ロングセラーの「撒き餌レンズ」を徹底レビュー!プロが教える「CanonEF50mm F1.8 II」の楽しみ方
ロングセラーの「撒き餌レンズ」を徹底レビュー!プロが教える「CanonEF50mm F1.8 II」の楽しみ方
この記事をシェア

Canonの純正レンズは高い、そんなイメージを持っている方は多いでしょう。しかし、Canonにはとて
も優秀でありながらも破格の値段で買える、いわゆる「撒き餌レンズ」があります。
それが、1990年発売の「EF50mm F1.8 II」です。
今では1万円を切り、フルサイズ用単焦点レンズとしては破格の値段で手に入れられることもあって、ベテランからは「おもちゃ代わり」と舐められがちなこのレンズ。
しかし、プロとして撮影歴16年になる筆者は、APS-Cのエントリーモデルを使っていた時代から、いまだにこのレンズを「主力」として使い続けています。
非常に安い価格のレンズにも関わらず質が高く、魅力もたくさんあるのです。
今回は、カメラマン歴16年の筆者が、今も愛用する「EF50mm F1.8 II」を徹底レビュー。
ただ安いだけじゃない「撒き餌レンズ」の特徴や魅力を、作例写真とともに解説します。
「純正レンズなのに価格が安すぎる」と不安に思っている方は、ぜひ参考にしてください。

「EF50mm F1.8 II」の特徴   

EF50mm F1.8 IIは、1990年12月発売と非常に古いレンズです。
それにもかかわらず、25年間、四半世紀にわたりモデルチェンジなしでずっと売られ続ける超ロングセラーとなっていました。
実際、いまだに使っている人も多いのではないでしょうか。
筆者もその1人です。ただ安いだけのレンズなら、ここまで長くロングセラーにはならなかったでしょう。
ここでは、「EF50mm F1.8 II」の特徴を改めて見ていきます。

フルサイズ対応ながら非常にコンパクトな単焦点レンズ

EF24-105mmと比較しても半分以下の大きさだ

大きな特徴をまず挙げるとするなら「とにかくコンパクトで軽い」の一言に尽きるのではないでしょう
か。
本体は手のひらサイズに収まるくらい小さい上、重量はわずか130g。操作系もAF/MFの切り替えスイッチのみで非常にシンプルです。

また、フルサイズ換算では焦点距離は一般的な標準域となっており、非常に扱いやすいレンズとなっ
ています。
APS-Cのカメラでは写像がクロップされて中望遠になってしまいますが、それはそれでポートレートに最適なレンズです。

特殊ガラスを使用せずに高画質化を目指したコスパの高い設計

現在の新しいレンズは、「非球面レンズ」や「特殊低分散ガラス」などで各種収差を徹底的に補正しようというのがトレンドになっています。こうした特殊素材は技術の発展やメーカーの弛まぬ努力による光学性能向上につながっているのも確かです。しかしながら、このレンズは(古いレンズなので当然ですが)最先端のトレンドとは逆に、今でも「特殊ガラスを使用しない」古風でシンプルな設計となっています。
EF50mm F1.8 IIのレンズ構成は「5群6枚のガウス型構成」となっており、特殊ガラスの代わりに「低屈折率ガラス」を採用しています。
あまり詳しく説明すると難しくなるので簡単に説明すると、低屈折率ガラスは特殊ガラスに比べて製造コストや品質管理コストが低く、その代わりに本来なら収差が増大してしまうものです。
しかしこのレンズは、「低屈折率ガラス」でもレンズの配置や構成を工夫することで収差を適切に補正でき、低コストでありながらも高画質を実現しているという、非常にコスパの高い設計になっています。
現在では2015年に発売された後継モデル「EF50mm F1.8 STM」に立場を譲っていますが、後継モデルも光学周りは変わらず受け継がれています。それだけ、このレンズの性能が信頼に値するということでしょう。

1万円前半という破格の「撒き餌レンズ」

本レンズは「EFレンズ」であり、Canonのフルサイズ一眼レフに対応している、いわゆる「赤マル」の純正レンズです。
それでいて価格は非常に安いことから、「撒き餌レンズ」という呼び名がついています。
撒き餌レンズとは、ユーザーにレンズの魅力に気づいてもらうために非常に安い価格で販売されるレンズのこと。
それにしても、実売1万円を切る価格は正直安すぎます。しかし本レンズは、前述したように低コストで優れた設計を行なっているため、ただ安いだけのレンズではありませんし、「安かろう悪かろう」なレンズでもありません。
無駄なコストを省いた純正レンズといったところでしょう。

