アールイーマガジン

【早稲田大学写真部×アールイーカメラ】 両手でカメラを抱えて / 小野寺美友

カメラを買いたい

カメラを売りたい

アールイーからのおしらせ

望遠レンズセール!! ~秋の景色を望遠で切り取ろう!!~  最大 50%OFF の特別セール開催中!

【早稲田大学写真部×アールイーカメラ】 両手でカメラを抱えて / 小野寺美友

この記事をシェア

憧れ 

アールイーカメラ様から好きな機材をお貸しいただけると耳に入った時、真っ先に頭に 浮かんだのが、「とにかく中判のフィルムカメラで撮ってみたい」ということでした。 

フィルム写真に昔から興味はあったものの、私はきちんと自分のカメラを手に入れて 写真を撮り始めたこと自体が大学に入ってからであり、そこからずっと 35mm判で撮 影していました。未知のフィルムとの出会いに夢中で、仰々しい表現ですが異なるフ ォーマットの世界に踏み入る勇気は、なかなか湧いてきませんでした。 

ところが暗室で中判(のはず)のモノクロフィルムがベタ焼きされた印画紙を見てか ら、中判への憧れが日に日に増していくようになりました。もう少し掘り下げますと、そ のままでももちろん鮮明さに驚かされますが、引き伸ばし機で像を拡大し手焼きする 際、35mmと比べて合焦させやすいはずですし、写真に詰まっているあらゆる要素 

がより失われにくいはずということで、焼いた後のコントラストの美や描写の緻密さを 実感してみたいと考えたのです。 

RZ67 

アールイーカメラ様の機材リストを調べてみたものの、知識不足で行き詰まり、結局 お店を訪れてから決めることにしました。強いて言うなら、初めは PLAUBEL  makina67 のコンパクトなボディに惹かれていたのですが、折角の機会なので、普 段は躊躇してしまうようなサイズや重さのカメラにも挑戦してみようという意識はありま した。 

明確なイメージをお伝えできなかったにもかかわらず、スタッフの方にいくつもの機材を 候補としてご紹介いただき、私の希望を尊重していただいて、ついにお借りするもの

が決まりました。カメラボディが Mamiya RZ67 ProⅡ、レンズが Mamiya  SEKOR Z 110mm F2.8 です。

マミヤ RZ67 Pro II ボディ 蛇腹フード・フィルムバック

マミヤ RZ67 Pro II ボディ 蛇腹フード・フィルムバック

商品を詳しく見る
マミヤ MAMIYA SEKOR Z 110mm 2.8

マミヤ MAMIYA SEKOR Z 110mm 2.8

商品を詳しく見る

ペンタックスやハッセルブラッドのカメラもお見せいただき沢山悩んだのですが、何よりフ ィルムバックの回転機能(リボルビングバック)を試してみたいというのが決定打とな りました。カメラを動かすことなく縦構図にできるのだそうで、構図による写真の印象、 

空間の映り方の変化をよく確かめられる非常に良いチャンスだと感じました。(あとは 蛇腹レンズフードがなんとなく魅力的だったので…。) 

一つひとつ 

重くても構わない、とにかく好きなところに行ってこのカメラで撮りまくろう!と勢い込ん で旅に出たのですが、初めの一枚をいざ撮ろうとしたところで、大変苦戦しシャッター を切るまでに一時間以上かかってしまいました。というのも、このカメラは一枚撮ろうと するごとに、毎回多くの手順を必要とするのです。 

簡単な説明となってしまいますが、まずフィルム巻き上げを兼ねたシャッターチャージの レバーを押し、遮光板を抜き、シャッターやピントのロックを解除してから、ルーペでピ ントを合わせて固定したり、露出計を見て絞りやシャッタースピードなどの調整をした りしてやっと撮れます。(本当はピントのロックは最後の方に解除すべきなのかもしれ ませんが、カメラが動いてしまいかねないので早めに行うことを学習しました。遮光板 も然りです。シャッターを切ろうとして遮光板が入っているという警告音を聞いたときの 絶望たるや…。)

多重露光やフィルムバック回転による構図変更を求める場合は、つまみを動かして 設定を合わせる動作も加わります。 

それでも毎回夢中になって撮り続けることができたのは、やはりウエストレベルファイン ダーに映る像に吸い込まれるような魅力があったからだと思います。視力の低い私に は捉えづらくて必死に覗き込んでいたファインダー越しの世界が、こちらに少しだけ手 を差し伸べてくれているような感覚です。なかなか慣れないのではないか、首が疲れ るのではないかといった我儘な心配も、一気に吹き飛んでいったのを覚えています。 

歩く、止まる 

 F2.8 SS1/80 PORTRA400

祖父母の家のある岩手で撮りました。家の陰に彼岸花が咲いていて、そこを目立た せられたら良いなと考えました。手前のボケている物体は一部意図的に取り入れた

もので、本当は前後をぼかしたかったのですが、背景はまだくっきりとしてしまっていま す。それならもう少し絞ってハイライトを減らしても、とも考えてしまいます。35mm換 算で焦点距離は約 50mmちょっとなので、目で見たままの彼岸花の遠さからくる浮 世離れした印象は、そこそこ残っていて良かったです。 

