普段は35mm判(デジタル・フィルム)で街中のスナップを撮っています。中判も大判もやっています。キヤノンはズームレンズ、ニコンは単焦点レンズということに気づいたのでデジタルも使い分けをするようになりました。 いつかは欲しいNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena 主な機材:EOS R6 MarkII, Nikon Z6, Nikon F, Leica IIIf, MAMIYA C330S, Intrepid4×5
田口睦大 さんの使用カメラ
今回はEOS R5をお借りしました。
EOS R5はキヤノンRFマウントで唯一 (正確には後継のEOS R5 Mark IIもですが)の約4500万画素を達成した高画素フルサイズミラーレスです。
とある理由(後述)で高画素機を欲していたため、現在使用しているEOS R6 Mark IIとの徹底比較も交えて魅力をお伝えしていきます。
2023年12月、カメラレンズ界に衝撃的なニュースが飛び込みました。
「RF 24-105mm F2.8L IS USM Z」の発表です。
そんなスペックがあってもいいのか!?と大きな驚きを持って受け止めたわけですが、その後もキヤノンはRF100-300mm F2.8 L IS USMを発表してみたり、70-200mm F2.8をリニューアルして先述の24-105mmと同じ鏡筒にしたりと大暴れでした。
私はこの流れを見て「キヤノンはズームレンズの会社だ」と確信することになります。
結果的にその後もRF 28-70mm F2.8 IS STMやRF 16-28mm F2.8 IS STMといった面白レンズを出しているわけですし、RFシステム初期のRF 28-70mm F2L USMも十二分に化け物レンズでした。
レンズカタログもズームレンズが先に載っていますしね(ニコンは単焦点が先)。
さて、なぜ私が24-105mmの話をしているかというと、忘れもしない2025年1月、何を間違えたのかこのレンズを買ってしまったのです。標準域はこれ一本で数年戦うぞ、という決意を固めての決断でしたので後悔はしていないのですが、ここである問題が出てきます。
「レンズのスペックが高すぎてR6 Mark IIだと画質を十分に活かせていないのでは?」
一度こんな思考に陥るともう沼に半身浸かったようなものです。R5が欲しい。欲しすぎる。
私の半身を沼に沈めたのはR6 Mark IIなわけですが、もう半身を沼に沈めないでいてくれたのは皮肉なことにR6 Mark IIでした。そう、Mark IIなのです。
2020年のR5/R6の発表でキヤノンの本気を見せられたのは記憶に新しいですが、R6 Mark IIはその後継機にあたるわけです。つまり第二世代。第一世代と比べて進化が大きく宣伝されていました。
そんな第二世代のカメラを普段使っているのに、安易に第一世代に手を出して馴染めるのか。この一点が私を沼から引っ張っていました。この恐れが果たして真実なのか。それを確かめるために今回EOS R5をお借りすることにしました。
(同じく第二世代のEOS R5 Mark IIを買えばいいじゃないかって?
滅茶苦茶に高いレンズを買った人にそんな余裕あるわけないじゃないですか!
そりゃ一番欲しいし一番理想だけど!)
どうしてR5が欲しいのか。当然先述の理由が一番大きいのですが、もう一つ大きな理由としてそのナンバリング「5」があります。
キヤノンの5。これはとても価値のある数字です。同じくキヤノンの1、ミノルタ/ソニーαの9に並び、ハイアマチュアの名機として名を馳せたナンバーになります。
私と「5」の出会いは2017年。この年に3台の「5」と出会うことになります。
最初に出会ったのはEOS 5 QDでした。これは1992年に発売された35mmフィルム一眼レフで、世界初の視線入力AFを搭載していました。この時の精度はイマイチでしたが、R3, R5 Mark II, R1に引き継がれたものは素晴らしい精度ですね。初めてフィルムを入れたカメラなのでとても思い出深いです。
次に出会ったのがEOS 55です。1995年にEOS 5の後継として登場したこの機体は、先代同様視線入力AFを引き継ぎました。あまり使ってあげられなかったのですが、それまでのフィルムEOSとは一線を画すダイヤルが多めな操作性、アルミを用いた高品質な外装がとても好きで、フィルムEOSで何が一番好き?と聞かれたときに真っ先に即答するほど大好きです。
さて、2017年秋にもう1台の「5」と出会います。EOS 5D Mark IIです。
2023年にR6 Mark IIを買うまでの6年間、ずっとメインで使用したカメラになるので語り始めると愛がとまらないのですが、あまりにも長くなるためここでは割愛します。
つまり何が言いたいかというと、キヤノンの「5」は高性能・高品質で堅牢性に優れたカメラであるということです。
6年も5D IIを使っていたというのもありますが、私はRFマウントのカメラに大変な不満があります。
外装が全て安っぽいのです。中身が頑丈だというのはわかっているのですが、どうしてもプラスチッキーで許せないのです。
しかしR5はどうでしょうか。もちろん一眼レフ時代同等とまではいきませんが、レフ時代に負けず劣らずの高級感を感じます。堅牢で高解像度。これは使うしかない。
曙橋駅周辺のスナップ
