スマホでもライブ撮影はできる?初心者から上級者まで、撮影のコツと注意点・心構えを解説
スマホでもライブ撮影はできる?初心者から上級者まで、撮影のコツと注意点・心構えを解説
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日本では、基本的に一般客によるライブの撮影は禁止されています。
しかし近年では、特定の曲だけ撮影を解禁したり、スマホでのライブ撮影に限り全面的に撮影OKにするなど、撮影をある程度解禁するアーティストが増えてきました。
また、地下アイドルなど特定のジャンルに限っては「撮影可能ライブ」といって、ファンによる撮影を全面的にOKしている場合もあります。
そうした時代の変化もあり、撮影を仕事で受けるプロのカメラマン以外の一般客でもライブの撮影を
行える機会が増えてきている今、「プロのようにかっこいいライブ写真を撮るにはどうすればいいの
か」を知りたい方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ライブ撮影歴16年になる筆者が、かっこいいライブ写真を撮るために必要な設定や機材、ライブ撮影のコツ、現場で必要な心構えなどを徹底解説していきます。

スマホでもできる?ライブ撮影に使える機材とは

今では一般客でも撮影ができるライブが増えていますから、ライブ撮影を行うときの機材も幅広く
色々なものが用いられるようになってきました。
中でも、日常的に持ち歩いているスマートフォンやカメラ付き携帯電話は誰もが気軽に使用できるこ
とから、一般客のライブ撮影にはよく用いられている印象です。しかし、アマチュアカメラマンであっても公式にライブ撮影を頼まれたら、スマホでは画質的に心許ないというのも確かです。
ここでは、スマホでライブ撮影は可能かどうか、仕事で受ける場合はどのような機材を使うべきかな
ど、ライブ撮影に使える機材について解説していきます。

ライブ撮影はスマホでも可能

ライブ撮影自体は、スマホでも可能です。「スマホのみ撮影OK」としているライブも多いので、実際に
スマホでライブを撮ったことがある人も多いでしょう。
X(Twitter)などSNSでライブを撮影してアップしている一般客の投稿を見たことがある人なら、スマホでもある程度のクオリティのライブ写真が撮れることを、実感として理解しているのではないでしょうか。

スマホのメリットは、ボディが小さいため他人の邪魔になりにくいことと、動画と静止画を両方撮れること。
ボディが軽く気軽に撮影ができる割にそこそこ画質が良く、ある程度の用途(SNSやYouTube公開用の記録動画を撮るなど)ならスマホでも十分通用します。
その代わり、スマホでは決まった画質でしか撮れなかったり、フルオートで自由に設定を変更できなかったりと制限が多く、特に画質面では頼りないのが実情です。
ズームが可能なので後方からでも演者のアップが撮れますが、スマホのデジタルズームだと画質はすぐに粗くなってしまいがち。また、急激に明暗が変化するライブではスマホのオート機能では変化に対応できず、白飛びしやすい・ブレてしまいやすいという弱点もあります。

仕事でのライブ撮影の機材はフルサイズ一眼カメラが理想

以上のように、スマホでは画質面やブレ等で限界があります。ライブ写真をプロモーションに使いた
い場合にはある程度高い画質が必要で、スマホの撮影写真では使い物になりませんし、
見栄えのいいライブ写真を撮るためにもスマホでは心許ないのが現実です。
そのため、仕事としてライブ撮影を行うなら、最低限一眼レフなどプロユースに耐えうる高画質なカメラが必要不可欠といえます。
スマホと一眼カメラの大きな違いは「画像センサーの大きさ」です。画像センサーが大きいほど、画質はより鮮明で綺麗に撮れますし、画角も広くなり、撮影感度(ISO感度)を上げても画質が粗くなりにくくなります。特にライブ会場は暗いことが多いため、高感度撮影にも耐えうる大きな画像センサーを持つカメラが必要です。

理想としては、目で見たそのままの視野を捉えられる「35mmフルサイズセンサー」を備えたカメラであれば一番ですが、そうした大きなセンサーを備えたカメラはボディも大きく、値段も非常に高いものが多いので、なかなか手を出しづらいのも確かでしょう。
フルサイズよりも小さい「APS-C」というセンサー搭載の一眼カメラは、比較的お手頃に入手できます。

