河邉弘
カメラ歴4年。慶應義塾カメラクラブに所属し、動物や風景を中心に撮影。自然な瞬間を大切にし、特に犬や猫などの動物を好んで被写体に選んでいます。
河邉弘の使用カメラ
河邉弘の使用レンズ
今回、MARUMI 様の新作フィルター「アルプスパンチ」「なついろパンチ」をレンタルさせていただく機会をいただきました。
私は普段、写真の雰囲気を大きく変えるようなフィルターをほとんど使ったことがなかったため、このフィルターを試すことをとても楽しみにしていました。
ちょうどアールイーカメラ様の担当の方とお会いした際、タイミング良く MARUMI 様からフィルターレンタルのご案内がありました。「解像度を落とすことで、デジタルカメラでは本来表現できない新しい写真表現が可能になる」というコンセプトを持ったフィルターということで、期待感が一層高まりました。
普段、デジタルカメラを使うときは、どうしてもピントや露出、シャッタースピードなど細かい設定を意識しながら、「いかに解像度の高い、画質の良い写真を撮るか」ということに集中してしまいます。
けれど、このフィルターを装着すると解像度が大きく落ち、輪郭が少し曖昧になり、いつもの正確さを追求する感覚では撮れなくなります。
その代わりに、「この瞬間がいいな」と思った直感を大切にし、肩の力を抜いて気楽にシャッターを押すことができました。
技術的に完璧な写真ではなくても、その場の空気感や自分の感情が写り込むような、不思議と“心に残る写真”になることが多く、撮影の楽しみ方そのものが変わったように感じます。
一際目を引く日傘を見つけて、思わずシャッターを切りました。これがフィルターを使って撮った最初の一枚です。被写体との相性がぴったりで、空の色合いもやわらかく表現され、普段のデジタルカメラとは違う優しい雰囲気に仕上がりました。
仲の良さそうな海外のご家族を発見。なんとお母さんが子どもを肩車していて、思わずびっくりしてシャッターを切りました。解像度が抑えられていることで、写真全体が柔らかく描写され、家族の温かさがより引き立つ「やさしい一枚」になりました。
力強さを感じさせてくれる大きな木を見つけました。その隣を行き交う人々や、その上に広がる空が一枚の中に重なり合い、とても素敵な雰囲気で撮影することができました。
同じ景色を、2 つのフィルターで撮り比べてみました。
「なついろパンチ」では全体が黄色っぽく写り、力強いエネルギーを感じさせる一枚に。
一方、「アルプスパンチ」では赤みが強調され、温かみのある雰囲気に仕上がりました。
同じ風景でもフィルターによって印象が大きく変わるのが、とても面白かったです。
最後に撮影したのは花火です。
普段であれば、一つひとつの花火にしっかりピントを合わせて撮ろうとしますが、
今回はフィルターを通すことで光がほんのりと滲み、柔らかく表現されました。
その結果、華やかさだけでなく、温かみやどこか懐かしさを感じさせる一枚に仕上がりました。
今回「パンチ!シリーズ」を使ってみて感じたのは、ただのフィルターではなく、“写真そのものの意味”を変えてしまうフィルターだということです。
解像度の高さやシャープさを求めるのではなく、あえて曖昧さやフレアを加えることで、デジタルでは再現しにくい独特の世界観を作り出してくれます。特に印象的だったのは、花火を撮ったときです。
夜空に広がる花火そのものの迫力はもちろんですが、始まる前に人々が場所をとって待っている時間の風景を撮影したときも、このフィルターの魅力を強く感じました。
まだ暗くなりきらない夕暮れの雰囲気が、フィルターを通すことで「思い出の中の情景」のように柔らかく写し出され、すでに物語が始まっているかのように見えました。
そして花火が打ち上がると、本来なら光が強すぎて邪魔になるはずのフレアやゴーストも重なり合い、幻想的な効果を生み出しました。トイカメラやフィルム写真を思わせるような懐かしさが漂い、時間の流れそのものを写真に閉じ込めたような感覚がありました。
そのとき思ったのは、このフィルターの魅力は「ありのままを残す」ことではなく、「その瞬間をどう記憶したいか」に近づけてくれることです。花火大会の鮮やかさよりも、自分がそこにいた感覚や空気感を表現できる。
まさに「解像度のいらない世界」というキャッチコピーを体感した瞬間でした。