カメラをお借りしたその足で知り合いが出展していた写真展へ行きました。その途中で撮影した1枚になります。梅雨入り直前の晴れ間に良い日差しの元で暑さを感じる写真になったと思います。
同じく曙橋駅周辺です。ほぼほぼ南中時刻でしたのでかんかん照りでした。ここ1,2年は人のいる街をメインに撮っていたのですが、最近は人のいない落ち着いた作品をまた撮るようになりました。
写真展のあとは授業を受けて写真部の活動に参加しました。この日はポートレートに挑戦する回で、シャボン玉がふわふわと舞っていました。動体撮影の作例にちょうどいいかと思って撮影してみたのですが、サーボAFも問題なく追尾してくれてストレスなく撮影できました。
開放から高解像な良いレンズだなあと感じる一枚です。改めてこの解像度を活かし切るには高解像度センサーが欲しいなと思います。畠山直哉さんの『BLAST』が部室にあるのですが、色味はその影響を受けているかもしれません。
物撮りの作例も撮りたいなと思っていたところで梅雨入りしたので、せっかくならと紫陽花を撮ってみました。開放で撮影したのでかなりピント面は浅いですが、ピントが合った部分は流石の解像度です。
別日に井の頭公園に行きました。この日は梅雨入りして数日で日中に雨が降っていたのですが、夜フラッと寄ってみると霧が立ち込めていました。静かで怪しげな雰囲気をモノクロで記録しようと試みた一枚です。モノクロにしたのはISO感度を上げているから、というのもありますが……
同じく井の頭公園での一枚です。ほとんど照明のない池を広角で撮影しました。いくら広角とはいえシャッタースピードは0.8秒。強力なレンズ内手ぶれ補正とボディ内手ぶれ補正のシンクロによって低速シャッターでもピタッと止めることができました。もう少しISO感度を上げればいいじゃないかと言われそうですが、私の基準だと800以上は許せないのです。
最後にハイレゾ撮影のテストです。R6 Mark IIにはなかった機能なのでつい使ってみたくなりました。左が通常の1枚撮影、右がハイレゾ撮影です。画面上でどこまで伝わるかわかりませんが、かなり解像度が向上しています。ただし自動的にJPEGになってしまいますし、JPEGでも200MBを超えるのでかなりハイスペックなPC環境が必要になります。M2 ProのMacBook Pro+Lightroomでは全然歯が立ちませんでした。何回読み込んでもトリミングができず困ってしまいました。
作例を載せたところで、撮影体験も踏まえてもう一つの本題のR6 Mark IIとの比較をしていきます。
まずは外観から。
前面はあまり差がないように見えますが、R5の方にはレリーズ用の端子が付いています。
これ、実は大きな違いで、R6 Mark IIの方ではイヤホンジャックのような形をしたE3タイプのみが側面に接続可能です。
最近はエントリー機を含めE3を採用しているのですが、一眼レフ時代からレリーズを使ってきた人、特に5Dなどを使ってきた人はより端子が大きいN3タイプを使い慣れているのではないでしょうか。
私もその1人で、R6 Mark IIでレリーズを使う時は毎回RA-EA3という変換アダプターを使っていました。
今回ハイレゾ撮影のテストでレリーズを使いましたが、やっぱり直で今まで使っていたレリーズを使えるのは大きいですね。
特に意味もなくTC-80N3という高機能なレリーズを使っているのが原因なので自己満足でしかないですが。キヤノン公式サイトを見たらもう載っていなくて悲しくなりました。
続いて側面です。ここにも大きな違いがあります。それがシンクロ端子の有無です。クリップオンストロボや無線接続を使うなら不要ではありますが、モノブロックストロボを有線で繋ぎたいときはやはりあってほしいものです。実は今回の機材写真は大判カメラにEOS 5D Mark IIを取り付け、5Dのシンクロ端子からモノブロックストロボに接続して撮影しています。こうした使い方はそんなに高頻度では行いませんが、やはりあって困ることはないですね。
横から見ると微妙なデザインの変化がわかりやすいです。R5の方は5Dっぽく、ややペンタ部が前に迫り出している感じがします。対してR6 Mark IIの方はやや後ろに倒れた形状をしています。またR5の方はペンタ部周辺がやや角ばっているのに対し、R6 Mark IIの方はやや丸みを帯びています。
どちらが好みかと言われるとR5です。
続いて背面です。概ね同じ形状をしていますが、2箇所大きく異なる箇所があります。
1つ目はマルチコントローラーの形状です。R5は中心が凹んだ形になっているのに対し、R6 Mark IIの方は全体的に膨らんだ形状になっています。後者の方が操作しやすくなったと宣伝されていましたが、個人的にはR5の方が指が引っかかりやすくて好みです。
あれ、だんだんR5の方が合っている気がしてきた
もう1つは液晶です。R5の方がやや大きくて少し高精細です。これはさすが上位機種といった感じで、実際に画面を見ていてもほんの少し綺麗に感じました。大差ないといえば大差ないんですけどね。
次に最も差異が大きいであろう軍艦部です。これはかなり違いますね。グリップ側から順番に見ていきましょう。まず一番大きな違いは肩液晶の有無です。正直ミラーレスになってからはあまり使わないのですが、やっぱり肩液晶合った方がかっこいいじゃん!ということでR5に軍配が上がります。モード切り替えはR5の方が操作が増えるので面倒ですが、そもそもモードってそんなに変えないのでは?というお話です。
