高級コンデジが続々とリリースされる昨今、コンパクトながら高画質を追求したカメラの市場は消費者のニーズに応じて多様化しており、各メーカーがこぞって高級路線に舵を切っています。
その中でもひときわ注目を集めているのが、Leicaの「Qシリーズ」です。Leicaが放つ「Qシリーズ」は、ただのトレンド追随モデルではない、真の意味での「究極のコンパクトデジタルカメラ」といえるでしょう。
このモデルは、従来のコンデジの概念を根底から覆すだけのポテンシャルを秘めており、単なる持ち運びやすさだけでなく、高い画質性能や操作性、そして所有欲を刺激する洗練されたデザイン性を兼ね備えています。手に取った瞬間、感じるその高級感と丁寧に作り込まれた仕上げの美しさは、写真撮影だけでなく、所有することの喜びをもたらしてくれます。
今回、紹介するのはＱシリーズの第二世代モデル「Leica Q2」です。
高画質を追い求めるだけではなく、使い勝手やデザイン、クラフトマンシップにまで配慮されたこの一台が、どのようにして写真ライフを豊かにしてくれるのか、実際に購入して使い続けた筆者が正直レビューをしたいと思います。
2015年に登場した初代Qは、フルサイズセンサーと明るい28mm Summiluxを組み合わせ、レンジファインダー的な操作感と高精細EVFを融合した新しいスナップ用カメラとして注目されました。
2019年に発表されたQ2はそのコンセプトを受け継ぎつつ、センサーや解像度、防塵防滴性能、動画機能を大幅に強化し、Qシリーズの代表機として確立されました。
発表：2019年（ライカ発表）
センサー：フルサイズ（47.3メガピクセル相当の高解像度CMOS、ローパスフィルタなし）
レンズ：固定式 Summilux 28mm f/1.7 ASPH（高性能の広角単焦点）
ファインダー：高解像度EVF（有機ELタイプ、高精細）
液晶：3.0インチ タッチ対応ディスプレイ
連写：最大約10コマ/秒（連写性能を強化）
シャッター：電子シャッターを含む高速シャッター（ハイシャッタースピード対応）
動画：4K撮影対応
防塵防滴：耐候性向上（屋外での信頼性が高い）
記録メディア：SDカード（UHS-II対応）
その他：Wi‑Fi機能、タッチフォーカス、複数のフィールド切替（35mm/50mmクロップモード等）
Q2は高解像度ボディと優れた光学性能が特長です。高画素センサーにローパスフィルタを持たない設計が組み合わさり、細部までシャープに描写できるため大判プリントやトリミングにも余裕があります。明るい28mm Summilux（開放F1.7）は広角らしい遠近感と背景のボケ味を両立し、スナップや風景撮影で高い表現力を発揮します。
操作性や機能面も充実しています。レンジファインダー風の操作系と高精細EVFの組み合わせで直感的に撮影でき、コンパクトながら剛性感のあるボディは常用カメラに向いています。防塵防滴構造により屋外での信頼性が高く、旅行やアウトドア撮影でも安心して使えます。さらにセンサー中央を切り出す35mm／50mm／75mm相当のクロップモードも搭載されており、レンズ交換なしに画角を変えられる点も実用的です。
実際に使ってみると、Q2は「おでかけやアクティブな趣味に気軽に持ち出せる高性能カメラ」という印象です。
レンズ交換式のミラーレスは大きすぎ、一般的なコンデジでは画質や堅牢性が物足りない──そんな中間のニーズにぴったりはまります。
確かにコンデジの中ではやや大きく重い部類ですが、フルサイズのミラーレスと比べれば十分コンパクト。常に携行するメイン機としておすすめできる一台です。
Q2にはいくつかの注意点があります。まず固定された28mmの単焦点レンズのため、画角が合わない場面では不便を感じることがあります（センサー中心を使う35mm／50mmのクロップモードである程度対応は可能ですが万能ではありません）。
また、47MPの高画素によってRAWファイルが大きくなり、保存容量や現像時の処理負荷が増える点も覚えておきたいポイントです。
ライカブランドのため価格は高めで、コスト重視のユーザーにはハードルが高いでしょう。コストに対する価値はあると感じますが、コスパが良いカメラとは言い難いです。
