アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。
アールイーカメラの使用カメラ
アールイーカメラの使用レンズ
今回紹介するのは、富士フイルムXマウント用の単焦点マクロレンズ「XF60mm F2.4 R Macro」です。
2012年1月、「X-Pro1」の登場と同時に発表された初期レンズ3本のうちの1本で、他の2本は「XF18mm F2 R」と「XF35mm F1.4 R」。その中で最も望遠寄りの画角を持つのが、この「XF60mm F2.4 R Macro」です。
焦点距離は60mm。APS-Cセンサー搭載のXシリーズでは1.5倍換算となるため、35mm判換算で約90mm(公式では91mm)相当の中望遠域をカバーします。ポートレートやテーブルフォト、ちょっとした望遠スナップまで対応できる万能な焦点距離です。
開放F値は少し珍しいF2.4。一般的なマクロレンズのF2.8より約1/2段明るく、ボケ量やシャッタースピード確保の面で有利です。
名称の「R」はAperture Ring(絞りリング)を備えていることを示し、レンズ側で直感的に絞り操作が可能です。
「Macro」の名が付く通り、被写体に寄って大きく写すことができます。本レンズは等倍(1:1)ではなくハーフマクロ(0.5倍)仕様ですが、そのぶん焦点距離や明るさとのバランスに優れ、日常使いでは十分な接写能力を発揮します。等倍マクロほど極端に寄る必要がないため、被写体との距離感を保ちながら自然な描写が得られるのも魅力です。
初めて手にすると、小型軽量さに驚かされます。マクロレンズと聞くと大きく重い印象を持つ人も多いかもしれませんが、当時の富士フイルムは「小型軽量・高画質」のコンセプトを重視しており、その思想が反映された設計となっています。
レンズ全長は63.6mm、最大径は64.1mmと長さと幅がほぼ同じサイズ感。
付属の金属製レンズフードを装着すると全長は伸びますが、逆さ付けもできるため携行性は良好です。重量はわずか215g(フード除く)で、スマートフォン1台ほど。軽量ながら鏡筒は金属製で剛性感があり、所有欲を満たす質感です。
操作系はシンプルそのもの。レンズ先端には太めのフォーカスリングがあり、近接撮影時の微調整もしやすい設計です。根本側には絞りリングを配置し、F2.4から始まりF2.8、その後は1/3段刻みでF22まで調整可能。F22の隣には「A」(絞りオート)ポジションがあり、素早く絞りオートへ切り替えられます。
一方で、他社マクロレンズでよく見られるフォーカスレンジリミッターやAF/MF切り替えスイッチは非搭載。
撮影距離を限定してAF速度を上げることができず、ワンタッチでマニュアルに切り替えるといった操はカメラ側で行う必要があります。この点はマクロ撮影を多用するユーザーにとってやや不便に感じられるかもしれません。
XF60mm F2.4はインナーフォーカス方式ではなく、ピント合わせ時にレンズ前玉が前方へ繰り出す構造です。特に最短撮影距離(約26.7cm)付近では繰り出し量が大きく、筐体の印象が変わるほど。
そのため、被写体に近づきすぎると前玉が影を落としたり、昆虫など動く被写体を驚かせたりす
る可能性があります。接触防止や見た目の保護のためには、レンズフード装着が有効です。
繰り出し型は光学的な自由度が高く、小型化にも寄与しますが、その反面、AF速度は現代のインナーフォーカス型マクロに比べるとゆったりしています。迷いを減らすためには、マニュアルフォーカスやフォーカスピーキングの活用が効果的です。また、カメラ側の性能でもレンズのAF性能は変わるので、最新のカメラで使用するとより早いAFで撮影が可能です。
今回、X-T30IIで撮影を行いましたが、AFは爆速ではないものの日常使いでは不便ないくらいの速度でした。
マクロレンズと聞くと、テーブルフォトなどの近接の撮影が得意で、風景などの遠景の撮影は苦手である。というようなイメージを持ちますが決してそんなことはありません。
まずは遠景の写真から見てみましょう。
鴨川にかかる四条の橋からの1枚。
ピントも迷うことはなく、他のレンズと同じ感覚で使うことができます。35mm換算で90mmなので少し離れたところからの撮影もいつもと違う雰囲気を出せ、F5.6まで絞っているため細かいところまで描写できています。