ライブ撮影のレンズは広角・標準〜望遠の2本は最低限必要

ライブ撮影の際にレンズを選ぶなら、焦点距離を柔軟に調整できる「ズームレンズ」を選びましょう。
そして、できれば広い視野で撮影できる「超広角〜広角」レンズと、寄り引きを両方狙える「標準〜望
遠」レンズの2本は最低限必要です。
ライブ撮影は「自分の思い通りの状況には絶対ならない」ものです。ライブ現場は、その日の客入り状況はもとより、ライブ会場の都合によって変わる動線、自分では操作できない演者の動き方や照明の移り変わり、立ち位置の制限など、自身ではコントロールできない要素ばかり。
当然ですが客や会場がカメラマン側に合わせてくれることはないので、カメラマン側がその日の会場や状況に臨機応変に合わせる必要があります。
移り変わる状況に柔軟に合わせていけるレンズとして、後方からでもズームで近影が狙える「ズームレンズ」が最適なのです。
そして、仮に会場規模の都合などでステージ間近でしか撮れない場合や、後方から全体を広く撮りたい場合に備えて「超広角〜広角」のレンズも1本あれば安心できます。

ライブ撮影に最適な設定

ライブ撮影の際は、フルオート設定はあまりお勧めしません。
少なくとも、絶対にカッコよくは撮れないことが多いからです。
演出によって明暗や照明の種類が複雑に移り変わるライブ撮影の際は一定の設定を維持することはまず不可能ですから、リアルタイムに状況に合わせて柔軟に設定を変更する必要があります。
ここからは、ライブ撮影に最適な設定について解説していきましょう。

開放F値は明るければ明るいほどいい

ライブ会場は暗いことが多いので、開放F値は明るければ明るいほどいいです。
最低限、F4よりは明るいレンズを選ぶといいでしょう。一般的にライブ撮影の際によく用いられるF値は、F2.8以下〜F5.6くらいです。
開放F値が明るいレンズを選ぶメリットは、とにかく明るく撮れること。ライブ撮影は激しく動く演者をブレ無しで撮らないといけないので、シャッタースピードをなるべく速くする必要がありますが、シャッタースピードを速くしすぎると写真が暗くなってしまいます。そのため、なるべくシャッタースピードを速くするためになるべく開放F値が明るいレンズを使用する必要があるのです。
そして、開放F値が明るいレンズは、しっかりとしたボケ味を出せるというメリットもあります。
被写体のみにピントが合っていて、背景はしっかりボケているという写真に「プロっぽさ」を感じる人も多いでしょう。
そうしたプロっぽい雰囲気抜群の写真を撮れるのも、開放F値の明るいレンズの魅力です。

シャッタースピードはなるべく速くする

前述したように、ライブは基本的に縦横無尽に動く演者の動きを、なるべくブレなく撮影しなければなりません。
そのため、シャッタースピードはなるべく速くする必要があります。
しかし、前述の通りシャッタースピードを速くしすぎると写真が暗くなってしまうので、感度やF値との兼ね合いを見て調整しましょう。
一般的にライブ撮影でよく用いられるシャッタースピードの設定は、1/125〜1/1000くらいの範囲です。

ISO感度はノイズが出ない程度に高くする

ライブ会場は暗いので、ISO感度は明るければ明るいほどいいです。
しかし、ISO感度を上げすぎると画面全体にノイズ(写真に複雑な色やざらざらとした質感が混ざってしまうこと)が出て、不明瞭で汚い写真になってしまいます。そのため、ISO感度はしっかり上げつつ、ノイズが出ない程度に調整する必要があるのです。
一般的にライブ撮影でよく用いられるISO感度設定は、ISO1600〜3200程度。ただし、最近のミラーレス一眼の場合は高感度耐性レベルが上がっているため、ISO3200〜6400くらい上げても十分に実用的な写真になるでしょう。

ライブ撮影でかっこいい写真を撮るコツ

ライブ撮影に最適な設定を理解したら、今度は「かっこいい写真を撮る」ことを意識しましょう。
かっこいいライブ写真において重要なのは、「キメ(決め所)・角度・演者の動き」の3つ。

特にライブの決め所は重要で、そうした瞬間に演者の感情が最高潮に達することが多いからです。
そうした瞬間を狙うことで、その日のライブの熱量が伝わる「かっこいい写真」になるでしょう。
そして、移り変わる立ち位置や演出に合わせて角度や画角を柔軟に調整することで、全体的にしっかりと見栄えのいい写真になります。

演者や演出の「決め所」「動き」にタイミングを合わせる

特にバンドやアイドルなど動きが派手で熱量の大きなライブは、「決め所」と「動き」が重要な位置を
占めます。
サビ前・曲終わりのかき回し・ギターソロなどのタイミングは、1曲の中でも特に演者の動きが大きくなったり、揃ったり、激しくなったりする傾向にあります。
ライブ撮影をするのなら、そうした「おいしい瞬間」は絶対に逃さないようにしましょう。

