからデジタルカメラへ。
それは、単なる技術の移行ではありませんでした。
GR DIGITALの開発チームは、GR1のコンセプトを継承しつつ、デジタルならではの表現力、
機動性、そして操作性を追求しました。GR DIGITALは、高画質、高速レスポンス、そしてGRらしい操作性で、デジタルスナップの新たなスタンダードを築き上げました。
R1、GR1とGR DIGITAL。3つのカメラは、それぞれ異なる時代に生まれましたが、その根底には、
GRイズムと呼ばれる、不変の哲学が流れています。
GR DIGITALは、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳと進化し、2013年に、現行シリーズとなるRICOH GRシリーズが発売されることになりました。
GR IIIは、2019年に発売された、GRシリーズの定番人気モデルです。
GRシリーズのコンセプトである「究極のスナップシューター」を追求し、高画質、小型化、そして操作性の向上を実現しました。
ここでは、GR IIIのスペックからこのカメラの特徴を解説します。
GR IIIの主なスペックは以下の通りです。
イメージセンサー: APS-Cサイズ CMOSセンサー(有効画素数:約2424万画素)
レンズ: 18.3mm F2.8(35mm判換算で28mm相当)
画像処理エンジン: GR ENGINE 6
手ぶれ補正機構: 撮像素子シフト方式(3軸)
ISO感度: ISO100~102400
液晶モニター: 3.0型 約103.7万ドット TFT液晶
サイズ: 約109.4mm(幅)×61.9mm(高さ)×33.2mm(奥行き)
質量: 約257g(バッテリー、SDメモリーカード含む)
このスペックを見ると、GR IIIが日常のスナップやストリート、風景撮影に優れたカメラだと感じます。サイズ、重量に対して大型のAPS-Cセンサーが搭載されているのは魅力的です。
ファインダーがない、液晶がチルト式ではないことなどから、GR Ⅲは撮影体験を楽しむというよりも、
「もっと気軽に、綺麗な写真を、思い立った瞬間、どんどん撮っていく。」そんなカメラなのではないかと感じます。
GR IIIに搭載されている18.3mm(35mm判換算で28mm相当) F2.8のレンズは、熱狂的なファンを持つ存在。
GRシリーズの象徴とも言えます。
GR Ⅲの約3年後に登場したGR Ⅲxは、焦点距離が26.1mm(35ミリ判換算で約40mm相当)の標準画角。GR ⅢとGR Ⅲxのどちらを選ぶか悩む意見も多く見られます。
レンズ構成:4群6枚(非球面レンズ2枚)
焦点距離:18.3mm (35ミリ判換算で約28mm相当)
F値:F2.8~F16
ボディと同じく、レンズもコンパクト。それでいて、4群6枚の大口径F2.8を採用しています。
解像度はかなりシャープでとても鋭敏。
コンパクトな見た目からは想像できない繊細な描写をします。
また、レンズ繰り出し式のレンズになりますが、レンズ繰り出し量も控えめなのが好印象。
レンズが繰り出された状態でもサイズ感のコンパクトさは損なわれない印象です。
絞り値(F値)の調整によって、シーンに合わせた多彩なボケ感を演出できます。開放F2.8では背
景が十分にぼけ、主役となる被写体が分かりやすく、F11まで絞ると被写体と背景が馴染んで自
然な描写になります。
GR IIIのクロップ機能は、撮影時にデジタル的に画角を狭めて異なる焦点距離の効果を得るための便利な機能です。
GR IIIでは、撮影画角を35mm判換算で35mmや50mmにクロップできます。これにより、広角28mm相当の標準設定からより狭い視野の撮影ができます。
このクロップ機能により、余分なものまで写ってしまうという広角ならではの悩みを解決することができるでしょう。
GR IIIにはマクロモードが搭載されており、近接撮影が可能。マクロモードは、普段目にしない小
さな世界を切り取る機能です。GR IIIのマクロモードを活用することで、写真撮影の幅が広がり、よ
り多彩な作品を撮ることができます。
マクロモードで近接撮影を行い、更にクロップ機能を適用することで、被写体の一部をより強調することもできます。
ここでは実際にGR Ⅲを使ってみて感じた感想をお伝えしていきます。メリットだけでなくデメリット
もしっかりお伝えできればと思います。
GR Ⅲのファーストインプレッションは、やはりコンパクトで軽い。そして思っていたよりもグリップ感が良くホールドしやすいと感じました。
質感は堅牢とは言い難い印象もありますが、このライトな質感はそれはそれで悪いものではありません。カメラというよりは、ガジェットのようなイメージでしょうか。
