アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。
アールイーカメラの使用カメラ
アールイーカメラの使用レンズ
今回紹介するのは、富士フイルムのXマウントレンズ「XF90mm F2 R LM WR」です。
2015年7月に登場した中望遠の単焦点レンズで、開発コンセプトは「高画質・高速AF・高い信頼性」です。このコンセプトのもと、富士フイルムは新開発の クアッド・リニアモーター を搭載。4つの磁石による駆動でフォーカス群を動かす仕組みにより、高速かつ静粛なオートフォーカスを実現しています。
メーカー公称では最速0.14秒という驚異的なAF速度を誇り、人物や動きのある被写体でもスムーズにピントを合わせることが可能です。まずは基本的な仕様を整理しておきましょう。
本レンズの焦点距離は90mmで、35mm判換算では約135mm(公式では137mm)に相当する中望遠レンズです。
開放F値はF2.0と非常に明るく、背景を大きくぼかすことができるため、ポートレートや被写体の存在感を際立たせる撮影に最適です。
また、レンズの名称に含まれる表記にも意味があります。
「R」は Aperture Ring(絞りリング) の略で、レンズ側でダイヤルを回すだけで直感的に絞り値を変更できることを示しています。
「LM」は Linear Motor(リニアモーター) を搭載していることを意味し、静音性と高速性、高精度なピント合わせを実現します。
「WR」は Weather Resistant(防塵防滴構造) の略で、屋外や悪天候下でも安心して使用できる堅牢性を表しています。本レンズは防塵防滴に加え、耐低温性能(-10℃)も備えており、アウトドアポートレートや旅先での撮影でも活躍します。
外観は金属製で、質感はマットなサテンブラック。しっかりとした作りで高級感があります。サイズは直径約75mm、全長約105mm、重量は約540gです。135mm相当F2の中望遠単焦点としては、比較的コンパクトで取り回しやすいのが特徴です。フィルター径は62mmで、NDフィルターやPLフィルターなども入手しやすいのは嬉しいポイントです。
レンズのデザインは非常にシンプルで、スイッチ類は一切なく、レンズ先端にフォーカスリング、根元に絞りリングが配置されています。フォーカスリングは幅広でトルク感があり、マニュアルフォーカス時も指先で滑らかに操作できます。MF操作時の精密なピント合わせもストレスなく行え、静物やポートレート撮影でも扱いやすい設計です。
絞りリングは1/3段刻みでF2からF16まで変更可能で、F16の隣には「A」のポジション(絞りオート)が設けられています。この「A」に合わせることで、カメラ本体の設定に応じて自動で絞りを制御できます。絞りリング自体も、富士フイルムのレンズ世代ごとに改良が加えられており、本レンズではやや重めのトルク感と明確なクリック感が特徴です。このため、誤って絞りが動いてしまう心配がなく、狙った露出を正確に維持できます。
今回は一番良く撮れたと思う1枚から。
被写体にぐっと近づいて瞳にピントを合わせてみました。このレンズで近づくとちょうど鼻〜目にかけて画角に収めることができ、ポートレートの撮影時はかなり雰囲気のある撮影が可能です。
また、瞳に映った景色もしっかり描写できています。一般的に135mmのレンズは最大撮影倍率(どこまで被写体を大きく写せるかの指標)が大きい傾向にあります。このレンズも最大撮影倍率が大きく0.2倍です(35mm判換算0.3倍)。
焦点距離が長いこともあって、意外とよれて大きく写せる!と思わせてくれるレンズです。
逆光で後ろ姿を撮影しました。
光があたったところが美しく描写されています。
焦点距離135mm相当なので、背景が大きくぼけ、情報を整理しやすいと感じました。
F2で明るいのも使いやすいです。
カメラを水面ギリギリに配置してかなりのローポジションから撮影しました。
手前の水面はきれいにボケていて、少し段になっているところや、橋の上の人たち、奥の山々など、すべてが綺麗に描写されています。
