単焦点望遠レンズ、Carl Zeiss Batis 2.8/135をご紹介します。
このレンズは、人気のバティスシリーズの中でも特にポートレート撮影で人気の一本。
135mmという焦点距離は、中望遠レンズとしての優れた性能を持ち、ポートレート撮影はもちろん、135mmという癖を活かした様々な表現にも対応できる幅広さを持っています。
今回は、このバティスシリーズの135mmをレビューし、その実力と魅力をお伝えしたいと思います。ポートレート撮影だけでなく、いろいろなシーンで撮影をして、このレンズの素晴らしさを伝えたいと思います。
Carl Zeiss Batis 2.8/135は、ソニーEマウントに対応した、ツァイス初の光学式手ブレ補正機構を
搭載したオートフォーカスレンズです。焦点距離135mm、開放F値2.8というスペックは、ポート
レート撮影に最適。Batisシリーズの特徴である有機ELディスプレイも搭載しています。
Batisシリーズ共通の、シンプルで洗練されたデザイン。マットブラックの質感も相まって、所有欲を
満たしてくれます。鏡筒には、距離や被写界深度を表示する有機ELディスプレイを搭載。暗所で
の撮影時に役立ちます。
まずは、Carl Zeiss Batis 2.8/135の基本的なスペックを見ていきましょう。
焦点距離: 135mm
開放F値: F2.8
レンズ構成: 11群14枚
最短撮影距離: 0.87m
フィルター径: 67mm
質量: 614g
贅沢な11群14枚のレンズ構成は、まさにツァイスの光学技術の結晶。色収差や歪みを徹底的に抑え込み、クリアでシャープな描写を実現していることが伺えます。
また、フィルター径が67mmと比較的コンパクトでありながら、フルサイズ対応の135mmレンズとしては軽量な614gという点も、扱いやすさへの配慮を感じさせます。
そして、「カールツァイス」の名は、その描写性能への期待を否が応でも高めます。現代的な高性能を追求したBatisシリーズですが、どこか情緒的な表現力も持ち合わせている。そんな予感に胸が膨らみます。
Carl Zeiss Batis 2.8/135とSony α7シリーズの組み合わせで使用しました。
ここからは実際にCarl Zeiss Planar T* 100mm F2を使用して撮影した作例をアップしていきます。
ポートレート撮影の世界には、様々な焦点距離のレンズが存在します。35mmの広角で、その場の空気感ごと切り取るのも良いでしょう。50mmで、自然な視線に近い表現を追求するのも魅力的です。
しかし、私のお気に入りは、135mmという焦点距離。中望遠と呼ばれるこのレンズは、被写体との間に、独特な距離感を生み出します。
135mmという焦点距離に慣れていないと、少し遠いと感じるかもしれません。被写体の表情を細
部まで捉えきれないのではないか、コミュニケーションが取りづらいのではないか。
そんな不安を抱くこともあります。
しかし、135mmというレンズを使い慣れてくると、その距離感こそが、ポートレート撮影の楽しさの一つだと気づかされます。それは、物理的な距離だけでなく、心の距離感にも作用し、被写体との間に、程よい緊張感と安心感をもたらしてくれるのではまいかと感じています。
135mmという距離は、近距離での撮影に比べれば、気軽に言葉を交わしたり、細やかな表情の変化に気づいたりと、直接的なコミュニケーションは取りづらくなるかもしれません。
しかし、割り切ってしまえば、その距離感は、互いにとって心地よい空間を生み出してくれます。
ふんわりとした優しい雰囲気でありながらも、まつ毛一本一本まで克明に描写してくれるシャープさも、Batis 2.8/135mmの大きな魅力。
逆光気味のシチュエーションで撮影することで、透明感を意識してみました。
窓から差し込む光を背に受けたモデルさんは、光に包まれ美しく、そしてどこか儚げです。
開放F値は2.8。一見すると、それほど明るいレンズではないように思われるかもしれません。
しかし、135mmという焦点距離の恩恵により、背景は想像以上に大きく、そして美しくボケてくれます。
そして、このレンズのボケ味の特筆すべき点は、その「ヌルっとした溶け具合」です。
ただ単にボケるのではなく、まるで水彩絵具が水に溶け出すように、滑らかに、そして自然に背景が溶け込んでいきます。
Batis 2.8/135mmは、シャープでクリア、描写は硬質なイメージです。