それでいて、大型のAPS-Cセンサーが搭載されているのですから、バランスの良いカメラだと言えるでしょう。
GR Ⅲは、ポケットに収まるコンパクトさに注目が集まりますが、ポケットからスムーズに取り出せる凹凸のないデザイン(形状)も見逃せません。コンパクトなだけでなく、ポケットから取り出しやすいGR Ⅲは旅先や日常使いでストレスなく扱えそうです。
操作系も直感的で使いやすいです。UIデザインも良く、ボタン操作でのストレスは感じませんでした。
マクロモード、クロップなどスムーズに切り替えられるのも嬉しいポイント。
操作ダイヤル、ボタンが右側にまとまっていることで、片手で操作しやすいのもスナップに適した配置なのではと感じました。
総じて、持ち運びやすさ(扱いやすさ)と、画質を両立させたカメラだと言えそうです。
実際に手に取ってみると、その魅力を感じることができるでしょう。
GR IIIの最大の魅力は、その圧倒的な携帯性です。ポケットにすっぽり収まるサイズなので、いつでもどこでも持ち歩け、シャッターチャンスを逃しません。これは他のコンデジと比較しても優位性がありそうです。
著者はGR IIIのライバルと言えるであろう、フジのX100シリーズ、ソニーのRXシリーズ、ライカのQシリーズを使っていますが、携帯性では他よりもGR IIIが一歩抜け出していると感じました。
また、GR IIIのデザインは主張が少なく、悪目立ちしないところもメリット。
被写体にプレッシャーを与えることもなく、周囲にも溶け込みます。
自然な表情や、街の一瞬を撮影したい時に適したカメラです。
その他に、片手で操作できる操作性や、起動の速さにも好感を持てました。
良く見かけるGR IIIの欠点としてバッテリー持ちの悪さが指摘されます。確かにバッテリーの消費が早く、長時間の撮影には予備バッテリーが必要です。
これはバッテリーを大きくして重量を増やすよりも、軽いバッテリーを何個か持ち歩くほうが軽量でメリットがあるという考えに基づいているようにも感じました。バッテリーの価格も安いので予備バッテリーを複数個用意するのがおすすめです。
また、防塵防滴性能がないため、雨天時や砂埃の多い場所での使用には注意が必要です。
いつでも持ち歩きたいカメラなので防塵防滴性能があると嬉しいのですが、バランスを考えると難しそ
うですね。
最後に、手ぶれ補正効果が搭載されていますが強力とは言えません。
特に、動画撮影時には注意が必要です。動画に使うカメラではないと割り切るユーザーが多いのも事実です。
スマホよりも小さく、APS-Cセンサーで起動も早い。操作性も良いのでGR IIIは常に持ち歩きたくなるカメラです。
シンプルなデザイン、小さなシャッター音は気軽に使うのに最適。
1週間、ポケットに入れて持ち歩いて撮った作例をシチュエーション別に紹介します。
この日はモデルさんの撮影があったのでGR Ⅲでもポートレートを撮らせてもらいました。
普段、28mmでポートレートを撮ることがないので、これはこれで新鮮な感覚。
28mmは広角特有の歪みがあるため、モデルの位置を中心にするなどの工夫が必要ですね。
35mmクロップで寄ってみました。
GR Ⅲは見た目がスマートで、モデルへの威圧感がないのが嬉しい点。カメラに慣れていない人に近寄る時も自然な表情を引き出せます。
50mmクロップでは画質が気になりましたが、実際は気にならないほど綺麗な仕上がり。
標準画角で自然なポートレート写真も撮影できます。
遠くの景色まで写り、パースペクティブが強調されました。このカメラ一台で幅広くポートレート撮影ができるのはとても便利。
カジュアルな雰囲気のポートレートもGR Ⅲの得意分野。ここからはイメージコントロールのポジフィルム調で撮ってみました。
ポジフィルム調は色味がくっきりとした鮮やかな写真になります。この写真ではモデルの髪色や背景のアジサイが印象的な一枚になりました。
28mmのポートレート撮影にも慣れてきました。寄ったり引いたり、動きながらの撮影も楽しいですね。
ポートレートは中望遠くらいのレンズから使うことが多かったですが、28mmのGR Ⅲでも良い感じで撮ることが出来ました。
GR Ⅲを使ったカジュアルな雰囲気の撮影は、モデルさんの新しい一面を引き出すことができそうです。
コンパクトなGR Ⅲはもちろんおでかけカメラとしても秀逸。
片手が塞がっていても片手で操作ができるので思い立った瞬間にシャッターを切ることができます。
わたしはネックストラップを使っていますが、ポケットにも余裕で入るのがGR Ⅲ。
