印象的なポートレートといってまずイメージするのが、被写体をくっきりと際立たせるために、背景を思い切りボカした写真ではないでしょうか。
もちろん背景をボカすテクニックは写真の基本でもあるため、ほとんどの人が一度は試したことがあるはずです。
しかしまずこの基本テクニックをしっかり身につけることが、印象的なポートレートを撮影するベースになりますから、ここで改めてボカす撮影テクニックについて確認しておきましょう。
背景ボカしをするためには、まず何より機材とカメラの設定が重要なポイントとなります。
では具体的に、どんな機材をどんな設定で使えば、より効果的に背景がボケたポートレート撮影が可能となるのでしょうか。
皆さんご存じのように背景をボカすためには、カメラのF値を低くして撮影します。
F値はレンズの性能によって異なってきますので、背景をボカせるかどうかはレンズの性能にかかってくると言っても良いでしょう。
一般的にポートレートで背景がボケる明るいレンズは、F値が1.8より小さいレンズとなります。
逆に1.8よりも数字が大きいF2.8以上のレンズの場合、思ったようにボケないこともあります。
可能であれば、F1.4、F1.2などのレンズを使うのが理想です。
さらにレンズは望遠になるほど、背景はボケやすくなります。
具体的には、50mm以上のレンズがオススメとなります。
これが28mmなどの広角寄りのレンズになると、なかなか背景がボケなくなります。
さらに背景ボケにこだわるなら、カメラの機種はフルサイズセンサーの機種がオススメです。 特にポートレートで、被写体の全身を写しながら背景をボカしたい場合は、フルサイズでないと思ったようにボケない場合もあります。
背景ボケに適したカメラとレンズが用意できたら、次はいよいよカメラの設定です。
理想としてはマニュアルモードで絞りとシャッタースピード、ISOを設定できるようになれればいいのですが、とりあえずはマニュアルでなく「絞り優先モード」を使っておけば、手軽に背景ボケのポートレートが撮影できます。
この際設定するのはF値だけですから、このF値を一番小さくしておけば、全解放で最も背景がボケる写真が撮れます。
例えばF1.8のレンズを使っていれば、絞り優先モードでF値を1.8に設定しておきましょう。
そうすれば、カメラがシャッタースピードを自動的に最適になるよう設定してくれます。
ISOも設定でAUTO(自動)にしておきましょう。 これだけで手持ちの機材で、ベストの背景ボケポートレートが撮れるようになるはずです。
まずは絞り優先モードで慣れたら、マニュアルで自分好みの設定ができるように練習する。
<F1.4 1/2000 ISO50 85mm>
さて、カメラの設定の次に気になるのが、レンズの話です。
レンズの性能なしで背景ボカしのポートレートを撮るのは困難と言え、レンズ選びも理想の一枚を撮るためには非常に重要なポイントとなるわけです。
レンズの種類として大まかに分類すると、ひとつは単焦点レンズ、もう一つはズームレンズとなります。
ではポートレートで背景ボカしをしたい場合、どちらのレンズを使うと良いのでしょうか。
これは背景ボカしという仕上げから考えると、間違いなく単焦点レンズとなります。
なぜなら背景ボカしがしやすいF値の小さな明るいレンズは、ズームレンズよりも単焦点レンズの方が多いからです。
先ほど説明したとおり、ポートレートで全身を撮影したい場合、背景を綺麗にボカすには最低でもF1.8より明るいレンズが必須とも言えます。
ポートレートでよく使われる50mm程度の場合、単焦点レンズならF1.2といった非常に明るいレンズがラインナップされていますが、ズームレンズの中で50㎜をカバーできるものとなると。F2.8以上が主流となるのです。
背景ボカしのためにはF2.8では明るさが不足するシチュエーションも多く、そうなるとやはりより明るい単焦点レンズをチョイスするのが正解と言えるわけです。
明るい単焦点レンズを使えば背景を綺麗にぼかすことができる
一般的にポートレートレンズと呼ばれているのは、85mmのレンズです。
85mmは「中望遠レンズ」と分類されているため、汎用性がそこまで広いわけではありませんが、ポートレートを撮影するのに、いくつかのメリットがあります。
まずはひずみの少なさです。
ポートレートの場合、被写体の顔やスタイルのバランスが重要となります。
広角気味のレンズを使って撮影した場合、収差と呼ばれるレンズによる変形、ひずみが発生しやすくなってしまいますので、被写体の顔の形が不自然になってしまったり、全身を撮った際に伸びたりひずんだりしてしまいます。
その点85mmを使えばそのような不自然な変形が起こりにくいため、ポートレートを自然な写りで仕上げられるのです。