演出上の決め所は「目潰し(演者の背後から強い照明を当てることで演者がシルエットになること)」
「特効(煙が噴き出したり、炎が出たり、花火が上がったりといった特殊効果のこと)」「銀テープ」といったものがあり、ライブの中でも特に重要なタイミングでそうした演出がされることが多いので、プロとして受ける場合はそのタイミングを演者側から事前に知らされることも多いです。
特に特効や銀テープは一度きりであることも多いので、2度と撮り直しはききません。
事前に入念な打ち合わせをしましょう。

一般客としてライブ撮影する場合は打ち合わせはできないので、そうした演出がくる瞬間を完全に予
測して撮影する必要があります。
ある程度熟練のファンともなれば、特定の曲のイントロで銀テープが発射されることを予測できる場合もあるでしょう。
アーティストへの愛が試される瞬間です。

楽器隊はボディの位置がくる方向から狙う

楽器隊は、楽器のボディ(ギターやベースで演者が手を上下するところ)がある側から角度をつけて狙うとカッコよくなります。
右利きなら、客席から見て左側(下手側)から狙うといいでしょう。
サウスポーなら、逆に上手側から狙います。

一般客としてライブ撮影をする場合、推しの立ち位置やライブ中の移動によってもベストな角度は変わってしまいますが、なるべくボディの方向に合わせて立ち位置を調整することをおすすめします。

演者同士が絡む「エモい」瞬間を狙う

演者同士が肩を組む・演者同士が背中を合わせる・演者同士が目を合わせるなど、演者同士の絡みはライブの醍醐味です。ライブ撮影をするなら、絶対におさえておきたい瞬間でしょう。
特にアイドルの場合、「ライブ中にメンバー同士が握手をする」「メンバー同士が円陣を組む」「曲終わりでメンバー全員がポーズを決めて静止する」など特殊な演出が多く、演者の動きを完全に理解した上で「エモい」瞬間を捉える必要があります。
バンドの場合はその場の衝動で絡みが生まれる場合が多いので、撮影者が演者の動きを予測することが求められますが、アイドルの場合は絡みが振り付けに含まれることも多いため、仕事で撮影する場合は事前の打ち合わせも可能です。

ライブ撮影の際に心がけるべきこと・注意点

元々、日本ではライブ中の撮影は全面的に禁止されていたことから、一般客によるライブ中の撮影行為に関して煙たがるお客さんも多くいらっしゃいます。
そうした過去の背景もあって、「客によるライブ撮影は本来必要ない」「アーティストの厚意で許してもらっている特別なもの」という価値観が今も根強い印象です。
そのため、ライブ撮影は、数多ある撮影ジャンルの中でも特に厳しくマナーやモラルが問われるものといっていいでしょう。
我々プロのライブカメラマンでも、「ライブ中の撮影は本来音楽の邪魔になるもの」と捉えている人が
多いです。
それでも、プロモーションや宣材のために撮影を公式に任せていただいている以上、邪魔であることをわかっていて撮影しています。
とはいえ、当然ながら仕事であっても、仕事であるからこそ、お客様や演者、他のセクションのスタッフなどあらゆる方向への配慮をしっかりとしなければなりません。
特に「視界・動線・演奏音」の3つは、絶対に遮ってはならないものとして心に刻んでおきましょう。
ここからは、仕事で受ける場合・一般客として撮影する場合に関係なく、ライブ撮影の際に心がけるべきことや注意点を解説していきます。

撮影時は「視界・動線を遮らない」「他人の邪魔をしない」を徹底しよう

ライブ撮影において、「視界・動線を遮らない」「他人の邪魔をしない」ことは、何よりも重要なことです。
これは、プロであろうと一般客であろうと絶対に守らなければならない鉄の掟と考えましょう。
なぜかというと、ライブは見てくれるお客さんあってのものであり、あらゆるセクションの人間が最適に動けてこそライブが滞りなく安全に進行するからです。

たとえば、背が高い客が前にいるなどで視界が悪いとき、カメラを持っている手を高く上げて撮ろうとする人が多いですが、これは自分よりも後方のお客さんにとっては視界を遮ることになり、視界の邪魔になります。
ライブ撮影の時は、常に後方のお客さんのことを考え、自分の顔よりも上にはカメラやスマホを上げないように心がけましょう。
特にフェスなど複数の出演者がいるライブの場合、他のお客さんの邪魔をすれば批判がファンだけでなくアーティストにも向き、アーティストの顔に泥を塗ることにもなりかねません。
仕事でライブ撮影をする場合では、視界を良くするために脚立を使う人も多いでしょうが、当然脚立の上に立った時にお客さんの視界を遮る位置に脚立を立てるのはNG。
そして、PA(音響)さんやテック(楽器や配線を扱う人)など状況に応じて移動が多い人の動線を遮る位置に脚立を立てるのも、ライブの安全な進行を妨げることになるため、当然NGです。
こうした配慮は「いい写真を撮ることよりも大切」と言ってもいいくらいです。
「大切なお客さんの視界を遮ってまで、ライブの安全な進行を妨げてまで写真を撮るのは道理に反する」と考えましょう。

