朝香凪咲
旅行ガイドを中心に執筆。趣味は植物や動物のスナップ撮影で、気軽に持ち歩けるコンパクトな カメラとレンズを好む。株式会社三和オー・エフ・イー所属。
朝香凪咲の使用カメラ
朝香凪咲の使用レンズ
高いコストパフォーマンスを誇るSIGMAのレンズシリーズ。SIGMA独自の光学設計による高い描
写性能に、多くのカメラマンが注目しています。これまでに登場したラインナップは数多く、
SIGMAはカメラレンズを語るうえで欠かせない存在です。
今回は超広角レンズである「SIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DN」をレビュー。スペックや作例を
見ながら、SIGMAレンズの実力を確かめていきます!
SIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNは、ミラーレスカメラに最適化した大口径超広角ズームレン
ズとして2019年に登場しました。SIGMAの高いコストパフォーマンスにより、価格を大幅に抑えな
がら、優れた描写力と解像度を実現。発売から5年以上たった今でも、完成度の高さを実感する
レンズです。
■SIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNのスペック
焦点距離:14-24mm
絞り(F値):2.8~22
レンズマウント:Lマウント、 ソニーEマウント
レンズ構成:13群18枚
絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
最短撮影距離:0.28m
最大撮影倍率:1:7.3
最大径×長さ:Lマウント 最大径85mm×全長131.0mm/ソニーEマウント 最大径85.0mm×全長 133.0mm
質量:795g
※SIGMA公式HP参照
(https://www.sigma-global.com/jp/lenses/a019_14_24_28/)
超広角域の14-24mmをカバー、F2.8通しという特徴を持つ本レンズは、星景撮影に最適なレンズとして展開しています。一眼レフ用の「14-24mm F2.8 DG HSM」と比較すると、レンズ径は約1cm小さく、質量はおよそ3分の2。広角レンズの中では非常にコンパクトなボディで、ソニーのミラーレスカメラとの組み合わせに最適です。
レンズ名称の「DG」は、フルサイズセンサー(35mm判)対応、「DN」はショートフランジバック採用のミラーレス専用の設計であることを示します。ミラーレス設計でフランジバックが短くなり、広角レンズを高い光学性能で設計できるようになりました。レンズにはシグマ独自のナノポーラスコーティング技術が施され、逆光などの強い光によるフレアやゴーストが大幅に低減されています。
SIGMAレンズは「Art」、「Contemporary」、「Sports」の3つのプロダクトラインがあります。
Artラインは描写力と表現力に特化したシリーズで、カメラマンが求めるニーズに応える性能のレンズを取り揃えています。
Artラインは機能性より描写性能を優先して設計しているため、中には非常に大きく、重いレンズがあります。SIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNは、Artラインでありながら非常にコンパクトにまとまったデザインで、Artラインのデメリットをまったく感じさせません。高い描写性能のレンズを気軽に持ち運べるのは、カメラマンにとって何より大きなメリットです。
〇SIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNの特徴をまとめると
・14-24mm超広角ズームレンズ、F2.8通し
・ミラーレス専用設計で軽量化と機能性を実現
・開放側でも収差をしっかり抑え、周辺まで緻密に描写
レンズはコンパクトで高級感ある見た目が好印象。SIGMA Artラインらしい外観が魅力的ですね。
鏡筒はレンズ前面に向けて広がっていく形状です。マウント部分は細くびれていて、右手でグリップをつかんだときの窮屈さはありません。
凹凸のあるフォーカスリングとズームリングは、ズームリングの方が凹凸が大きくなっています。
どちらも指に引っかかりやすく、ミリ単位の細かい画角調整とピント調整が狙いやすいです。
レンズ側面にはオートフォーカスとマニュアルフォーカスを切り替えるスライド式のスイッチとAFLボタンがあり、左手の親指で簡単に操作が可能。AFLボタンはカメラの設定から好きな機能を割り当てられます。
前玉は丸い出目金レンズで、筒の先端にはフードが固定されています。レンズキャップは上からかぶせる形で、簡単に取り外しできます。
マウント部にはリアフィルターが装着できるレバーがついています。
リアフィルターはレンズのリア部分(レンズ後面、マウント側)に装着するフィルターのこと。
本レンズは出目金レンズでフィルターを装着できないため、代わりにリアフィルターを使用します。
ここからはSIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNの作例とともに、レンズの性能をより詳しく掘り下げていきます。カメラボディはSONY α7R IVとSONY α7CⅡの2台を使用しました。