次に大きな違いは電源スイッチです。個人的にはこれを一番重視していて、R6 Mark IIが右手のみで完結できる操作系になっているのに対して、R5は左手で電源操作をしなければいけません。この違いに慣れられるのかが最大の課題だったわけですが、結論からお話すると「秒で慣れる」です。杞憂でした。確かにR6 Mark IIの方が楽ではあるのですが、誤差のようなものでした。なんならR6 Mark IIの電源を切ろうとして動画モードにしてしまうくらいにはすぐに慣れることができました。
いやーますますR5にしない理由がなくなってきましたね
グリップ部を拡大してみました。握り比べてわかったのですが、R5の方が本当に若干握りにくい気がしました。写真で比較するとR6 Mark IIの方がやや内巻きな形状になっているのに対してR5はやや直線的です。ニコンやソニーのグリップを見ると内巻きの方が握りやすいのかな、という気がしますので、この点に関してはR6 Mark IIに軍配が上がります。R5の方も5D Mark IIに似たグリップなので握りにくいということはないのですが、比較するとやや浅く感じました。
最後にバッテリーグリップBG-R10をつけてみました。当然1つしか持っていないので1台のみの写真となりますが、噛み合わせに関しては可もなく不可もなく、R6 Mark IIと同じような見た目になりました。ひとつだけ気になったのは色味の違いです。写真ではわかりにくいのですが、グリップの方はR6 Mark IIに近い色をしています。素材が同じなので当然ではありますが。フィット感でいえばR6 Mark IIの方が合っていますが、それを気にする人はいるのだろうか…
ここからは中身について気づいたことを上げていきます。
R5はCFexpressに対応していますが、普段の用途であればSDデュアルスロットの方が便利かな、と思いました。カードが高いのはもちろんリーダーも高い…
普段別で使っているZ6がCFexpressシングルスロットでリーダーは持っているので別にいいんですが…
AF速度の違い
これは電源スイッチの次に気になっていた部分でした。結論から言うと「大差なし」です。
よっぽど速いものを撮るとか、特定の被写体をずっと追尾したいとかであれば頭の良さは気になってくるのかもしれませんが、街中でスナップを撮る、という用途であれば特に気になりませんでした。
ただひとつだけ気になった点があり、それはR5で「全域AF」を選択できない、ということです。「顔+追尾優先AF」を選択すれば実質全域AFにはなりますが、それに気づくまでは戸惑いがありました。
また、R6 Mark IIだとスポット1点にしていても被写体を画面の端の方まで追尾してくれるのに対して、R5はそこまでの食いつきはありませんでした。
一眼レフに比べれば贅沢な悩みなのですが、やはり1世代の違いは大きいですね。キヤノンの中の人にもどっちが良いか聞いたことがあるのですが、「絶対にR6 Mark IIの方が賢い。圧倒的。」と言われてしまいました。
高感度に弱いのは高画素の宿命ですね。R6 Mark IIが優秀すぎるのもありますが、高感度においてはかなり差を感じました。もともと高感度時のノイズに敏感で、R6 Mark IIだったとしても常用ISO800、暗所になってやっとISO6400まで使う、というくらいなのですが、R5はISO800でかなりノイズが気になります。5D Mark IIを使っているような気になりました。2008年のカメラと同じ感覚って・・・
レンズが明るいのでなんとかなっていますが、暗くなったらモノクロで運用する、といった対応が必要になるような気がしました。
今回、EOS R6 Mark IIからEOS R5への買い替えを真剣に考えていた際にちょうどお貸出のお話をいただいて、これは使うしかないとEOS R5をお借りしました。
新世代のカメラから旧世代のカメラに乗り換えるというのは進化を遡ることになってしまうのでかなり真剣に迷っていたのですが、今回お借りしたことでいくつかの懸念点が大して問題にならないことが判明し、買い替えの背中を押されてしまったような気がします。
半年後、自分の機材はどうなっているのでしょうか。怖いです。
早稲田大学写真部
田口睦大
普段は35mm判(デジタル・フィルム)で街中のスナップを撮っています。中判も大判もやっています。キヤノンはズームレンズ、ニコンは単焦点レンズということに気づいたのでデジタルも使い分けをするようになりました。
いつかは欲しいNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
主な機材:EOS R6 MarkII, Nikon Z6, Nikon F, Leica IIIf, MAMIYA C330S, Intrepid4×5
普段は35mm判(デジタル・フィルム)で街中のスナップを撮っています。中判も大判もやっています。キヤノンはズームレンズ、ニコンは単焦点レンズということに気づいたのでデジタルも使い分けをするようになりました。 いつかは欲しいNIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena 主な機材:EOS R6 MarkII, Nikon Z6, Nikon F, Leica IIIf, MAMIYA C330S, Intrepid4×5
田口睦大 さんの使用カメラ
田口睦大 さんの使用レンズ