【ミラーレスカメラ×オールドレンズ】Leitz Summarit 50mm F1.5(ズマリット)レビュー!ソニーαシリーズに合わせる癖強オールドレンズの魅力
【ミラーレスカメラ×オールドレンズ】Leitz Summarit 50mm F1.5(ズマリット)レビュー!ソニーαシリーズに合わせる癖強オールドレンズの魅力
この記事をシェア

オールドレンズの世界は、その独特な描写と味わいで、現代のデジタル時代においても多くのファンを魅了し続けています。今回は、ライカのオールドレンズ「Leitz Summarit 50mm F1.5(ズマリット)」をソニーαシリーズのカメラで使用し、その特長と魅力をレビューします。

Summaritは、戦後復興期に生まれたレンズ。50年代の混沌とした時代背景の中で登場し、以後のライカレンズの設計思想に影響を与えた重要な一本です。

このレンズの持つ”癖”を楽しみながら、デジタルとアナログの融合を体感してみましょう。

Leitz Summarit 50mm F1.5の歴史

1900年代初頭、写真は大判カメラが主流で、機材もフィルムも大型で携帯性が低いものでした。そんな中、ライカの創業者オスカー・バルナック(Oskar Barnack)は「写真はもっと軽快であるべきだ」という考えのもと、小型の35mmフィルムカメラを開発。1925年に発売された「ライカI」は、写真業界を一変させ、瞬く間に世界中で愛される存在となりました。

第二次世界大戦後、ライカは戦火での打撃を受けながらも復興を果たし、写真文化の復興とともに再び注目を集めます。1950年代に入り、新しい光学技術と設計思想を取り入れたレンズが次々に登場。この中で、Summarit 50mm F1.5は、ライカ初期の高速レンズ「Summar」の後継として開発されました。

Summaritの名前は、ラテン語の「太陽(Summus)」に由来。「明るい光を捉えるレンズ」という意味が込められています。

開放F1.5という明るいスペックが特徴です。当時の基準では非常に高速なレンズであり、暗所や室内での撮影に適したプロ仕様として登場しました。

その一方で、柔らかな描写や独特なフレアなど、現代では「癖」として捉えられる特性を持ち、これがオールドレンズ愛好家たちを魅了しています。

Nr 1418276という番号は、レンズのシリアルナンバーです。この番号をもとに製造年を特定することができます。ライカのシリアルナンバーは製造年と結びついており、Nr 1418276の場合、これは1955年頃に製造されたレンズである可能性が高いです。

シリアルナンバーが付いていることで、歴史的な価値も感じられる一本ですね。

【スペック】
メーカー:Ernst Leitz
マウント:Mマウント
レンズ構成:5群7枚ダブルガウス型
絞り羽根枚数:15枚
実測値:319g

Leitz Summarit 50mm F1.5の魅力

Summarit 50mm F1.5の魅力はオールドレンズならではのやわらかなボケ感や、光を取り入れたフレア、低F値ならではのハイスピード、そして歴史を感じられるビジュアルと質感なのではないでしょうか。

レンズを手に持つと見た目のコンパクトさとは違い、ずっしりとした重みを感じます。

絞り羽(絞りリング)の美しさは、特に絞った時にその魅力が際立ちます。このレンズには、絞り羽が非常に精密に作られており、絞ることで絞りの形がきれいに整います。特に開放から絞り込んだ際、その構造がどんどん緻密になり、シャープで美しい形状に変化する点が特徴です。

魅力1:独特な「ぐるぐるボケ」

Summarit 50mm F1.5を語る上で欠かせない特徴の一つが、「ぐるぐるボケ」と呼ばれる独特なボケ味です。

この現象は、特に背景に点光源や細かいディテールが多いシーンで、背景が渦を巻くような描写になることから名付けられています。

ぐるぐるボケは、レンズ設計上の特性によって生じます。Summaritは、戦後間もない時期のレンズ設計であり、現代のレンズと比べて球面収差が強めに残されています。この球面収差の影響により、フレーム外縁部で光が偏り、渦を巻いたようなボケが発生します。

また、Summaritのようなクラシカルなレンズは絞り羽根の形状や光学系の構成が現在のレンズと異なるため、個性のあるボケ味が得られます。この「欠点」とも取られかねない特性が、現代ではむしろユニークな表現の一部として高く評価されています。

絞り開放で撮ると、やわらかな表現が魅力的なLeitz Summarit 50mm F1.5ですが、はっきりとしたカラーが美しい花畑のような場所でも、しっかりと色を表現してくれます。絵のような写りもまた魅力的です。