一方で、こうした特性を理解したうえで選べばQ2は非常に魅力的なカメラです。常に高画質を求める人、一組のレンズで洗練された表現を追求したい人、高解像度を活かしてトリミングや大判出力を考える人、そしてライカの所有感やブランド価値を重視する人に向いています。
ここからは実際にLeica Q2を使用して撮影した作例をアップしていきます。
普段、28mmでポートレートを撮ることはあまりしないのですが、Q2で挑戦してみます。
木々のアーチと影を利用して自然なフレームを作り、モデルさんを囲みました。28mmという画角はこのように背景で遊べるのが楽しいですね。
クロップで50mm相当に切り替えて撮影しました。
50mm相当になることで被写体がぐっと画面に占める割合が大きくなり、ポートレートに適した落ち着いた画角が簡単に得られます。
Q2は47.3メガピクセルの高画素センサーを搭載しているため、中心を切り出してもディテールやトリミング余地に余裕があり、大判プリントやトリミング後の仕上げにも安心感があります。
Q2のオートフォーカスは決して画期的な性能というわけではありませんが、「ライカでオートフォーカスが使える」という事実そのものに新鮮さがあります。動体追従や高精度な連写向けのパフォーマンスを期待すると物足りなさを感じるかもしれませんが、日常のスナップや旅行撮影、ポートレートなどでは十分に実用的で安心して使えます。
一方で、ライカらしいマニュアルフォーカスでじっくりと合わせていく撮影には独特の緊張感と集中力があり、それ自体が楽しみでもあります。ファインダーに集中して微妙なピント位置を追い込んでいく作業は、手作業の満足感をもたらします。
だからこそ、Q2ではオートフォーカスとマニュアルフォーカス、両方の良さを使い分けるのがおすすめ。被写体やシチュエーションに応じてリラックスして撮りたいときはAFで気軽に、細部まで詰めて表現したいときや意図的なピント位置を狙うときはMFで、といったハイブリッドな使い方が楽しめます。
何気ない瞬間を自然に捉えられるのも、Q2の大きな魅力です。日常の何気ない風景やさりげない表情など、気軽にシャッターを切れるところが、Q2の良さのひとつと言えます。
Q2だけに限ったことではなく、Leicaのカメラ全体に共通する特徴として、デザインがシンプルで洗練されているため、どんなシーンでも自然に馴染みます。首から下げていても派手さや悪目立ちをしないため、日常のスナップや街歩きの際も気軽に持ち歩くことができる点も大きな魅力です。
Q2のシャッター音は、華美さや威圧感のない上品で控えめな響きです。カメラを構えたときに耳につく「主張」は少なく、撮影者も被写体も穏やかな気持ちでいられるため、特にスナップやポートレート、結婚式などの静かな場面で安心して使えます。
こうした穏やかな音は被写体の自然な表情を引き出しやすく、街中でのスナップ撮影でも周囲に浮かないため自然な瞬間を捉えやすいのが利点です。加えて、撮影時の緊張を和らげるため、被写体とリラックスしたコミュニケーションを取りながら撮影できる点も魅力だと感じます。
南房総でシュノーケリングをした時にビーチで撮った写真です。
Q2は、その防塵防滴構造も大きな魅力のひとつです。こうしたアウトドアシーンや海辺の環境でも、使えるのが嬉しいポイントです。撮影中にちょっとした雨や水しぶきに見舞われても、安心してシャッターを切ることができます。
アクティブなシーンやアウトドアでの思いがけない場面でもスムーズに撮影を楽しめます。
こちらも南房総。雨上がりの伊予ヶ岳を登山した時に撮った一枚です。
登山でカメラを使う場合、天候や光の条件が刻々と変わるため、使い勝手の良さや堅牢性が重要
になります。
Q2は、山中や雨上がりの山道でも気軽に持ち運べ、天候の急変を気にせずに撮影を続けられるのは非常に心強いポイントです。
「登山にオススメのカメラは？」と聞かれると、個人的には「Leica Q2がオススメだよ。」と答えてい
ます。半分冗談ですが、実はけっこう本気の回答だったりします。
さらに、マクロモードが搭載されている点も見逃せません。山の植物や小さな昆虫、岩の質感など、近くの細部まで高画質でしっかりと写し取ることができるため、多彩な表現ができます。
たまたま訪れた神社で、偶然にもライトアップイベントが行われていました。その色彩の美しさに魅了され、シャッターを切りました。
このような都会のシーンにおいても、Q2の洗練されたデザインは環境に自然に溶け込み、周囲で悪目立ちしないのが大きな魅力です。
