「100人の魅力を切り取る」─ポートレート100人斬り・Emikoさんインタビュー

「お客様の希望通りに撮る」のではなく、「私が感じたその方の魅力を写真で切り取る」。
そんな独自のスタイルで、年間100人のポートレート撮影を続けてきたEmikoさん。現在は「#100portraitsintheworld」として世界各国の人々の撮影にも挑戦しています。

本記事では、ポートレートに情熱を注ぐEmikoさんに、カメラとの出会い、撮影の喜び、そして心に残るエピソードなどを伺いました。

絵を描くように撮る──カメラとの出会い

カメラを始めたきっかけは、妊娠中に受けた一件の頼みごとでした。

「長女の妊娠中に、ベリーダンサーの友人から『アーティスト写真を撮ってほしい』と頼まれたんです。私は幼少期から絵を描くことが好きで、大人になってからも展示をしたり、ロンドンへアート留学をしたりしていました。彼女はその経験を見込んで、『絵を描くときの感性のまま、自分の写真を撮ってほしい』と言ってくれたんです」

当初は写真についてまったくの初心者。ですが「せっかくなら良い写真を撮りたい」と思い立ち、初めての一眼レフとしてCanon EOS Kiss X5を購入します。

「撮り始めると、だんだんと探求心が湧いてきました。『思ったようにボケないな』『暗く撮れちゃうな』など、オート撮影に対する不満が出てきたんです（笑）」

そこから独学で設定や構図を学び、撮影経験を重ねる中で、徐々に「思い通りの写真」が撮れるようになっていきました。その結果、口コミでプロフィール写真の依頼を受けるようになり、自然と写真家としてのキャリアが始まったのです。

コンプレックスを超えて、美しい瞬間を撮る

撮影の中でも、特に惹かれているのがポートレート。

「人の顔や体型にはそれぞれ個性があって、『横顔が好きじゃない』『鼻の形が嫌い』といったコンプレックスを持っている方も多いと思います。でも、誰にでも必ず、その人が一番輝いて見える角度、ポージング、シチュエーションが存在するんです」

Emikoさんは、ファインダーを通じてその“一番輝く瞬間”を探し続けています。
ふとした仕草、表情、光の当たり方──。

「その人の美しい瞬間を見つけることが、私にとって何よりも楽しい時間です」
被写体が「自分でも知らなかった自分」に出会う。それがEmikoさんの写真の魅力なのかもしれません。

愛用カメラはEOS R6──Canonの肌色描写に惚れ込んで

カメラ遍歴について尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「初めて購入したのがCanonのEOS Kissシリーズだったので、Canonの描く人物の肌色がこの上なく好きなんです。他のメーカーは使ったことがないのでなんとも言えませんが、ずっとCanon一筋ですね」現在の愛機はCanon EOS R6。柔らかく自然な肌の色合いを捉えるCanonの描写力は、ポートレートにこだわるEmikoさんにとって、絶対的な信頼を寄せる理由となっています。

撮影を通じて出会った、人生の物語

これまでの撮影を振り返ると、強く印象に残っているエピソードがいくつもあると語ります。

「『娘が笑わない』と心配されていたお嬢様の成人式の前撮り、視力に障害のある方、肌に病を抱えた方、余命わずかな方……。私はこれまで、さまざまな方々を撮影してきました」

どの人物にも、その人だけの魅力があり、撮影を通してそれを引き出すたびに、写真という行為の持つ力を実感してきたといいます。

「今はさまざまな国籍の方々を撮影していますが、どんな人物であっても、その人の魅力を引き出し、写し取ることができるという確信と自信が、私の中にしっかりと芽生えました」

撮影スポットおすすめ：歴史と自然が調和する世界の街々

現在は中東のバーレーンに在住し、そこから世界各地への撮影にも赴いています。

「ここ数年で訪れて感動したスポットは、イタリアのヴェネツィア、トルコのカッパドキア、そしてスコットランドのエディンバラです」

それぞれの地で異なる感動があったそうです。

「ヴェネツィアとエディンバラでは、歴史的な建造物の美しさに心を奪われました。カッパドキアでは、気球の上から見た壮大な景色が今も忘れられません」

旅先での撮影は、風景だけでなく、その土地の光や空気感が人物にも影響を与え、新たな表情を引き出すきっかけになるとのこと。

ポートレート100人斬りEmikoさんの作品