空を見上げて撮った1枚
色や影の差が少ない空や雲はどうしてもピントを合わせづらいものです。このときは何度かピント合わせを行いました。
富士フイルムの色の表現も相まって、素晴らしく夏を感じさせる1枚になりました。
次は地下を走る電車を1枚。
金属の質感がとてもよく出てるように感じました。
電車のホームは薄暗いですが、ピントは迷いません。
いくつも重なった葉っぱを見上げてみました。
遠い葉っぱも、近くにある葉っぱも縁のところが紫色になるパープルフリンジが出ていました。
Xシリーズも初期のレンズなのでこのあたりの収差は補正しきれていないのかもしれません。
もみじの葉っぱでタマボケを狙ってみました。
このレンズは望遠でありながら近くに寄っていけるため、背景を大きくぼかすことが得意です。
そのため、背景に点光源、木漏れ日などの光があれば玉ボケを作りやすいです。
90mmなので圧縮効果を少し感じることができます。
この日は祭りで屋台が並んでいたのですが、行き交う人々がより密集している様に見えます。
マクロレンズなので最大まで寄った写真を撮りました。
まずはかき氷です。かき氷とスプーンを持ってもらって撮ったのでかなりピント位置、手ブレはシビアでした。
マクロレンズは寄れる反面、手ブレや被写体ブレが大きく見え、被写界深度も浅くなるため撮影が難しくなります。
一方で2枚目は室内でお酒の瓶のラベルを撮影しました。
近接撮影では物を固定しゆっくり撮影できる環境を作ることがうまく撮るコツです。
近づくとピントを合わせる時に迷ったり時間がかかったりするためMFでのピント合わせもおすすめです。
この写真は最短撮影距離でどのくらい大きく写るかを確認したかったため、MFでピントを1番手前に移動させた後、カメラを前後に移動させてピントが合ったところでシャッターを切りました。
マクロレンズでしか撮影できないダイナミックな写真が撮れました。
XF60mm F2.4 R Macroは、富士フイルムXシリーズの歴史を語る上で外せない1本です。
2012年のXマウント誕生時からラインナップされていることからもわかる通り、「Xシリーズの思想を体現したレンズ」と言えるでしょう。小型軽量ながら金属外装で質感も高く、APS-C専用設計ならではの無理のない光学設計は、いま使っても十分な解像感を発揮してくれます。
一方で、発売から10年以上が経過したこともあり、現代の基準から見るとやや古さを感じる部分も存在します。インナーフォーカスではないためAF駆動はゆったりしており、被写体によってはピントが迷うこともあります。また、フォーカスレンジリミッターやAF/MF切り替えスイッチが省略されている点は、他社のマクロレンズに慣れている人には物足りなく感じられるかもしれません。
しかし、それらの弱点を補って余りある魅力があります。
まず、柔らかなボケと、マクロレンズらしい高い解像性能のバランス。さらに90mm相当という中望遠域は、テーブルフォトからポートレート、風景の切り取りにまで幅広く対応できます。マクロ専用ではなく「日常に溶け込む中望遠レンズ」として活躍できる点こそ、本レンズ最大の持ち味でしょう。
作例で確認した通り、近接から遠景まで幅広いシーンをカバーし、背景を大きくぼかすことで立体感のある写真を描き出します。もちろん、最新世代のマクロレンズと比較すれば収差やAF速度で劣る部分はありますが、それも「クラシックXFレンズ」としての個性と捉えることができます。
総じて、XF60mm F2.4 R Macroは「マクロ撮影もできる万能中望遠レンズ」として、初心者からベテランまで幅広い層におすすめできます。最新の高速AFや等倍マクロ性能は備えていませんが、その分コンパクトで軽量、取り回しのよさがあり、写真を撮る楽しさを改めて感じさせてくれる一本です。
Xマウントを始めたばかりの方におすすめできる富士フイルムらしい描写の世界に触れられるレンズではないでしょうか。
アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。
アールイーカメラの使用カメラ
アールイーカメラの使用レンズ