「EF50mm F1.8 II」の魅力     

ここからは、「EF50mm F1.8 II」を実際に長年使っている筆者が感じる本レンズの魅力を紹介しま
す。

豊かなボケ味とシャープな描写のギャップ

50mmの単焦点で、F1.8という明るさを持つ本レンズの一番の魅力は、絞り開放時に発生する豊か
なボケ味でしょう。
絞り開放で目の前にある被写体にピントを合わせると、被写界深度の浅さによって背景にふわりとしたボケが出ます。
しかしながら、合焦部(ピントが合っている部分)は結構シャープに描写してくれるのです。
こうしたボケ味とシャープさのしっかりとしたギャップを、1万円前半の低価格で味わえるのは、
他にはない本レンズのメリットといえます。
まさに「撒き餌」の名の通り、ユーザーをレンズ沼へと誘う魅力的な「餌」といえるほどのクオリティは、低価格であっても十分に備えているわけです。

各種収差によって「味が出る」

一方で、低価格なレンズならではの魅力も兼ね備えています。
先述した通り、このレンズは今トレンドとなっている「非球面ガラス」や「特殊低分散ガラス」を使用していません。
そのため、最新のレンズのように各種収差を良好に補正してはくれません。その代わりにレンズ間の空白の調整やレンズ配置を工夫して、一定のクオリティを維持していますが、特に開放値に近いくらい絞りを開けていると、色にじみや周辺減光、収差による歪みなどが生じます。
しかし、これが逆に「味」となって、最新のレンズでは撮れない絵が撮れるのです。

逆光で撮った時の鮮やかなフレア

最新のレンズでは、上述の特殊ガラスを使用していたり、コーティング技術の向上により、逆光時のフレアやゴーストが出にくくなっています。しかし、1990年発売の本レンズでは、こうしたフレアやゴーストの補正能力が今のレンズほど優秀ではないため、逆光で撮影するとフレアが鮮やかに出ることがあります。しかし、こうしたフレアやゴーストも、逆に最新レンズではなかなか出ない本レンズの「味」として、写真に生かすことが可能です。

「EF50mm F1.8 II」の楽しみ方と作例    

以上のように、本レンズは考えようによっては「欠点」とも言えるような「味」もあり、それが「個性」となっています。筆者は、こうした本レンズにしかない魅力が好きです。
ここからは、そうした「味」や本レンズならではの特性を生かして、本レンズをの楽しみ方を、作例写真とともに紹介していきましょう。

絞りを開放まで開けてボケ味を楽しもう

絞りを開放まで開けると、全体的にふんわりとした写真になります。最短撮影距離は45cmと意外と寄れないレンズなので、絞り開放で被写体に寄りすぎると逆にピントが安定しないことがありますが、
それもまたこのレンズの「味」。
以下の作例のように、桜の木を背景に桜の花びらを撮ったときの桜と人工光のボケ味や、開放で桜越しに青空を撮ると周辺減光の効果によって青空がよりはっきりとした青色に写るなど、収差があるからこそ生まれる非現実感、幻想的な雰囲気を存分に楽しみましょう。

時には絞ってシャープな写真を

50mm単焦点は存分にボケ味を楽しむレンズというイメージですが、絞りを絞っていくと、思った以上にくっきりとシャープな描写を行なってくれます。ボケ味が魅力的なレンズではありますが、かといって「ボケ味でしか楽しめないレンズ」というわけではありません。
さすが「撒き餌」の「純正レンズ」というだけあって、その光学性能はお墨付き。ボケ味の大きい柔らかい写真を撮りたいわけではなくとも、軽々と持ち運べるこのレンズを、普通のレンズ代わりに使うのもいいでしょう。

逆光写真のフレアにこだわろう

筆者がこのレンズを使っていて最も好きなのが、逆光撮影。逆光で撮影するときの画面全体が白くふんわりとする感じや、虹色の盛大なフレアが現れる感じなど、このレンズを通してフレアやゴーストをわざと入れて撮影するのが好きだったりします。ポートレートに活かせるのはもちろん、スナップ・風景・ライブ撮影などいろいろなシチュエーションでフレアを入れてみることで、見栄えのいい写真に仕上がるでしょう。

 コスパが高く楽しみ方沢山の「EF50mm F1.8 II」を使ってみよう 

以上、1990年から続くロングセラー「EF50mm F1.8 II」の特徴や魅力、楽しみ方などを、作例写真も
交えて徹底レビューしました。
本レンズは、「撒き餌」だからと馬鹿にはできない、色々な楽しみ方があります。
現在では2015年に発売された後継モデル「EF50mm F1.8 STM」に席を譲っていますが、記事でも解説したように、「撒き餌レンズ」として長年親しまれた本レンズとこの後継モデルは光学周りは変わっていません。
光学周りは変わらないものの、型落ちしたこともあって、本レンズの方がお得に入手できます。
1万円前半の低価格ながらも一定のクオリティが保証されているコスパの高い本レンズを、是非とも
使ってみてください。

この記事をシェア

Topicsトッピックス タグ一覧