街のネオン、濡れたアスファルト、行き交う人影。
そのすべてが溶け合い、一枚の写真に宿る“物語”。
今回は、夜景と人物を融合させた“Nightrait(ナイトレイト)”というスタイルで活動する
ナイトフォトグラファー・ToooorU!(トール)さんにお話を伺いました。
雨の夜の街に惹かれたきっかけから、撮影で大切にしていることまで──
幻想的な光の世界の裏側を語っていただきます。
― 雨の街の魅力に心をつかまれた、写真との出会い
身内がカメラを買い替えた際、その“おさがり”を譲り受けたことが始まりでした。
最初は星空や工場夜景など、さまざまなジャンルを試していたのですが、同時期に始めたInstagramで、 “雨の夜の街”をとても魅力的に撮影している方を見つけたんです。
それまで雨はどちらかといえば避けたい存在でした。
しかしその写真を見て、「同じ街でも、雨が降るとこんなにも表情を変えるのか」と衝撃を受けました。
以来、雨の日が楽しみになり、夜の街に出るように。
その高揚感が、私を一気に写真の世界へ引き込みました。
“普段見ている街が、雨によってまるで別世界のように輝く”瞬間を追いかけるようになったといいます。
― 「日常×非日常」――雨の夜に宿るドラマを切り取る
ToooorU!さんが魅力を感じるのは「雨の降る夜の街」。
ToooorU!さんが魅力を感じるのは「雨の降る夜の街」。
街灯やネオンといった人工の光は、一見無機質ですが、
雨によって路面が煌びやかに輝き、人や車の光が反射することで不思議な温度が生まれる。
何気ない日常が、ファインダー越しには映画のワンシーンのように立ち上がってくる。
その“ギャップ”を切り取ることが、私の写真活動の原動力になっています。
― “好き”が詰まった一枚。お気に入りのベストショット
この1枚は、有名な撮影スポットでも、SNSでバズるような写真でもありません。
ただ、車のライトに照らされる細かい雨粒、遠近の奥行き、画面いっぱいに詰め込まれた情報量──
私が好きな要素がすべて詰まっている。
だからこそ、特別な意味を持つ一枚です。
― 愛機はSONY α7R IV。夜の光を描き切る高解像度の相棒
夜景ポートレートにも最適な高解像度機・SONY α7R IVを愛用。
「街の光だけを活かして撮る」スタイルにマッチしており、
憧れのフォトグラファーたちが使っていたことも選んだ理由の一つだそう。
「正直、最初は憧れから。でも今ではこのカメラじゃないと撮れない感覚がある」と笑顔で語ります。
― 撮影中の“ハプニング”も思い出のひとつ
真冬の夜、星空撮影中にタイドプールへ落ちて下半身ずぶ濡れに――。
真冬、神奈川県三浦市の馬の背洞門で星空を撮影していたときのこと。
空に夢中になりすぎて足元のタイドプール(潮だまり)に気づかず、
思いきり落ちて下半身ずぶ濡れに…。
そのあと数日風邪をひいてしまいました(笑)。
自然相手の撮影では、集中しすぎて起こる“ハプニング”も思い出のひとつですね。
― 世界で一番好きな街、渋谷。夜景ポートレートの原点
ToooorU!さんが“圧倒的におすすめ”と語るのは渋谷。
圧倒的に 渋谷 です。
渋谷は世界で一番好きな街。
日本のトレンドとカルチャーが交差する場所で、常に変化を続けています。
被写体を立たせるだけでシネマティックな世界観が生まれるし、
夜景だけを切り取っても十分に魅力的。
「夜景ポートレートの奥深さを知るきっかけになる場所」だと思っています。
ToooorU!さんの作品
◆ 編集後記
ToooorU!さんの写真には、都会の喧騒の中にある“静かな熱”が宿っているように感じました。
雨の夜という、少し憂いを帯びたシーンの中で光を見出す。
その姿勢が、彼の“Nightrait”という作品スタイルを支えているのかもしれません。
次に雨が降ったら、傘を片手に夜の街を歩いてみたくなる――
そんなインタビューになりました。

