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【徹底解説】ILFORDの歴史と写真界への影響〜140年続く名ブランドの全貌

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【徹底解説】ILFORDの歴史と写真界への影響〜140年続く名ブランドの全貌

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アールイーカメラ

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アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。

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ILFORDとは

ILFORD(イルフォード)は、1879年にイギリスで創業された写真用品メーカー、およびそのブランドです。140年以上にわたり、特に高品質なモノクロフィルムや印画紙、写真薬品などの感材を中心に製造・販売してきました。
また、デジタルイメージングの時代にはインクジェットメディアの開発にも積極的に取り組み、常に写真表現の最前線に立ち続けています。
2004年に一度破産を経験しましたが、翌2005年にはハーマン・テクノロジーとして再編され、「ILFORD Photo」ブランドのもとで白黒製品の製造を継続しています。
カラー製品やインクジェットメディアは「ILFORD Imaging Switzerland GmbH」の管轄下にあり、異なる運営体制でブランドが維持されています。

ILFORD創業の背景と歴史

創業年・創業者と企業の歩み

ILFORDの歴史は、1879年にアルフレッド・ハーマンが自身の自宅地下室で写真乾板の製造を開始したことに始まります。当初は「ブリタニア・ワークス(Britannia Works Company)」として知られ、1891年には「Britannia Works Co. Ltd.」として法人化されました。
その後、1902年には会社の本拠地があった英国エセックス州の町「ILFORD」にちなんで「ILFORD Limited」へと社名を変更しました。

同社は第二次世界大戦中のロンドン大空襲で工場が被災するなど困難な時期も経験しましたが、1959年にはICI社の傘下に入り、1963年にはスイスのCiba社がILFORDの株式を取得し、共同で銀染料漂白法に基づくプリント感材「Cibachrome(後のILFOCHROME Classic)」の開発に着手しました。

140年にわたるブランドの発展

ILFORDはその後も様々な企業グループの傘下に入り、事業再編を繰り返しました。1989年にはアメリカのInternational Paper社に買収され、「ILFORD Anitec」と社名を変更した時期もありました。1998年には「ILFORD Imaging Ltd」に社名変更し、コンシューマー向けインクジェット市場に参入するなど、時代の変化に対応してきました。

しかし、2004年にILFORD Imaging社は創業125周年を迎える年に破産し、分社化されたILFORD Imaging UK Limitedが破産管財人の管理下に入ります。しかし、その翌年2005年にはILFORD Imaging UKの経営陣によるMBO(マネジメント・バイアウト)が実施され、創業者アルフレッド・ハーマンの名を冠した「ハーマン・テクノロジー(HARMAN technology)」として再スタートを切りました。これにより、ILFORDのアナログモノクロ製品の製造が継続されることになります。同年7月には、日本の王子製紙がILFORD Imaging Switzerland GmbHを買収し、インクジェット製品および高品質カラー写真製品の製造を管轄することになりました。

2014年には、ILFORDの商標と関連資産が日本の中外写真薬品株式会社とオーストラリアのCR Kennedy & Company Pty Ltdに買収され、ドイツにILFORD Imaging Europe GmbHが設立されるなど、現在もその運営体制は変化を続けています。日本では2008年以降、サイバーグラフィックスがハーマン・テクノロジーの総代理店を務めていましたが、2023年3月からはジェットグラフ株式会社が新たな総代理店となり、ILFORDのアナログモノクロ製品とデジタルインクジェット製品の国内正規代理店が統合されました。

主力製品のラインナップ

白黒フィルムのラインナップと特徴

ILFORDは、特にモノクロフィルムの分野で高い評価を得ています。
そのラインナップは、多様な写真家のニーズに応えるべく幅広い製品を提供しています。

PLUSシリーズ(PANFプラス50、FP4プラス125、HP5プラス400)

旧型乳剤を使用したフィルムで、安定したトーン再現と現像への反応の良さに定評があります。中でもISO 50のPANFプラス50は、超微粒子で精細感に優れ、豊かなディテールと絵画的なコントラストが特徴です。大型シートフィルムの受注生産も継続されており、プロフェッショナルからの信頼も厚いです。

DELTAシリーズ(DELTA100、DELTA400、DELTA3200)

コダックのTMAXや富士フイルムのアクロスと同様のT粒子技術を採用し、超微粒子と超シャープネスを実現しています。特にDELTA3200は、現在市販されているモノクロフィルムの中で最高感度を誇り、厳しい光条件下でも連続したトーンの美しい写真が撮影できます。

XP2スーパー400

一般的なカラーネガ現像であるC-41プロセスで現像できるモノクロフィルムです。優れた粒状性と広いラチチュード、豊かな階調、高いシャープネスを持ち、露出ミスにも許容範囲が広いため、初心者でも高画質なモノクロ写真を手軽に楽しめます。