魅力2:「虹色」のハロが生み出す幻想的な描写

Summaritの描写特性の中でも、特に注目すべきなのが「虹色のハロ」です。この現象は、強い光源や逆光条件で撮影した際に発生しやすく、単層コーティングのレンズ特性に起因するもの。

多層コーティングが施された現代のレンズでは、フレアやゴーストが極力抑えられるよう設計されていますが、Summaritのようなクラシカルなレンズではこの「抑えきれない光」が逆に個性として活きています。

魅力3:当時を代表する「ハイスピードレンズ」

Summarit 50mm F1.5は、1950年代において「ハイスピードレンズ」と呼ばれるカテゴリに属していました。「ハイスピードレンズ」とは、F値が小さく(明るい)、光を多く取り込むことができるレンズを指します。この特性は、低照度環境や動きの速い被写体を撮影する際に非常に有用です。 当時、カメラのシャッタースピードやフィルム感度の制約から、十分な明るさを確保できるレンズの存在が不可欠でした。特に、報道写真や室内撮影、夜景撮影など、光量が限られる場面では、F1.5という開放値の明るさが大きなアドバンテージとなりました。

Summarit 50mm F1.5は、戦後の写真文化において明るいレンズがいかに重要であったかを物語る存在です。その特性は、最新のミラーレスカメラと組み合わせることで、新たな表現の可能性を広げています。

ハイスピードレンズとしてのSummaritの価値は、明るさだけでなく、その独特の描写美やクラシカルな雰囲気を楽しめる点にもあります。

明るいレンズがもたらす写真表現の自由を体感できます。

魅力4:所有する喜びを感じるビジュアルと質感

Summarit 50mm F1.5は、写真撮影のための道具としてだけでなく、持つことそのものが喜びとなる美しい造りをしています。
戦後の技術革新期にライカが手掛けたこのレンズは、その描写性能以上に、外観や質感が放つ独特の魅力があります。

Summaritは、高品質な金属素材で構成されたボディが特徴です。クロムメッキの光沢感は重厚でありながら繊細で、現代のプラスチック主体のレンズとは一線を画す存在感を放っています。

長い年月を経ることで金属特有の味わい深さが出ます。経年変化を楽しむことができるのも魅力の一つです。

さらに、焦点距離や絞り値が刻印された文字は手作業によるエングレービング(彫刻)が施され、実用性と装飾性が見事に両立しています。この細部へのこだわりは、当時のライカ製品全般に共通する美意識の表れです。

撮影そのものを楽しむと同時に、手に持ち、触れ、眺めることで得られる満足感。

このレンズは、写真表現を楽しみつつ、ライカの芸術的な精神を体感することができます。

※注意
Leitz Summarit 50mm F1.5のガラス面は非常に柔らかく、拭くだけでも傷がつきます。
特に、オールドレンズに使用されているコーティングは現代のものと比較しても耐久性が低いため、微細なホコリや砂粒が付着した状態で乾拭きをすると、それが原因で細かな傷ができることがあります。

前述の通り、レンズ表面を保護するためにUVフィルターや保護フィルターの装着を検討するのも良いでしょう。ただし、Summaritの繊細な描写特性を損なわないよう、質の高いフィルターを選ぶことが推奨されます。

ソニーαシリーズ(ミラーレスカメラ)との出会いが生む新たな魅力(作例)

Leitz Summarit 50mm F1.5が持つクラシカルな描写は、現代のデジタルカメラと組み合わせることで新しい可能性を引き出します。以下では、α7S III、α7R IV、α7C IIの各モデルとの相性について解説します。

特徴:高解像度撮影に特化したフルフレームカメラ

6100万画素の解像力を誇るα7R IVは、オールドレンズの描写特性を余すところなく記録することができます。Summaritの柔らかな開放描写や収差も、ディテールとしてしっかりと残ります。

特徴:高感度性能に優れた動画・低照度特化型カメラ

α7S IIIは、その優れた高感度性能で暗所撮影や動画撮影に強みを持っています。この特性とSummaritの明るいF1.5が組み合わさることで、極限まで光を活かした撮影が可能です。

特徴:コンパクトなフルフレームミラーレス

α7C IIは、小型軽量な設計のフルフレームミラーレスで日常使いにも適したカメラです。Summaritのクラシカルな外観とα7C IIのコンパクトさがマッチし、スナップ撮影にも最適です。

SONYαシリーズのミラーレスカメラにSummaritを装着するには、マウントアダプターが必要になります。レンズそのままではマウントが合わず装着できないので気を付けましょう。