こちらは関東三大山車祭りの一つである「佐原の大祭」夏祭りで撮った一枚です。
私にとって、GRやフジフイルムのX100なども非常に魅力的なコンパクトカメラで、どちらもお気に入りのカメラです。しかし、個人的にはやはり、ちょっと気合を入れて写真を撮りたいときにはLeica Q2がやる気を引き出してくれるように感じます。
飛行機の窓から撮影した一枚です。空の上からの景色は、いつもと違った非日常感があり、ついつい写真を撮ってしまいます。
青い空と雲海の広がり、そして客室窓を通して見えるこの景色は、まさにこれから始まる旅のワクワクする瞬間を象徴しているかのようです。
これまで、ポートレートやアウトドア、東京という身近な場所での作例を紹介してきました。ここからは、海外へ持ち出した旅でのスナップをアップしたいと思います。
この写真は、オアフ島のノースショアにあるワイメアビーチで撮影したものです。真っ青な快晴の空と、透明感のある海の青さがとても印象的で、南国のリゾート地ならではの気持ちの良い開放感を感じられました。
ハワイのリラックスした気分をそのまま感じられるような一枚が撮れました。
この写真は、ハワイのダウンタウンで早朝に撮影したものです。
太陽の優しい光が木々の葉にあたり、長い影を作っています。まだ人影も少なく静かなこの時間帯は、まるで街がこれから目覚める瞬間を待っているかのようで、とても好きな時間帯です。
この写真は、冬のソウルで撮影したものです。この日は、何十年かに一度という大寒波が訪れた特別な日でした。交通機関も麻痺し、移動が大変だったことをよく覚えています。しかし、振り返ってみると、そのようなトラブルも旅の良い思い出の一部になっています。
この写真は、屋台の灯りが優しく周囲を照らしている様子に惹かれて、思わずシャッターを切ったラフなスナップ写真です。
後から見返すとそのラフさが逆に臨場感や温もりを引き立ててくれた気がします。市場のざわめきや人々の笑顔、暖かい空気感が思い出せる、とても好きな一枚です。
この写真は、WILD HORSE BARBER SHOPというソウルのローカルな床屋さんで撮った一枚です。
オーナーが写真好きな方でLeicaについて話が盛り上がり、とても楽しい時間を過ごしました。
写真を趣味にしていると、カメラを持ち歩いているだけで、同じ趣味を持つ方から声をかけられることが多いと思います。特にLeicaのカメラだと、その割合はより高い気がします。カメラがきっかけとなって新しい出会いが生まれることも多く、その交流や会話はとても貴重で楽しいものですよね。
この写真は、貞仁麺屋の平壌式水冷麺。ミシュラン掲載店だけあって、とても美味しい冷麺で、その繊細な盛り付けや艶やかな麺も魅力です。Q2にはマクロモードが搭載されているため、かなり近づいて撮影することもできます。
こちらは国内ですが、茨城県のかすみがうら市にある老舗フレンチレストラン「ボンジュール」のハンバーグ。マクロモードと35mmクロップを組み合わせて撮りました。
料理の写真を撮る際に気になるのは、どうしても料理の邪魔になったり、目立ちすぎてしまったりすること。Q2は、洗練されたシンプルで控えめなデザインなので、その場に自然に溶け込みます。
さっと取り出しても周囲に馴染みやすいため、料理の邪魔にならず、その場の雰囲気や自然な瞬間を壊さずに撮影できます。こうした気配りのきいた設計もQ2の魅力。
まさに、気配り上手なカメラといえるのではないでしょうか。
今回は、Leica Q2について紹介しました。Q2は、コンデジにしては少し大きくて重さも感じるかもしれませんが、その堅牢性が逆に持ち歩きやすさと安心感をもたらしてくれます。バッグに気軽に入れて持ち運べるため、さまざまなシーンで活躍しています。
購入してから早4年が経ち、私はいろいろな場所や場面でQ2を手にしてきました。その間、素敵な瞬間や思い出をたくさん残してくれました。Leicaのカメラはリセール価格があまり落ちにくいのも大きな魅力で、もし手放すことになったとしても、ややお得に買い替えや売却ができる点が嬉しいポイントです。
とはいえ、手放すつもりは全くなく、これからも大切に使い続けていきたいと思っています。
Q2は、私の生活に溶け込み、これからもずっと身近な存在として、素敵な瞬間を撮り続けてくれる相棒です。