静かな演奏の際は電子シャッターや静音シャッターで撮影音を消そう

クラシック(室内楽)や弾き語りなど、演奏が静かなジャンルの場合は、シャッター音をなるべく消して撮影するようにしましょう。
ミラーレス一眼カメラでは電子シャッターがあるため、完全にシャッター音を消すことができるカメラも多いです。
一眼レフでは、静音シャッターという、普通よりもかなり小さな音でシャッターを切れる機能もあります。

音楽ライブの場合、ライブパフォーマンスにおいて最も重要なのは「音」です。カメラの操作音やシャッター音で音楽の邪魔をしないよう、慎重に配慮しましょう。
バンドやアイドルの場合では演出上非常に大きな音を出すため、カメラのシャッター音はかき消されてしまうので、大きな音が鳴っている間はシャッター音を鳴らしても問題ありません。
ただし、MC中や特定のパートのソロ演奏など、音が静かになる瞬間には、シャッター音は完全に音楽や会話の邪魔になってしまいます。
そうした時は電子シャッター・静音シャッターに切り替えるなど、周りに配慮しましょう。
スマホで撮影する場合、日本のスマホではシャッター音を消すことができませんので、あまり何枚も連続で撮っていると周りのお客さんから白い目で見られてしまいがち。
なるべくスピーカーを手でふせて音が響かないようにするか、そもそも静かなタイミングでは撮らないということを徹底しましょう。

一般客として撮る場合はなるべく端の立ち位置を確保しよう

一般客としてライブ撮影をする場合、カメラマン用の撮影エリアに入ることができないため、通常の客
席に陣取ることになります。そうした時は、なるべく他のお客さんの邪魔にならないよう、端っこの位
置を確保するようにしましょう。

ベストポジションは上手端・下手端の壁際か、もしくは最前列(前端)・最後列(後端)です。
壁際であれば、相対的に見て他のお客さんの視界を妨げにくく、最前列であればカメラを低く構えても障害物がないため、迷惑をなるべくかけることなくしっかりとした写真を撮影できます。
また、客席中に柱がある場合は、柱を背にした場所でも構いません。最後列やこうした障害物を背に
した場所では、自分の後ろにお客さんがいないため、手を高く掲げて撮ってもあまり迷惑にはなりま
せん。ただしそうした「撮りやすい」立ち位置に公式のプロのカメラマンが陣取ることも多く、一般客の立場では確保できない場合もあるので要注意です。
ただし、アイドルの撮影可能ライブなどでは「撮影エリア」が運営によって指定されている場合があり
ます。その時は、撮影エリアから出ないように気をつけましょう。

ライブ撮影は「周りへの配慮」が最重要!マナー・ルールを守って撮影しよう

今回は、ライブ撮影のコツや、ライブ撮影に最適な機材や設定などを詳細に解説しました。
重ねていうようですが、ライブ撮影において何よりも大事なのは「他のお客さんへの配慮」です。
特に視界を妨げるような撮り方はしないようにしましょう。
これは公式に撮影を任された場合も同様で、むしろお客さんよりもカメラマンの方が地位が低い、
というくらいの気持ちで臨むべきです。やむを得ず手を高く上げる必要がある場合でも、
「一瞬だけ、1カットだけ」というように配慮するなど、プロカメラマンも色々な工夫をしています。
撮影可能なライブも増えており、夏フェスも盛り上がりを見せる季節。周りへの配慮には特にしっかり
と気をつけて、マナーを守って撮影するようにしましょう。

Writer:TomiKe(とみけ)
フリーのライブカメラマン(Canonユーザー)。ライブ撮影歴は今年で16年目。小箱〜Zeppクラスまでライブハウスでの撮影経験が豊富。近年ではヴィジュアル系バンド・アイドル・弾き語り・SSW(シンガーソングライター)界隈で精力的にライブ・アー写等の撮影を行っている。2020年・2023年にTV朝日系『激レアさんを連れてきた。』にて撮影したライブ写真が使われるなど、実績多数。

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