朝香凪咲
旅行ガイドを中心に執筆。趣味は植物や動物のスナップ撮影で、気軽に持ち歩けるコンパクトなカメラとレンズを 好む。株式会社三和オー・エフ・イー所属
朝香凪咲の使用カメラ
朝香凪咲の使用レンズ
圧倒的な解像度と美しく滑らかなボケ感を両立するソニーのG Masterレンズシリーズ。
ミラーレスカメラを使っている人なら誰もが憧れるレンズではないでしょうか。今回は数あるG Masterレンズの中から、ポートレート最強レンズとも名高い「SONY FE 85mm F1.4 GMⅡ」の魅力に迫ります。
作例では、フルサイズ機のSONY α7C IIとAPS-C機のSONY α6400の2台を使用してレンズの
魅力をレビューしているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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SONY FE 85mm F1.4 GMⅡは、世界中で支持されてきた「SONY FE 85mm F1.4 GM」の第2世代となる中望遠の単焦点レンズ。
初代が登場してから8年が経ち、2024年9月に登場しました。
SONY FE 85mm F1.4 GMⅡで進化したスペックを見ていきましょう。
■SONY FE 85mm F1.4 GM IIのスペック
レンズマウント:ソニーEマウント
レンズ構成:11群14枚
絞り羽根枚数:11枚
最短撮影距離:0.85m(AF)、0.80m(MF)
最大撮影倍率:0.11倍(AF)、0.12倍(MF)
開放絞り(F値):1.4
最小絞り(F値):16
焦点距離:85mm ※APS-C装着時:127.5mm
フィルター径:77mm
大きさ:最大径84.7mm × 長さ107.3mm
質量:約642g
※SONY公式サイトより
初代から約178g(約20%)軽量、約13%小型化したことで、持ち運びや長時間の撮影でも扱いや
すくなりました。レンズは超高度非球面XAレンズが2枚増え、「ナノARコーティング II」へと進化。
逆光などの厳しい条件下による収差やフレアはほぼ削減されています。
AFスピードも魅力の一つ。GMⅡレンズ内にはXDリニアモーターが搭載され、AFスピードは初代
と比較して3倍になりました。実際にAFを使用してみると、3倍という数値以上に快適さを実感でき
ます。一瞬の変化も逃さず被写体の自然な姿や表情を捉えられるので、まさにポートレート撮影
にぴったりのレンズです。
SONY FE 85mm F1.4 GMⅡをフルサイズ機とAPS-C機に装着してみます。まずはレンズを実際に装着した見た目をご紹介します。
総重量:SONY FE 85mm F1.4 GMⅡ(約642g)+α7CⅡ(約514g)=約1156g
α7CⅡはコンパクトなボディが特徴。85mmの中望遠レンズは大きさや重さにやや懸念がありましたが、
ボディに装着したときの見た目や重さのバランスは悪くない印象です。
総重量:SONY FE 85mm F1.4 GMⅡ(約642g)+α6400(約403g)=約1045g
発売から5年が経つα6400は、現在も人気があるロングセラーのAPS-C機。αシリーズ最軽量のボディにSONY FE 85mm F1.4 GMⅡを装着すると、レンズの大きさが目立ちます。
フルサイズ機は焦点距離85mm、APS-C機は35mm換算で焦点距離127.5mmとなり、画角はかなり変わります。
フルサイズ機は画角を選びやすいですが、被写体と距離が離れているときはAPS-C機が有利になりす。
背景の葉っぱを見比べると、フルサイズ機のほうが少しボケています。フルサイズ機は被写界深度がかなり浅く、右側に置いたリップの文字がボケてしまうほど。ボケやすさではフルサイズ機が有利ですが、ピント面の浅さに注意が必要です。
F8ではあまり違いはありませんが、フルサイズ機のほうが少しだけボケています。
背景との距離を変えるなどの工夫次第でボケ感を調節できるので、絞り側ではボケ感の差はそれほど気になりません。
フルサイズ機で、F値の違いを比較してみました。うさぎの像の目にピントを合わせています。
F1.4では被写界深度はかなり浅く、周辺の花はかなりボケています。F8まで絞るとボケ感は少なくなり、奥にある花の形がしっかり認識できます。
APS-C機では、写真の中央のシロツメクサにピントを合わせて違いを比較。F1.4ならAPS-C機でも背景を強くぼかすことができます。F4まで絞ると背景の草木はぼんやりと認識できるようになり、玉ボケも細かく出ています。
ここからは実際の作例を見ながら、レンズの性能と描写をご紹介していきます。
さまざまなシーンでの撮影を行ったので、ぜひ参考にしてくださいね。
まずはフルサイズ機での作例をご紹介します。光を取り込む量が多いフルサイズは暗い環境に強いため、屋内や夜間にも多く撮影してみました。
ピント面はシャープでありつつ、背景はとろけるようにボケていくのがSONY FE 85mm F1.4 GM IIの魅力。
瞳から髪、体にむかってボケていく描写がとても自然です。
この写真は背景となる花畑の雰囲気も写したいと思い、F2で撮影しました。モデルが際立つボケ感を維持しつつ、小さな花のかわいらしさも表現されています。