SFX200

740nmの赤外線域まで感光する特殊フィルムで、波長制限フィルターを使用することで独特の描写が得られます。

ORTHO COPY PLUS

超細密描写が可能なコピーフィルムで、オルソフィルムのため赤色セーフライト下での現像が可能です。

印画紙・薬品類などの製品解説

ILFORDはフィルムだけでなく、印画紙や写真薬品も主力製品として展開しています。

マルチグレードペーパー

フィルターを交換することで様々な階調でプリントできる多階調印画紙「マルチグレードIV RCデラックス」や、温黒調、冷黒調の印画紙など、多様な表現を可能にするラインナップがあります。現在も印画紙のラインナップは存続しており、フィルムなしで直接撮影できる「ダイレクトポジティブペーパー」も提供されています。

写真薬品

現像液には、コダックD-76と同等の標準現像剤「ID-11」や、増感特性に優れた「マイクロフェン(Microphen)」、超微粒子現像剤「パーセプトール(Perceptol)」など、多種多様なニーズに応える製品があります。また、印画紙用の現像液も豊富に用意されています。

写真界・イメージング分野への影響

業界におけるILFORDの役割

ILFORDは、140年以上にわたり写真業界の発展に大きく貢献してきました。特にモノクロ写真の分野においては、フィルムから印画紙、薬品に至るまで一貫した高品質な製品を提供し続けることで、アナログ写真文化を支える重要な役割を担ってきました。
2004年の破産からハーマン・テクノロジーとして再編された後も、白黒感材のリーディングブランドとして、その伝統と技術を守り続けています。デジタル化が進む現代においても、インクジェットメディアの開発を通じて、写真表現の可能性を広げています。

プロフェッショナル・アーティストからの評価

ILFORDの製品は、その優れた品質と安定性から、世界中のプロフェッショナルフォトグラファーやアーティストから高い評価を得ています。
特に、白黒フィルムの「HP5プラス400」や「XP2スーパー400」は、その優れた粒状性、広いラチチュード、豊かな階調性により、多くの写真家から愛用されています。
また、マルチグレード印画紙は、表現の幅を広げるツールとして重宝されてきました。デジタル分野においても、ILFORDのインクジェットペーパーは、銀塩写真に匹敵する表現力を持つとされ、作品制作において高い信頼を得ています。
ILFORDが認定するプリントラボが存在することからも、その技術と品質に対する信頼の高さが伺えます。

伝説的製品のエピソード

ILFORDの製品の中には、写真史に名を刻む伝説的な製品も存在します。

マルチグレードペーパー: 1940年に発売されたマルチグレードペーパーは、フィルターを変えるだけで多様なコントラストを表現できる画期的な印画紙として、多くの写真家に支持されました。

XPシリーズフィルム: 1980年にXP1フィルムが発売されて以来、XP2、XP2スーパーと進化を遂げたXPシリーズは、一般的なカラーネガ現像(C-41プロセス)でモノクロフィルムが処理できるという画期的な特徴を持ち、手軽に高品質なモノクロ写真を楽しめる製品として、特に初心者から高い評価を得ました。

フィルム写真文化におけるILFORDの位置づけ

アナログ写真文化とILFORD

ILFORDは、140年以上の長きにわたり、アナログ写真文化の継承と発展に深く貢献してきました。デジタルカメラが主流となった現代においても、モノクロフィルムや印画紙の生産を継続し、多くの写真愛好家にとってアナログ写真の魅力を体験できる貴重な存在であり続けています。
特に、モノクロフィルムに注ぐ情熱は創業以来変わらず、いつの時代も高品質なモノクロフィルムブランドとして親しまれています。

世界中の写真愛好家に支持される理由

ILFORDが世界中の写真愛好家から支持される理由は、その揺るぎない品質と、写真表現の多様性を追求する姿勢にあります。

卓越した描写力: PANFプラス50の超微粒子と精細感、DELTA3200の最高感度と美しいトーン、XP2スーパーの優れた粒状性など、各フィルムが持つ独特の描写特性は、写真愛好家が求める表現を可能にします。

幅広い製品ラインナップ: フィルムだけでなく、印画紙、薬品、さらには手軽に使えるフィルムカメラまで、アナログ写真に必要なほぼすべての製品を提供しており、ユーザーはILFORD製品で一貫したワークフローを構築できます。

継続的な供給: 銀塩写真市場が縮小する中でも、代理店との協力により精力的に製造販売活動を継続しており、写真愛好家が安心して製品を使い続けられる環境を提供しています。

伝統と革新の融合: 長い歴史を持つブランドでありながら、新しい技術や表現方法にも積極的に挑戦し、デジタル時代にも対応したインクジェットメディアの開発や、新たなフィルム製品の発表など、常に進化を続けています。

多様なニーズに応えるILFORDの魅力

ILFORDは、初心者からプロフェッショナルまで、多様なレベルとニーズを持つ写真愛好家に応える魅力を備えています。

初心者にも優しいXP2スーパー: カラー現像に対応しているため、専用のモノクロ現像設備がなくても手軽にモノクロ写真を楽しめます。

プロフェッショナルの要求に応える品質: PLUSシリーズやDELTAシリーズのフィルムは、その高い描写力と安定性で、緻密な作品制作を追求するプロの現場でも選ばれています。