肉眼で見える景色と違うからこそ、写真としての雰囲気や力強さがしっかりと出ていると思います。
こちらもローポジションから。
F2にすると近くの草はボケすぎてまるでフィルターのような効果になります。
今回は試せていませんが、玉ボケが出るようなシチュエーションであれば、更にポートレート撮影の幅が広がりそうです。
少し暗くなってきた時間帯ですが、ピントは迷うことなく、スピードも早く合焦してくれます。
撮影時にストレスがないことは、ポートレートにおいては撮影のテンポに直結するので大切です。
最後に、F値によるボケ方の違いについて見てみましょう。
中央の花にピントを合わせ、F2、F4、F8と絞りを変化させました。
F2では前ボケ、後ボケともにきれいで、ボケのざわつきもなく素直です。
F4ではすこしボケが小さくなるもののまだ立体感が感じられます。
F8ではボケているところが少しざわついてきました。
ボケを活かしたいときはF2~F4くらいがきれいと感じました。
作例のモデル:ゆずつき
XF90mmF2 R LM WRを一言で表すなら、「撮影体験を特別なものにしてくれる、望遠単焦点レンズ」だと思います。
もちろん、焦点距離90mm(フルサイズ換算137mm)というのは決して万能ではなく、街中でスナップするにはやや長すぎたり、狭い室内では取り回しに苦労したりすることもあります。
しかし、その「制約」を上回るだけの描写力と表現力を持っているのが、このレンズの大きな魅力です。
まず、開放F2で撮影したときの描写が本当に美しく、ピントが合った部分は芯がしっかりと立ち、解像力の高さを感じさせます。その一方で、背景のボケはとても滑らかでクセが少なく、被写体を浮かび上がらせてくれます。まさに「立体感のある描写」という表現がぴったりで、ポートレート撮影では特にその魅力が際立ちます。人物の肌の質感や髪の毛の一本一本、衣服の繊維まで捉えながらも、背景は溶けるように柔らかく流れていく。そのコントラストが、写真に奥行きを生み出します。
また、望遠レンズらしい圧縮効果も見逃せません。背景の要素をぐっと引き寄せることで、被写体をよりドラマチックに見せてくれます。風景撮影でも同様で、遠景の山並みや街並みを圧縮して切り取ることで、肉眼では見えない力強さを写真に与えてくれます。
操作感についても、富士フイルムらしい「撮る楽しさ」が随所に感じられます。金属製の鏡筒は手に持つとずっしりと重みがありますが、嫌な重さではなく「しっかり作られている」という安心感につながります。絞りリングはカチカチと心地よいクリック感があり、ファインダーを覗きながら直感的に操作できます。
さらに、防塵防滴構造のおかげで、少々の雨やでも安心して使えるのも大きなポイントです。
ポートレート撮影は屋外で行うことが多いため、この信頼性は実用面で非常に助かります。
重さは約540gとそれなりにあり、Xシリーズの小型ボディと組み合わせるとややフロントヘビーになります。長時間持ち歩くと、手首や肩に負担を感じるくらいです。
それでも、このレンズで撮影していると自然とテンションが上がり、「せっかくだからもっと良い場面を探そう」と思わせてくれる。そんなポジティブな力を持ったレンズです。
総じて、XF90mmF2 R LM WRは「撮る写真の質を一段階引き上げたい」と思っている人に、おすすめできる一本です。ポートレートを中心に、風景や静物などでも十分にその実力を発揮してくれるはず。
Xシリーズを使っていて、標準域のレンズに物足りなさを感じている人は、ぜひ試してみる価値があると思います。
「写真がうまくなったかも」と思わせてくれるレンズです。
アールイーカメラは、2007年に「株式会社アキバ流通」として神田佐久間町で 創業し、家電卸売業と並行してカメラの買取販売を開始しました。 その後、2009年に外神田へ移転し、事業規模を拡大。2015年には現在の店舗がある御徒町へ移転しました。2018年からはカメラ事業に本格的に注力し、 「アールイーカメラ」としての活動をスタート。 現在に至るまで、カメラ愛好者の皆様をサポートし続けています。
アールイーカメラの使用カメラ
アールイーカメラの使用レンズ