まずはSummaritにマウントアダプターを装着します。

しっかり装着できたことを確認したら、カメラ本体に装着します。

マウントアダプターは使用するカメラによって異なるので、自分のカメラに合うものを使用してください。

絞り値(F値)による多彩な表現力

Summarit 50mm F1.5は、絞り値(F値)の調整によって、描写が劇的に変化することが特徴の一つです。この変化を理解し、撮影意図に合わせて活用することで、作品の幅を大きく広げることができます。

開放F1.5:幻想的でドラマチックな描写

開放F1.5では、極めて浅い被写界深度と、柔らかく溶けるようなボケが得られます。この状態では被写体の一部にのみピントが合い、背景が大きくぼけて非現実的な印象を生み出します。

F2.8~F4:繊細でバランスの取れた描写

F2.8~F4に絞ると、開放時の柔らかさが抑えられ、描写にシャープさが加わります。これにより、被写体のディテールが際立ち、背景のボケは柔らかさを保ちつつ整理された印象になります。

F5.6~F8:高い解像感と奥行き表現

F5.6~F8まで絞ると、Summaritの解像力が最大限に引き出されます。画面全体にわたってシャープな描写が得られ、クラシカルな描写特性がより現代的な表現に近づきます。この範囲では背景が完全にぼけ切らず、被写体と背景の奥行きを効果的に活用できます。

F11~F16:クラシカルな全体描写

F11以上では、Summaritのオールドレンズらしい描写がさらに顕著になります。周辺光量の低下やコントラストの変化が見られ、クラシカルな雰囲気を強調した表現が可能です。

Summaritは、絞り値を変えるだけで大きく描写が変化し、さまざまな表現が可能。現代のレンズでは味わえないオールドレンズ特有の描写変化を楽しむことで、写真の個性をより引き立てることができますよ。

街角スナップ

今回は特にテーマを設けず、「日曜日の東京」を気ままに撮影しました。

このレンズは、絞ることで現代のレンズにも匹敵するシャープな描写が可能ですが、今回は開放F1.5を中心に使用。

オールドレンズ特有の柔らかさと独特のボケ味を楽しみながら、街の風景や何気ない日常を切り取ってみました。

現代レンズのシャープな描写とは一線を画す雰囲気を醸し出してくれます。被写体を際立たせる柔らかさがLeitz Summarit 50mm F1.5の魅力。

日中の街並みを撮影すると、光と影の表現が豊かで、Summarit独特の淡い発色が映えます。

シンプルな構図ですが、柔らかいボケ味で独特の描写が楽しめる写真になりました。

日曜日のオフィス街で交差点を見下ろした瞬間、鮮やかな赤い車が通過。

開放F値で描かれる柔らかなボケが、背景を穏やかに溶かし、視線を自然と車へと導いてくれますね。

シャープなディテールと滑らかなボケ味が両立し、日差しがつくる陰影が都会の立体感を際立たせてくれました。

最短撮影距離が約1mと少し長いため、料理撮影には工夫が必要です。

この距離感がもどかしくもあり、逆に新鮮で楽しさを感じるひとときでした。

F1.5の開放値が生み出す柔らかいボケ味が背景をじわっと溶かし、ピザのこんがりと焼き上がった質感と温かみを引き立ててくれます。

信号待ちの車内からとっさに撮ったピントも構図も曖昧な一枚。それが印象に残る写真になりました。

逆光撮影ではフレアやゴーストが現れやすく、これがノスタルジックな雰囲気を作り出します。

ミラーレスカメラと組み合わせれば、RAW現像でコントロールしつつ、その魅力を活かすことが可能です。

東京の高架下に広がる見慣れた路地を、コンパクトボディのα7C IIでスナップ。
現代の風景でありながら、どこか数十年前の面影を残した雰囲気が印象的です。

Leitz Summarit 50mm F1.5で切り取った街角スナップは、どこか時間がゆっくりと流れるような雰囲気を纏っていました。
このレンズ特有のやわらかな描写と個性的なボケ味は、日常の風景に新たな表情を与え、被写体そのものの魅力を引き出してくれます。

特に絞り開放のF1.5では、被写体と背景の距離感がドラマチックに表現され、シーンに奥行きをもたらします。

何でもない一瞬一瞬が、Summaritの「クセ」とも言える描写力によってアートのように再構築される感覚がとても印象的でした。

ポートレート

オールドレンズの中でも特に癖玉と呼ばれるLeitz Summarit 50mm F1.5でポートレート撮影をしてみました。

ポートレートにおける一般的な焦点距離は85mmから135mmが多く使用されることが多いですが、50mmの焦点距離も選択肢の一つかと思います。比較的広い画角を持つため、被写体との距離感をコントロールしやすかったです。