表現の幅を広げる印画紙と薬品: マルチグレードペーパーは、コントラストの調整により表現の幅を広げ、多様な現像液は、微粒子化や増感など、意図に応じた写真の仕上がりを実現します。

アナログとデジタルの融合: フィルムで撮影した画像をデジタルプリントする際に、ILFORDのインクジェットメディアを使用することで、銀塩写真の質感に匹敵する高品質なプリントが可能になります。これは、アナログとデジタルの両方の良さを追求する写真愛好家にとって大きな魅力です。

ILFORDの未来と展望

伝統と革新の両立を目指すビジョン

ILFORDは、140年以上にわたり培ってきたアナログ写真の伝統と、常に変化するイメージング技術の革新を両立させることを目指しています。モノクロフィルム製造の伝統を守りつつ、デジタル印刷技術の最前線に立ち、高品質なインクジェットメディアを開発することで、写真とプリント技術の研究開発を継続しています。これは、アナログとデジタルが共存する現代において、写真表現の可能性を最大限に引き出すというILFORDの強いビジョンを示しています。

新製品・技術開発の動向

近年、ILFORDはアナログ製品とデジタル製品の両方で新製品を積極的に投入しています。

アナログ製品の再活性化: 2021年には、手軽にフィルム撮影を楽しめる「ILFORD SPRITE 35-II」フィルムカメラや、レンズ付きカラーネガフィルム「ILFOCOLOR RAPID RETRO」を発表しました。これらは、近年のフィルム写真ブームを後押しし、世界中で好調な販売を記録しています。特に「ILFOCOLOR RAPID RETRO」は、1960年代から90年代にかけて販売されていたILFOCOLORの名称を冠し、1980年代のモータースポーツデザインをモチーフにするなど、レトロ感を意識した製品展開が見られます。

インクジェットメディアの進化: GALERIEシリーズでは、最高級グレードのPrestigeシリーズへの移行や、コットンペーパーなどのラインナップ強化が行われました。また、手漉き和紙をベースにしたインクジェット適性のあるファインアートペーパーなど、日本の伝統技術と融合した製品も開発されています。

ソリューションとしての提案: 「MONOCHROME PRINTING SOLUTIONS(モノソリューションズ)」として、アナログとデジタルの両方からモノクロプリントにアプローチする新しいソリューションを提案。プラチナプリントのソリューション「PLATINACHROME」や、銀塩プリントのソリューション「SILVERCHROME」などを展開し、写真表現の多様な可能性を提供しています。

アナログ&デジタル時代のILFORD

ILFORDは、アナログとデジタルの境界を超えて、写真愛好家が最高のイメージング体験を得られるよう努力しています。アナログフィルムとデジタルインクジェットメディアの両方を展開することで、ユーザーは撮影からプリントまで、自分の表現したい世界観に合わせてILFORDの製品を選択できます。

例えば、アナログフィルムで撮影したノスタルジックな写真を、ILFORDの高品質インクジェットペーパーでデジタルプリントするという新たな表現も可能です。また、EIZOなどのモニターメーカーと協力し、モニターとプリントの色合わせを簡単に行えるソフトウェアへの対応を進めるなど、デジタルワークフローにおけるプリント品質の向上にも貢献しています。

まとめ

140年続く名門ブランドの今後

ILFORDは、1879年の創業から140年以上にわたり、写真業界の変遷を見守り、その中で常に高品質なイメージング製品を提供し続けてきました。一度は破産という困難を経験しながらも、ハーマン・テクノロジーとして再編され、アナログモノクロ製品の伝統を守り抜きました。同時に、デジタルインクジェットメディアの開発にも注力し、時代の変化に合わせた革新を続けています。この伝統と革新の両立こそが、ILFORDが長きにわたって写真界でその存在感を示し続ける理由です。

今後もILFORDは、フィルム写真ブームの盛り上がりや、デジタルプリント技術の進化に対応しながら、写真愛好家がより豊かな表現を追求できるような製品やソリューションを提供していくことでしょう。

写真愛好家へのメッセージ

ILFORDは、フィルムの持つ独特の質感や表現力を愛する写真愛好家にとって、欠かせないブランドです。また、デジタルで撮影した写真を高品質にプリントしたいと考える人々にとっても、ILFORDのインクジェットメディアは最適な選択肢となります。

アナログ写真の奥深さを追求したい方、手軽にフィルム写真を始めたい方、そしてデジタル時代のプリント品質にこだわりたい方。ILFORDは、あなたの写真表現の旅を、最高の品質と多様な選択肢でサポートし続けます。ぜひ、ILFORDの製品を手に取り、写真の持つ無限の可能性を体験してください。


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アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。

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