
遠くのものを大きく写せる望遠レンズは、近づきにくい被写体の表情にグッと迫ったり、肉眼では
見られないワンシーンを切り取れるのが魅力です。
今回は、望遠レンズ初心者の方に向けて、レンズの特徴やポイントを解説します。
作例では、遠景・スポーツ・動物などさまざまなシーンでの撮影テクニックをご紹介。
撮りたい被写体に合わせて、ぜひ参考にしてみてください。

レンズには「焦点距離」というスペックがあり、焦点距離が長いほど遠くにあるものを大きく写せるようになります。
一般的に、焦点距離35mm以下を広角レンズ、50mm前後を標準レンズ、70以上を望遠レンズといいます。
望遠レンズはさらに「中望遠・望遠・超望遠」の3つに分類されます。
ここからは、それぞれの特徴と、おすすめのシーン・被写体について見ていきましょう。

自然な遠近感で写せる中望遠レンズは、被写体との距離をある程度保てるため、ポートレートや
スナップ撮影といった日常シーンに向いています。
望遠レンズの中でも扱いやすいレンズなので、望遠レンズを初めて使う場合は、
まず中望遠レンズで操作に慣れてみるとよいでしょう。
【おすすめシーン・被写体】
・大人のポートレート
・街中でのスナップ
・身近な植物、昆虫

焦点距離135〜300mm程度の望遠レンズは、山や海、建物などの遠景や、人に慣れた動物など、やや近づきにくい被写体の撮影に適しています。
ポートレートでは、小さい子供の自然な表情を遠くから写したいときに最適です。
【おすすめシーン・被写体】
・山や海、建物などの遠景
・人に慣れた動物
・子供のポートレート
・近づきにくい植物

焦点距離が300mm以上の超望遠レンズは、近づきにくい被写体の姿や表情にグッと迫ることができます。
主に野鳥や広い競技場でのスポーツ、天体などに適しているため、使用シーンはやや専門的です。
【おすすめシーン・被写体】
・野鳥、野生動物
・スポーツ
・天体
・山並みやビル群などの遠景

ここでは、望遠レンズの特徴を活かした撮影方法を解説します。
基本的な3つのポイントを抑えて、望遠レンズを使いこなしましょう。

ピントが合う範囲の深さを「被写界深度」といいます。
望遠レンズは被写界深度が浅いため、広角や標準レンズよりも背景を大きくボカしやすく、
主役となる被写体を際立たせることができます。
この特徴を活かし、大きなボケが印象的な写真に仕上げてみましょう。特にポートレートや植物の撮影などで効果的です。

遠くにあるものがぎゅっと圧縮され、近くにあるように見える「圧縮効果」を使えば、写真の構図に
迫力を持たせることができます。
例えば、手前の街並みや木々と、遠くのランドマークが隣り合っているように見せることが可能です。
風景写真をより印象的に見せたいときは、望遠レンズらしい圧縮効果を取り入れた構図を試してみてください。

望遠レンズは少しの手ブレでも写真がブレやすくなります。特に動物やスポーツなど動いている被写体は、手ブレと被写体ブレを抑えることが大切です。
ブレを抑えるためには、シャッタースピード(S)を速く設定することがポイント。手持ち撮影では、
「1 / 焦点距離」以上のシャッタースピードを目安に設定すると、ブレを防ぎやすくなります。
動いているものであれば、最低でも1/300秒以上に設定しましょう。
ここからは、望遠レンズと超望遠レンズを中心とした作例をご紹介します。
撮影や構図のコツなど、作例やシーンごとに意識したテクニックをまとめました。
初心者の方はぜひ参考にしてみてください。

千葉県の大原駅~上総中野駅を結ぶローカル線・いすみ鉄道。桜並木の中を駆け抜ける黄色い車体は、写真映え抜群のワンシーンです。
鉄道撮影は望遠レンズの圧縮効果を活かすため、周囲の景色をぼかさずにしっかりと写すのがおすすめ。作例をみると、圧縮効果によって桜並木と列車、草地が重なり合い、コントラストの美しい一枚に仕上がっています。

近距離から撮影できない飛行機もまた、望遠レンズの被写体にぴったりです。周囲の山並みを
画面に入れることで圧縮効果が出て、雄大な自然とシャープな機体のコントラストがより際立ちま
す。
作例は、飛行機が着陸する瞬間を捉えたもの。焦点距離200mmにしたことで、主役の機体を大
きく写しつつ、背景となる夕景のグラデーションをバランスよく取り入れました。

スポーツ撮影の中でも定番のボートレース。
ボートや選手がしっかりと止まった写真は、スピード感あふれるレースの緊張感や一瞬のカッコよさを鮮明に切り取ります。
ボートレースの写真をダイナミックに見せるコツは、シャッタースピードを上げすぎないようにすること。
作例では1/320秒に設定し、水しぶきをあえてブレさせることで、スピード感を演出してみました。
※ボートレースの撮影は、原則として事前に許可や申請が必要です。必ずレース会場の情報を確認してください。

自由気ままに遊ぶ子どもを撮影。人物を自然体で切り取れるのは、被写体と距離を取れる望遠レンズならではの強みです。
特に小さな子どもの場合、焦点距離100mm以上のレンズにすることで、ありのままの姿を引き出しやすくなります。
作例では、数十メートル離れた位置からカメラを構えたことで、背景に自然なボケ感を演出できました。周囲の環境もさりげなく入れることで、ストーリー性のある一枚になります。

祭りや子供の運動会など、周りに人が多いシーンでは、主役となる人物がはっきりと分かる構図や設定を意識しましょう。画面の中心に被写体を配置し、F値の低いレンズで背景をぼかすことで、主役がしっかりと際立ちます。
神輿の担ぎ手を撮影したこの作例では、主役である人物以外の映り込みを最小限に抑え、さらにF3.2で周囲を自然にぼかすことで、存在感を引き出しました。

超望遠ズームカメラ「COOLPIX P950」で三日月を写してみました。このカメラは焦点距離2000mm相当の超望遠ズームにより、野鳥や天体など遠くの被写体を大迫力で捉えることができます。
超望遠レンズは三脚と組み合わせて使うことで、手ブレを防ぐだけでなく、重いカメラやレンズでもストレスなく撮影できます。超望遠レンズでじっくりと撮影したいときは、三脚を活用しましょう。

生き物の撮影は、超望遠レンズで表情を大きく捉えるのがおすすめです。余分なものが写り込まず、
主役である生き物の魅力をより際立たせられます。目や顔全体にしっかりとピントを合わせることを意識しましょう。
作例は、フラミンゴが優雅に水を飲む一瞬を切り取った写真です。水の波紋や体のライン、
まんまるとした目が印象的で、曲線の美しさが際立つ一枚に。さりげないしぐさを見逃さないことがポイントです。

望遠レンズはただ遠くを切り取るだけでなく、被写体の魅力を引き出すことで、印象的な一枚に仕上げることができます。
ご紹介したテクニックを使い分けながら、望遠レンズならではの写真表現を楽しんでみてください。
朝香凪咲
旅行ガイドを中心に執筆。趣味は植物や動物のスナップ撮影で、気軽に持ち歩けるコンパクトな カメラとレンズを好む。株式会社三和オー・エフ・イー所属。