ミラーレスを持ち歩くのが億劫に感じる時もGR Ⅲなら気になりません。
スマホで写真を撮る感覚で撮影することができます。
子供連れでミラーレスカメラはちょっと・・・と思っている方にこそGR Ⅲはおすすめしたいカメラです。
茨城県小美玉市の素鵞神社にお参り。5月限定の御朱印があったので頂きました。
ネモフィラに囲まれた猫が可愛い切り絵のデザイン。
普段ならスマホで撮るような記録的な写真も、ポケットにGR Ⅲがあると綺麗に残すことができます。
この写真はおでかけ帰りに車窓から見えた景色です。GR Ⅲは、綺麗な風景を撮影するのにも最適。
こちらの写真はイメージコントロールのビビッドで撮影しました。スタンダードのナチュラルな色味もよいですが、より印象な写真にしたくビビッドに設定しました。
趣味の登山にもGR Ⅲ。今まではソニーのミラーレスカメラを持っていっていましたが、
この日はGR Ⅲ。登山において荷物の重量はとても重要な要素のひとつ。
GR Ⅲにすることでマイナス1,000gほどの軽量化になります。
登山では思い出の景色を綺麗に残したいという想いから、ミラーレスカメラを持っていっていましたが、GR Ⅲも十分に満足のいく描写でした。
個人的な結論としては、やっぱりミラーレスカメラは今後も持っていきます。
ですが、GR Ⅲをポケットに入れて「何気ない写真はGR Ⅲ、じっくり撮りたい場面ではミラーレスカメラ」といった運用方法になっていきそうです。
GR Ⅲで夜景撮影。東京の橋はライトアップされている橋が多いので素敵な写真を撮ることができます。
夜景の撮影もこなしてしまうGR Ⅲ。楽しくなって数か所周ってみました。
雨が降ってきました。霧雨がミストフィルターのような効果を演出してくれ叙情的な東京の夜景を撮ることができました。
雨上がりにリフレクション的な写真を撮ってみました。こういう写真を撮ることはあまりないのですが、これで合っているのでしょうか?
帰り道、乗り換えの東京駅での1枚。雨上がりの東京駅にはカメラを持った方がたくさんいました。
ライトアップされた東京駅は美しく綺麗な写真が撮れますよね。
GR Ⅲの繊細な描写によって、東京駅の造形美が際立つ一枚になりました。
埼玉県川口市にある隠れ家レストラン「食堂 Nurture(ナーチュア)」で会食。
イタリアンレストランで経験を積んだオーナーシェフが作るアマトリチャーナは絶品です。
カレイのカルパッチョ。酸味がちょうど良く爽やかな一皿。彩りも綺麗ですよね。
チョリソー。料理写真を撮っていて思ったのですが、GR Ⅲはスマホよりも目立たないような気がしました。
お店の雰囲気を損ねなることなく、さり気なく使えるカメラって良いですよね。
たっぷりのヨーグルトと自家製スパイスでマリネしたタンドリーチキン。エキゾチックな香りが食欲を誘いました。
お皿に向かってぼけていく描写がとても綺麗。料理写真を上手にこなしてくれるのも魅力です。
レストランでカメラを取り出すのは躊躇してしまうこともありますが、GR Ⅲならスマートに写真が撮れるのでありがたいです。
目の前にある物や人を自然体のまま写してくれるこのカメラは、まさに最強のスナップシューターですね。
GR Ⅲで東京をスナップ。
カメラに搭載されている全てのイメージコントロールを使って撮影しました。
以下、触発的に撮った写真達なので説明は省き並べていくのでご覧ください。
やっぱりGR Ⅲで撮るスナップは楽しいです。
GR Ⅲと言えばモノクロ。イメージコントロールには「モノトーン」「ソフトモノトーン」「ハードモノトーン」「ハイコントラスト白黒」の4種類の白黒表現が用意されています。
それぞれを使いながらスナップした写真になります。
いつ、どこにでもカメラを持ち歩けるのはユーザーにとって大きな利点。旅先で好きな景色を見つけたら、カメラをサッと取り出して、何も考えずにシャッターを押す。
これだけで満足できる写真になるのは、GR Ⅲだからこそ。
これからカメラを始めたいと考えている人は、ぜひGR Ⅲを手に取って撮影の楽しさを実感してもらいたいです。
また、すでにミラーレスカメラを持っている人にも2代目のサブ機として勧めたくなりました。
ミラーレスでじっくり撮影するのとはまた違った体験が楽しめますよ。
iphoneでも綺麗な写真が撮れる時代ですが、GR Ⅲの存在によってコンデジの魅力はこれからも広まっていくでしょう。
これからのスナップ撮影、iphoneの代わりにGR Ⅲにしてみませんか?
著者:玉薗周信
オールドレンズやフィルムカメラなどいろいろなカメラで遊んでいます。写真以外の趣味は登山、
サーフィンなどのアウトドア。株式会社三和オー・エフ・イー所属。