F5.6 SS1/60 PORTRA400 

祖父母の家の中です。逆光で窓枠の色などが黒つぶれしてしまっているのを生かし つつ、吊り下げられた半透明のイルカの石が持つ色彩が程よく感じられ、僅かな透明感も出るような絞り方を模索しました。横構図で長く吊り下げられたものを撮ると、下方が空きづらいのですが、67 では下方の空間により浮遊感が出てきていて感動しました。

F5.6 SS1/400 + F2.8 SS1/125 PORTRA400

場所が変わりまして、ここは新江ノ島水族館が建つ海沿いです。一応多重露光に 挑戦してみたのですが、この撮り方に不慣れなせいで上手くいきませんでした。一枚 目が水族館内の写真だったので(上に微かに泡の跡がある)、それに重ねた2枚 目の明るさに対して暗すぎたのかも知れませんし、多重露光の設定にミスがあったの かも知れません。女性のズボンの質感が表れているところは気に入っています。

F2.8 SS1/125 PORTRA400

先ほどと同じ海辺です。若干サーフボードが白飛びしていますが、全体のハイキー感 が意外と好みで満足しています。砂浜と海の境目の平行線が傾かずに済んだのは 奇跡です。せっかくの波のキラキラが点光源としてあるので、撮る時間帯や設定をも っと工夫して海面の玉ボケがもう少し見えたらなという欲が出てきました。ただこの構 図で、露出でそれが可能か分からないので、勉強を重ねたいと思います…。 

(カメラを持って砂浜を歩くのは大変でした)

F5.6 SS1/250 ILFORD HP5 PLUS 400 (200 に減感) 

新江ノ島水族館の前の広場です。手前の陰を写しつつ、奥のトンネルにピントを合 わせようとかなり頑張ったのですが、ファインダーの像が左右反転していることで大変 混乱しました。陰の位置と棒の位置が角度によって変わるので、汗だくになりつつカメ ラを動かしました。地面からの反射光が激しすぎる様に感じられます。強い日差しが あったのですが、奥の方も個人的にはメリハリに欠けているなと思います。手ブレも少 なからずあるかもしれません。

F4 SS1/125 ILFORD HP5 PLUS 400(200 に減感) 

江ノ島の砂浜に続く階段で撮りました。少し傾いていますがお気に入りの一枚です。 地面の反射が強いですが、後ろの石の壁の存在感や、それとともにある夏の昼の空 気感が主にモノトーンの階調で表現されるということを意識して撮りました。これを手 焼きした際に、それらがどれほど紙の上に浮かび上がってくるかを非常に楽しみにして います。

F2.8 1/125 ILFORD HP5 PLUS 400 (200 に減感)

 

上野駅のお花屋さんの覗く形で一枚。ガラスのドアの内側で作業している店員さん の、動いている手を際立たせたかったのですが、左側の花のポット群が持つコントラス トの強さでほぼ叶えられていないのが悲しいです。構図としては縦の方が良かったの かもしれないですが、右と左で静と動の対になっていてこれはこれで…とも思います。 

フレーム内フレームの効果で店内の賑やかさが少し強調されているようにも感じま す。(花屋は色彩豊かな場所ですが、モノクロでシャープに撮るとまた違ったエネルギ ーが感じとれて、改めてモノクロの良さを感じました。)

おわりに 

自分が何を動かしてどのように撮ろうとしているのかを知る、費やした時間によって一 枚の重みを知る。RZ67 について調べ始めた際に、このようなことが語られている紹 介文に数多く出会いました。実際に右往左往しつつもこのカメラと向き合ってみて、 これを身をもって体感することができて非常に嬉しく思っています。大きなファインダー を通して撮りたい何かに目を凝らし、一枚撮れれば、いつの間にか止まっていた息が 漏れてくるような撮影体験は、なかなか得難いものだと感じました。 

そして、自分が撮影しながら無意識に携えていた、心の中のぼんやりした世界や物 語を、意を決してもう一度見つめ直すきっかけを貰えた、という実感も私の宝物で す。 

今は冒頭でお話した、モノクロフィルムの暗室での手焼きを心待ちにしています。密 かにスクエアの構図に憧れを抱いていたりします。今回生かせなかったフィルムバック 交換やミラーアップなどの機能も、いつか使うことができたらいいなと考えております。 

最後に、素敵なご機会をお与えくださったアールイーカメラ様に、心より感謝申し上げ ます。本当にありがとうございました。

F2.8 SS1/125 ILFORD HP5 PLUS 400 (200 に減感)

  


この記事をシェア
ユーザーの画像

小野寺美友

早稲田大学写真部に所属しています。 大学から本格的に、カメラを始めました。 フィルムカメラと時々旅に出ます。 風景がメインですがポートレート等も撮れるようになりたいです。 あと、時間と記憶について考えるのが好きです。 もちろん写真も。

カメラを買いたい

カメラを売りたい

Related Article関連記事

Ranking

人気記事ランキング

History

チェックした記事