しかし、その硬質な描写だけでは、どこか冷たく、無機質な印象を与えてしまうかもしれません。
そこに、「ヌルっと溶けるボケ味」が、エッセンスとして作用します。
硬質な描写に温もりを添え、写真全体を優しい雰囲気で包み込んでくれます。
Carl Zeiss Batis 2.8/135mmの色表現は、「鮮やかで自然」という印象。艶やかな色気のある色彩でありながら、決して不自然ではなく、見たままの美しさを再現してくれます。
順光で撮影すれば、鮮やかでクリアな色彩を、逆光で撮影すれば、ふんわりとした優しい色彩を表現することができます。
特に私が魅力を感じているのは、中間色の表現力です。このレンズは、微妙な色の変化やグラデーションを滑らかに表現してくれます。
髪の毛のグラデーション、シャツの素材感などを魅力的に描写してくれます。
ここからは少し趣向を変え、ポートレート以外の作例を紹介していきたいと思います。
深紅の絨毯を敷き詰めたかのような、曼珠沙華の群生です。埼玉県にある日和田山は、彼岸花の名所として知られており、秋になると、鮮やかな赤色に染まります。
Batis 2.8/135mmは、曼珠沙華の鮮やかな赤色を、ただ美しく写すだけでなく、まるで生きているかのような力強さをもって描き出してくれました。
普段、カメラを持ち出す際には、主に標準ズームレンズや50mmの単焦点レンズを使用することが多いです。これらのレンズは、日常の撮影や旅行、散歩中のスナップショットにとても便利で、様々なシーンに柔軟に対応できるため、私にとって欠かせない存在です。
しかし、時には異なる視点や雰囲気を写真に取り入れたくなることもあります。
そんなときに、バッグの中にそっと入れておきたいレンズが、Batis 2.8/135mmです。
このレンズは、重たい望遠ズームレンズを持ち歩く気にならない日にも、理想的な選択肢となります。135mmの焦点距離は、少し離れた被写体を引き寄せて撮影したいときに非常に効果的です。
135mmですが、レンズ自体が軽量で扱いやすいため、持ち運びの際に負担になることがありません。
このレンズを使うことで、普段の写真とは異なる新しい要素や深みを写真に加えることができ、創
造的な撮影が楽しめます。
ハワイの緑豊かな並木道。
若葉の黄緑色、深緑の葉、そして木漏れ日の光を浴びて輝く葉に魅かれて撮った一枚です。
緑色の世界に、自動車のシルバーをアクセントとして加わえてみました。
冬の札幌、今年の初積雪の日に撮りました。
枝には雪が薄く積もり、その上で光が反射することで、きらめくような効果を表現することができました。
旅行の際には、海外でも国内でも、Batis 2.8/135mmをお守りのようにバッグに忍ばせています。
このレンズは、風景やポートレートの撮影において、シャープな描写力を発揮し、どんな場面でも頼りになる存在です。
深夜、すすきので撮った一枚です。
積もり始めた雪が路面を覆い、車のヘッドライトに照らされて輝く様子が魅力的だったため、思わ
ずシャッターを切りました。都会の夜と雪の組み合わせが、幻想的かつ現実的な雰囲気を醸し出していました。
光の反射と雪の輝きが絶妙なコントラストを生み出し、深夜特有の静けさとは対照的な活気を感じさせます。
Batisシリーズの有機ELディスプレイについて触れてみると、夜間の撮影でその機能を「最適」と言い切るのは難しいかもしれません。
実際の撮影中に有機ELディスプレイを確認することは少ないですが、それでもこのギミックは特に男心をくすぐる魅力があります。
有機ELディスプレイの実用性については疑問もありますが、このディスプレイがあることで撮影へのモチベーションが上がるのは確かです。
個人的には、大好きな機能の一つで、このギミックのおかげで撮影が一層楽しくなります。
今回は、Carl Zeiss Batis 2.8/135をソニーのミラーレスカメラα7R IVとα7s Ⅲで使いました。
Carl Zeiss Batis 2.8/135を使って感じたことは、「色っぽい艶めかしい描写とシャープさ」です。
現代レンズなのにどこか情緒的。
良い意味で癖があって楽しいレンズですので、中望遠の単焦点レンズを検討している人はぜひ手に取ってみてください！
ヤマモト ロク
カメラと登山が好きなトラベルライター／カメラマン。東京と長野で二拠点生活をしてます。 株式会
社三和オー・エフ・イー所属。
ヤマモト ロク
カメラと登山が好きなトラベルライター／カメラマン。東京と長野で二拠点生活をしてます。 株式会 社三和オー・エフ・イー所属。