ただし中望遠レンズですから全身を収めるためには、被写体からの距離をある程度取らなければなりません。
ですから若干慣れが必要になるレンズとも言えます。
その一方で背景ボカしたのにはレンズは寄り望遠寄りが良いため、中望遠となるこの85mmを使えば、よりきれいに背景ボケのポートレートが撮れるはずです。
85mmレンズの作例。上下に余裕を持ったアングルでも85mmならしっかり背景ボケの写真が撮れる。
<F1.4 1/2000 ISP125>
カメラをはじめて最初に入手するのは、おそらくこの50mmではないでしょうか。
先ほど説明したレンズのひずみも比較的少ないため、広角レンズと比較しても自然な形でポートレート撮影が可能です。
50mmのレンズはF1.8の比較的明るいレンズが、各メーカーとも入手しやすい価格帯で入手できますので最初に購入するポートレート用のレンズとしてオススメとなります。
中望遠となる85mmと比較して、50mmの場合は日常のスナップ的な撮影にも適していますので、より汎用性が高いレンズと言うこともできます。 室内などのスペースが限られている撮影の場合は、85mmだと被写体までの距離が足りないこともありますが、50mmならある程度狭い空間でも被写体を画角の中に収められるため、出番もたくさんあるはずです。
ポートレートの背景ボカしは機材や設定も重要ですが、撮影するロケーションも大きなポイントとなります。
背景をボカすためには被写体までできるだけ近づいて、背景をできるだけ遠ざけるのが基本となります。
しかしポートレートを単焦点で撮影する場合、被写体までの距離はあまり変えることができませんので、意識したいのが被写体から背景までの距離をどれだけ取れるかと言うことです。
被写体のすぐ後ろに背景になる建物や樹木があると、背景はボケにくくなります。
ですからより背景をボカしたいというのであれば、被写体から背景までの距離を寄り離して取れる場所で撮影するべきなのです。
景までの距離が遠くなれば、よりボケ具合が大きくなり、被写体が際立つ撮影ができる
背景ボケポートレートの代表的なシチュエーションとしては、夜間撮影で背景にイルミネーションなどの光が入る撮影ではないでしょうか。
人物の背景に綺麗な玉ボケの光が入る写真は、幻想的でモデルも映える作品になるはずです。
この場合の玉ボケもまた、通常の背景ボケと同じ原理でボカします。
ですから絞りをF1.8よりも明るく解放し、被写体からイルミネーションまでの距離をできるだけ離すことが綺麗な光の玉ボケを造るための条件となります。
もし全開放にもかかわらず背景の光がボケないときは、背景までの距離を調整してみましょう。
背景が被写体から近い位置にある場合、思ったようにボケないことがあります。
あるいは、もし絞りを全解放にしても光が足りない場合、ISOの設定をより上げて高感度で撮影してみてください。
今どきのカメラは少々ISOを上げても、案外ノイズは目立ちません。 万一ノイズが目立ってしまっても、Lightroomなどでノイズ除去の後処理が可能ですから、真っ暗で撮るよりは明るめに撮った方が、その場で写真の雰囲気をチェックできるため、結果的に綺麗な写真が仕上がるはずです。
イルミネーションのボケもポートレートに雰囲気を出すのに最適。F値は解放で背景をキレイに撮れるような設定が肝心
背景ボケはポートレート撮影とは切っても切れないものですが、単に絞りを開放しただけでは、思ったようにボケない場合もありますので、そんな時は機材を含めたトータルでの設定を今一度見直してみてください。
しかしその一方で何もかもを背景ボケで捕ってしまうのも、芸がないという考え方もあります。
背景が魅力的で画になるロケーションならば、全解放でなくあえて少し絞って撮影するべきかも知れません。 そんなポートレートの背景ボケを上手に自分でコントロールできるようになれば、きっとポートレートの撮影テクニックが一段アップしたことが実感できるはずです。
「光の基本講座」 写真は光で決まる──これはプロカメラマンが必ず口にする言葉です。カメラの操作方法を覚える前に…
印象的なポートレートといってまずイメージするのが、被写体をくっきりと際立たせるために、背景を思い切りボカした写…
朝の撮影では、普段はあまり見慣れない被写体があちこちにあったりします。早起きの習慣がない人にとって、それはとて…
毎年10月になると街は一気にハロウィンムードが高まってきます。 ハロウィン当日に街中のあちこちで仮装する人たち…
アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。
アールイーカメラの使用カメラ
アールイーカメラの使用レンズ