地下にある飲食店での一枚です。SONY FE 85mm F1.4 GM IIなら、明かりが少ない場所でもISOを抑えて撮影できるのが強み。フラッシュやストロボを使わず壁の小さな照明を顔に近づけてもらうことで、ふんわりとした光で柔らかい写真になりました。
エスカレーターでの一枚。モデルのいる位置から5段ほど上がって、見下ろす形で撮影してみました。
ポートレート撮影でのF1.4の懸念点は、モデルの体がボケ過ぎて顔が浮き出てしまうこと。
モデルと離れて被写界深度を深くすることで自然な描写になり、背景のボケ感を維持できます。
雨の中での撮影でしたが、コントラストは落ちることなく描写されている印象。
モデルだけでなく傘の骨組みやビニールのしわ、細かな水滴まで驚くほどシャープです。
レンズは防塵・防滴に配慮した設計とフッ素コーティング加工が施されているので、雨天時でも安心して撮影に集中できますよ。
雨の日の日本橋。シャッタースピードを遅くして雨、人、車の動きを撮影しました。濡れている獅子像の光沢がお気に入り。
獅子像は守護を願うもの、と考えられているそうで、まるで行き交う人々を見守っているかのようですね。
水たまりに落ちる雨の波紋。F1.4の被写界深度はとても浅く、ピント面は数センチほど。
10枚ほど連写しましたが、波紋にピントが合っている写真は数枚だけでした。
瞳AFやトラッキングに頼らないシーンでは、狙った位置にピントを合わせるのが難しくなります。
ベーコンがのったフレンチトースト。F4でベーコンやフレンチトーストの手前と奥がボケています。
ピント面のシャープな描写によって、焼きたてのトーストとジューシーなベーコンの食感が伝わってきます。
85mmレンズは被写体を適度に切り取ってくれるので、料理の魅せたい部分にクローズアップできますよ。
駅前のネオンを背景に、玉ボケを狙って花壇を撮影。夜間に撮る花は昼間とはまた違った印象で、
玉ボケによって幻想的な一枚になりました。F1.4では画面端でレモンボケになり、大きい玉ボケはフリンジも見られます。
続いてAPS-C機での作例をご紹介。焦点距離はフルサイズより長くなるので、望遠を活かした写真を多く撮影してみました。
APS-C機の場合、フルサイズ換算で焦点距離は127.5mm。ポートレート撮影ではモデルと程よい距離感を保ちながら撮影できるため、より自然な表情を引き出しやすく感じました。
背景にある噴水は認識できないほどボケている反面、モデルの髪やまつ毛、眉毛は一本一本しっかり描写されています。
緑が豊かな芝生広場で撮影。モデルの頬や髪、葉っぱに木漏れ日が差していて、光や奥行きを感じる一枚に。
モデルと距離をとったことで被写界深度が深くなり、周辺の葉っぱもボケ過ぎることなく解像しています。新緑の葉っぱがフレッシュな印象を与えてくれていますね。
人の少ない場所があったのでモデルと距離をとり、小さな花畑を手前に入れて撮影しました。
前ボケ、後ボケともにとろけたようなボケ感で、圧縮効果が強く出ていますね。
日差しの強い中でもフレアは抑えられています。逆光によってモデルの輪郭が白っぽくなり、モデルが際立つ一枚になりました。
近所で行われていたサッカーの練習試合を撮影。AFトラッキング性能はとても優秀で、
サッカーのように動きが予想できないシーンでもピントを逃しません。
別の選手が写り込んでピントが外れてしまったときは、レンズの驚異的なAFスピードで素早く被写体を切り替えることができました。
焦点距離127.5mmは、被写体と離れているシーンでも撮影できるのが強み。
グラウンドの外から撮影したのでかなり距離がありましたが、F1.4なら背景も十分にボケてくれました。
トリミングやレタッチをするなら、スポーツ選手のポートレート撮影も可能です。
散歩の途中で見つけたアゲハ蝶です。アゲハ蝶がいた時間はほんの一瞬でしたが、
迷うことなくピントを合わせてくれました。
背景は草木が生い茂っていてごちゃごちゃとしていましたが、とろけるようなボケ感になりアゲハ蝶の模様が際立っています。
駐車場の看板で休んでいる2匹の鳩。SONY FE 85mm F1.4 GM IIをAPS-C機に装着すれば、
近づきにくい動物の撮影でも活躍します。
細部までシャープに写るので、拡大して鳩の毛並みや表情をじっくり観察するのも楽しみ方の一つ。
ネオンが輝く都会で流し撮りに挑戦してみました。
左折のタイミングなのでスピード感はそこそこですが、背景は単焦点ならではのボケ感で、
タクシーに目を惹かれる印象的な写真になりました。
APS-C機での焦点距離を活かせば、飛行機の流し撮りにも挑戦できそうです。
SONY FE 85mm F1.4 GMⅡは、ポートレート撮影において心から信頼できるレンズ。
どんなシーンでも被写体を美しく写してくれます。
ソニーの最先端技術によって作られたレンズは、GMasterシリーズを初めて使う人はもちろん、
初代レンズを持っている人もその性能の高さに驚くのではないでしょうか。
今回はフルサイズとAPS-C機の2台で撮影しましたが、どちらでもレンズの性能の高さを実感しました。
センサーサイズで画角やボケ感などさまざまな違いはありますが、どのボディでも魅力的な写真になります。
機動力と描写力ともに圧倒的な性能を誇るSONY FE 85mm F1.4 GMⅡ。完璧なポートレート写真を求める人は、ぜひ手に取ってみてくださいね。
プロフィール
朝香凪咲
旅行ガイドを中心に執筆。趣味は植物や動物のスナップ撮影で、気軽に持ち歩けるコンパクトなカメラとレンズを好む。
株式会社三和オー・エフ・イー所属。