このレンズ特有の柔らかな描写が、モデルの表情に穏やかな空気感をもたらしてくれました。

また、背景の植物が、Summarit独特の「ぐるぐるボケ」を作り出し、モデルを自然に際立たせています。

この渦巻くようなボケの表現は、Summaritならではの個性であり、現代のレンズでは再現しがたい独特の味わいがありますよね。

ソフトな雰囲気だけではなく少しシャープなイメージでも撮ってみました。
被写体の目元にピントを合わせ、シンプルな背景と柔らかな光の中で使用すると、オールドレンズの持つ豊かな表現力が分かります。

Summarit特有の柔らかい滲みや、少し夢のような雰囲気を感じさせるボケ味が、独特の奥行きと温かみになりました。

モノクロ仕上げで撮影したポートレートです。
開放F1.5での撮影により、被写体の存在感を際立たせながら、前後が柔らかく溶け込むように撮ってみました。

モノクロ仕上げとの相性が非常に良く、コントラストと柔らかいハイライトが織り成すヴィンテージライクな雰囲気を楽しむことができます。

被写体に優しい光が当たるとホワイトミストのような効果を表し、柔らかくエモーショナルな雰囲気を醸し出し、画面全体にふんわりとした温かみが広がります。 このレンズの特徴的なボケ味や、独特な光の捉え方が、被写体の魅力を引き立て、情緒的な写真になるのが印象的でした。

ナイトスナップ

Summaritを手に夜の街へ出かけると、このレンズの魅力が一層際立ちます。

絞り開放F1.5の明るさが、薄暗い環境でも手持ち撮影を可能にし、光と影のコントラストが印象的なシーンを捉えることができます。

街灯やネオンが描く独特の虹色のハロ、柔らかく溶けるボケ、そしてオールドレンズならではの暖かみある描写が、夜のスナップ撮影を楽しくさせてくれます。

街灯やネオンが柔らかく滲み、優しいイメージに。街灯を逆光にした夜景では、光がふんわりと広がり、映画のワンシーンのような雰囲気を演出してくれます。

ここからは作例としながらも、楽しく呑み歩いただけの記録。 開放で撮影した時の「ふんわり」とした描写が夜の街にバッチリはまります。

都電の車両が展示されているのかと思ったらBarでした。
行き交う人々のシルエットが良いアクセントに。現実ではギラギラしたネオンもこのレンズで撮ると光が柔らかくなります。

浅草の飲み屋街、提灯の明かりが彩る路地に笑い声が響いていました。

Summaritの柔らかな描写が、温かな光と活気ある雰囲気を引き立てます。路地の光源と開放ならではの浅い被写界深度が、写真にどこか非現実的な魅力を与えてくれました。

最後は赤羽。
温かいトーンの中に冷たい影が織り交ぜられ、飲み屋街の活気と同時に、そこに潜む孤独や思索を同時に感じるような写真が撮れました。
夜の街をLeitz Summarit 50mm F1.5で切り取る撮影は、まるで時間の流れを忘れてしまうような没入感を与えてくれました。街灯や看板の光源がふんわりと広がり、幻想的な雰囲気を演出してくれるのが面白かったです。

ライカ ズマリット 50mm F1.5を使ってみて

Leitz Summarit 50mm F1.5は、とても楽しい撮影体験ができるレンズでした。

現代レンズでは当たり前とも言えるフレアやゴーストを抑えるコーティング技術やシャープな描写技術。
その技術が飛躍的に発展してきたことをSummaritを使用して実感できました。

技術の進化は現代レンズとオールドレンズを比較した時に顕著に現れます。Summaritは現代レンズと比べそれらの技術が劣っています。

オールドレンズの劣っている部分を逆転の発想で「個性」と捉えると、ポジティブな面が浮き上がってきます。

個性豊かなオールドレンズ群の中でも、Summaritの「個性」は強く、飛びぬけていました。

また、この「個性」を存分に楽しめるのはミラーレスカメラとの組み合わせならでは。

ミラーレスカメラならフイルムカメラに比べ気軽に撮影ができます。モニターやRAW現像ソフトを活用することで、Leitz Summarit 50mm F1.5の個性的な描写をさらに引き立てることが可能です。

逆光や周辺減光の特徴を活かしながら、独自の表現を探求できます。
ぜひ、お手持ちのミラーレスカメラでこの個性的なレンズを活用し、その特性を楽しんでみてください!


モデル
内倉 可南子

著者プロフィール
山本 洵

埼玉県戸田市出身。
メインフィールドは旅行系メディアでの撮影・執筆。
株式会社三和オー・エフ・イー所属。

この記事をシェア

Topicsトッピックス タグ一覧