あいにく星空を撮影する機会を設けることができず、今回は都内で風景・スナップを撮影してきました。
星景用レンズですが、星景以外でもその性能を実感できたのでぜひご覧ください。
14mmという超広角域では、わずかな歪みによって写真の印象が左右されます。駅に続く連絡階段を正面から捉えたこの作例は、階段や手すり、柱、天井の直線が、歪みなくまっすぐに描写されました。
ほぼ歪みが出ないSIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNは、建造物の美しさをより一層際立たせるレンズ。
レンズを通せばいつもの風景が一段とスタイリッシュに写ります。
高層ビルを背景に、都会で大きく育つ樹木を撮影しました。14mmのパースペクティブを活かせば、
植物たちが生き生きと伸びている様子をダイナミックに演出できます。
超広角レンズを使っていると、自然と被写体を見上げる構図になりがち。空を入れると被写体とのコントラストが強くなり、階調表現や色収差などの問題が懸念されますが、本レンズではそれらの問題を気にすることなく撮影できます。
F2.8で近接撮影をすると、被写界深度が非常に浅くなります。前ボケと後ボケを検証したこの作例では、中央に咲くアンゲロニアのピントが外れてしまいました。
本レンズに限った話ではありませんが、被写体との距離が近い場合、わずかなズレでピントが外れてしまう点には気を付けたいところ。
焦点距離24mm以下の超広角域では余分なものまで写りすぎてしまい、被写体が目立たなくなってしまうことがありますが、背景を大きくぼかすことで小さな被写体を強調できます。
ピント面の解像度と背景のボケ感のメリハリで、インパクトのある画を狙うことができますよ。
歩道橋の上から道路を見下ろしたカット。直線や曲線の建造物が入り混じる、都会ならではの風景です。
パンフォーカスで建造物の高さや空間の奥行きを明確に写すことができました。
最小絞りF22まで絞ることで、画面の隅々までしっかりと解像し、歪みを抑えられます。
撮影日はどんよりとした曇りでしたが、コントラストは良好で色の濁りも感じません。
輪郭線の細かい被写体は崩れることなく、全体がシャープに描写されています。
夜の工場地帯は、ライトアップによって幻想的な雰囲気に変化します。キラキラと輝く工場夜景に目を奪われ、水面のリフレクションとともに撮影。まっすぐと伸びる水平線を境に、地上と水面の対照的な姿が印象に残る一枚になりました。
本レンズは絞り枚数11枚の円形絞り。作例では小さくわかりにくいですが、絞り側で撮影すると美しい光条が見られます。明るい夜景スポットでは絞り値を上げ、光条を主役にした表現もできそうですね。
超広角ズームレンズは、身動きが取りにくい室内でも重宝します。ズームリングを回しながら、焦点距離20mmでテーブルフォトを撮影しました。F2.8通しなのでボケ感を演出できるのもSIGMAArt 14-24mm F2.8 DG DNの魅力。メインと脇役を明確にしたり、料理の奥行きや立体感が表現できます。
構図を変えて撮影するなかで、AFが良好で素早くピントを切り替えられました。駆動音は静かで、周囲の目が気になる場所でも扱いやすいのが嬉しいポイントです。
焦点距離20mmでスナップ撮影。ズームリングを回していて、20mm以降はパースペクティブが目立たなくなったように感じました。20mmからの画角はパースを抑えつつ広く写したいときに便利で、思っていたより多く出番がありそうです。
風景撮影では14mmから20mmの超広角、スナップやポートレート撮影では24mm、というように、撮影シーンによって焦点距離を変えられるのがズームレンズの利点。
星景用レンズと謳われていますが、多彩なシーンで活躍し、撮影の幅を広げてくれると感じました。
八月某日、花火大会での一枚です。複数の花火が打ちあがるスターマインを撮影しました。
被写体をシャープに美しく描写できるSIGMAレンズは、花火の撮影でも本領を発揮してくれました。夜空に輝く花火は緻密に描写され、線が重なっている部分は驚くほどクリア。鮮やかな色もしっかりと表現されています。
焦点距離14mmは、花火を見上げている人々まで画角に収めることができます。人々が花火を引き立てる脇役になり、臨場感やその場の空気感を伝えることができます。まさに超広角域だからこそできる演出なのではないでしょうか。
圧倒的な描写力を持つSIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNは、超広角域の中で幅広い写真表現を可能にします。収差の問題に左右されずに完成度の高い写真を撮ることができるため、超広角域の入門としておすすめしたいレンズです。
本レンズは星景用レンズとして位置づけられていますが、スナップ撮影でも十分に活躍できると感じました。普段のレンズにプラスして、広角側をカバーするために本レンズを持ち歩くのもよいですね。
14mmから24mmというわずか10mmの幅で、どのように切り取って撮影するかは、カメラマンのアイデアやセンスにゆだねられます。SIGMA Art 14-24mm F2.8 DG DNで、超広角撮影の新たな可能性を見つけてみませんか?
プロフィール
朝香凪咲
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